ロナルド・ロス:死の病マラリア研究の第一人者

ロナルド・ロスは、マラリア研究の第一人者として知られている医師です。マラリアは主に熱帯や亜熱帯で発生する感染症で、高熱、頭痛、吐き気などの症状を引き起こし、悪性の場合は死に至ることもあるという恐ろしい病気です。彼はそんなマラリアの研究に多くの時間を費やし、その功績によってノーベル賞を受賞しています。また、詩や小説を発表するなど、芸術家としての側面を持っていたことでも知られています。

◆ロナルド・ロスの生まれた町、アルモラ

ロナルド・ロスは、1857年にインド帝国のアルモラで誕生しました。アルモラはインド国内でも有名な避暑地であり、美味しい空気と澄み渡るせせらぎの音と共に過ごすことができます。周囲は見渡す限り美しい山々に囲まれ、幻想的な風景が残っている町です。

◆幼少期、学生時代

ロナルド・ロスは幼少期より文学や詩、音楽、数学などの幅広い分野に興味を持っていました。

中学から寄宿学校に入ると、14歳で数学の賞を受賞します。早くからその才気を発揮していた彼でしたが、幼年期には作家になる事を志しており、必ずしも医学への情熱を持っている訳ではありませんでした。しかし、軍人の父親の手配によってイギリス王立外科大学へ入学することとなり、軍医として活躍するようになります。

◆受賞に至るまでの逸話など

ロナルド・ロスは、1889年に妻ローザと結婚するとインドへ渡り、二男二女をもうけました。それから軍医として任務に就き、第三次ビルマ戦争に参加するなど医療分野で働いてきました。元々父の意向により進むことになった医師と言う道に情熱を傾けきれていなかったロスでしたが、インドの貧しい人々が次々にコレラやペスト、マラリアなどで亡くなっていくことには大変心を痛めていました。彼はコレラとペストの流行については感染予防に尽力し、感染を一定以上抑制する事に成功していました。しかしマラリアについてはただ対処療法を行って回復を祈るしか術がなかったのです。
そんな折、とある医師との出会ったことによって彼の状況が一変することとなります。

(Public Domain /‘Sir Patrick Mason’byUNKNOWN.Image via WIKIMEDIA COMMONS)※パトリック・マンソン

イギリスへ一時帰国した彼は、熱帯病額の研究者であるイギリス人医師、パトリック・マンソンと出会いました。当時インドに駐屯するイギリス陸軍においてもマラリアの蔓延は課題となっており、医師として働く二人の会話は自然にマラリアについての話題にのぼりました。

一般的に「腸内中毒」と認識されていたマラリアが、実は蚊によって運ばれているのではないかと考えたマンソンの仮説、「マラリア原虫説」にロスは驚愕したのです。それは、当時の通説から考えればかなりの常識外れといっても過言ではない突飛な発想でした。

その仮説に関心を持ったロスは、マンソンと共にインドへ戻ると蚊の研究にのめり込んでいきます。しかし、この研究はなかなか成果を得られず、二年もの歳月が過ぎ去っていくこととなりました。

毎日多くの蚊を採取してはマラリア患者の血を吸わせ、解剖しては顕微鏡を覗き続けるという日々を送っていたロスの元に、フセイン・カーンという患者が訪れました。カーンによって、まだ出会ったことのない「ハマダラカ」という蚊の情報を得たロスは、早速研究を開始しました。ハマダラカにカーンの血を吸わせると、数日後に胃の小球体に変異が現れました。ロスはその蚊を解剖し、蚊の唾液腺にマラリア原虫がいることを突き止めたのです。この研究は、人間が蚊に刺されることで感染が伝播していくというマンソンの仮説を確証付けることになりました。

ロスはついに、マンソンの「マラリア原虫説」を証明し、感染経路を特定したのです。これは歴史的な快挙でした。

の功績によりノーベル生理学・医学賞を受賞し、イギリスへ帰国後はリバプール熱帯医学学校の教員として教鞭に立ちました。そして晩年はロス熱帯研究所の院長として亡くなるまで在籍しました。原因が判明した事で、予防や治療への研究へシフトし、今日に至ります。ロナルド・ロスの発見は、マンソンの仮説と協力があってこそですが、彼自身の熱心な研究のおかげであり、彼の功績はヨーロッパ全土で認知されました。

○まとめ

マラリアは数多くの犠牲者をだしてきた危険な病です。しかし、ロナルド・ロスの発見により現在は予防や治療をすることが可能となっており、その功績は計り知れないものと言えるでしょう。彼が証明した仮説の提唱者、パトリック・マンソンは「熱帯医学の父」として讃えられています。

毎年8月20日はロナルド・ロスがマラリアの感染経路を発見した「世界蚊の日(World Mosquito Day)として制定されており、マラリアに対する様々なイベントや取り組みが行われています。

また、毎年4月25日は「世界マラリアデー(World Malaria Day)」として国際デーに定められており、全世界に向けてマラリア制御への意識や、知識の周知を推進しています。

出典:Wikipedia (Malaria) (3,2021)

出典:Wikipedia(History of malaria)(3,2021)

出典:Wikipedia (Ronald Ross) (3,2021)

出典:Wikipedia (Patrick Manson) (3,2021)

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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