CZ(Binance社長):1年で世界を席巻したCEOの素顔とは

世界で最大規模の取引量をほこる仮想通貨取引所、Binance。この創業者であるジャオ・チャンポン氏は若いうちに父を亡くし、夜勤のアルバイトを掛け持ちするような少年時代を過ごしました。その後、IT業界にてシステム開発と運用の知識・技術を身につけ、2013年から仮想通貨業界へ転身。2017年にBinanceを立ち上げると、一年も経たないうちに世界でもっとも有名な取引所へと成長させました。そんなジャオ氏の半生と、業界に対するビジョンをまとめました。

仮想通貨(暗号通貨)に興味がある人であれば、Binance(バイナンス)という単語を聞いたことがあるでしょう。これは、香港に本拠地を置いていた仮想通貨取引所の名前です。現在、本拠地はマルタ島に移転されました。

この取引所は2017年1月に設立され、ICOを実施して資金調達をした後、7月からサイト上で100を超える仮想通貨の取引を可能にしています。

大抵の企業が、立ち上げから最初の半年や1年は黒字にならず苦しい思いをするところを、Binanceはたった半年程度で、世界でもっとも利用される仮想通貨の取引所となったのです。この大躍進を牽引したのが、創業者でCEOの趙長鵬(ジャオ・チャンポン)氏です。彼をよく知る人や仮想通貨業界の人々は、彼のことをCZ(シージィー)の愛称で語ります。

この記事では、今仮想通貨業界で注目を集めているCZ氏についてお伝えします。

1)世界3位の仮想通貨長者

彼はビットコインが注目される直前に、自宅を売ってビットコインを購入。その資産が膨らんだことと、Binanceの収益が順調に伸びていることを受け、Forbesが2018年初頭に発表した「世界の仮想通貨長者ランキング」3位にランクインしています。

1. クリス・ラーセン(リップル共同創業者)、75〜80億ドル
2. ジョセフ・ルービン(イーサリアム共同創始者)、10〜50億ドル
3. Changpeng Zhao(バイナンスCEO)、11〜20億ドル
4. ウィンクルボス兄弟(Winklevoss Capital共同創業者)、9〜11億ドル(各自)
5. マシュー・メロン(個人投資家)、9〜10億ドル
6. ブライアン・アームストロング(コインベースCEO)、9〜10億ドル
7. マシュー・ロスザック(Bloq共同創業者)、9〜10億ドル
8. アンソニー・ディ・イオリオ(イーサリアム共同創業者)、7.5〜10億ドル
9. ブロック・ピアス(Bitcoin Foundation会長)、7〜10億ドル
10. マイケル・ノボグラッツ(ギャラクシーデジタルCEO)、7〜10億ドル

引用: Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

しかし、彼は豪邸に住みたいわけでもなく、超高級車を乗り回したいわけでもないとメディアのインタビューで答えています。彼は「お金持ちとして見られたくない」のです。

ニュヨーク証券取引所

2)彼の半生とBinanceができるまで

彼は中国の江蘇省に生まれ育ち、若いうちにカナダのバンクーバーへ移住。若くして父を亡くし、10代後半には家計を支えるためにマクドナルドやガソリンスタンドで夜勤アルバイトをしていました。

大学時代をカナダ・モントリールで過ごし、コンピューターサイエンスに没頭しました。ここで学んだことを生かし、ソフトウェアエンジニアとして活躍。東京証券取引所やニューヨーク証券取引所で利用されるシステム構築に携わっていました。その経験を買われ、ブルームバーグに移ると、そこでは高速取引システムの開発に携わりました。

2013年にビットコインと出会い、Blockchain.infoにジョイン。今となっては仮想通貨業界のレジェンドと呼ばれるロジャー・バーやベン・リーブスとともに、仮想通貨の普及に尽力しました。さらに、韓国で最大規模の取引高を誇るOK CoinではCTOをつとめ、仮想通貨の普及に技術面で大きな貢献を果たしてきました。

彼がこれまでに携わってきたシステム開発・運用のノウハウは、Blockchain.infoで過ごした時間により一層深められました。仮想通貨やブロックチェーン技術に関する知識も、この頃蓄積されます。

3)Binance創業から現在まで

そしてついに2017年1月、CZ氏は香港で仮想通貨取引所のBinanceを立ち上げます。
この取引所を長く愛用してくれるファンを開拓するため、加えて、Binanceをより使いやすくするために必要な資金調達は、同年7月にICO(イニシャル コイン オファリング、現在のIPOと同様に資金調達を行うこと。ただし、IPOと違って一般人であっても参加できる)で実施しました。

このICOを通じて25,000人のファンベースを構築することに成功。取り扱う仮想通貨の種類や取引量を順調に伸ばしていき、2018年1月には世界で最も仮想通貨の取引が行われる取引所になりました。

4)CZ氏がBinanceや仮想通貨業界に対して考えていること

CZ氏が仮想通貨業界に対してどのような思いを持っているのかや、Binanceという会社を通じてどのような貢献をしていこうと思っているのか、これまでに公開された記事などをもとにまとめます。

■ 取引所を皮切りに幅広いサービスやプロダクトを開発、市場を広げていく

彼はシンガポールでウェブメディアのインタビューを受け、「2019年9月ごろまでに5~10つの法定通貨と仮想通貨の取引所を開設し、大陸ごとに約2つの取引所を設置したい」などと発言しています。

またBinanceは、取引所以外のサービスやプロダクトを提供するため、世界中の会社やグループにベンチャーキャピタルとしても関わっています。今後は、下記の領域に重点的に関わっていくと発表しています。

  • パブリック ブロックチェーン
  • 分散型取引所(DEX)
  • 保管、決済ウォレット
  • ステーブルコイン
  • 証券の私設取引システム
  • セキュリティトークンのプラットフォーム

この動きの背景には、仮想通貨業界が今後の金融業界を支える土台になっていく、との先見の明があります。ブロックチェーン技術はまだ未成熟な部分もあります。さらには、仮想通貨の価格低下も多くの投資家や仮想通貨利用者の頭を悩ませています。
しかし、これまでがあまりにも性急すぎたのです。これからが本番。世の中を改革していく技術が広まるために本当に必要なものは何か。それをCZ氏は自問し、同時に業界へも呼びかけています。

■ 透明性を確保する、をスローガンだけにしない

2018年、日本各地で洪水が発生した時のことです。CZ氏は大きな被害を受けた西日本のために寄付をしました。ここまではよくある話です。彼が違ったのは、その寄付がどの口座から、いくら振り込まれたかを明らかにしたことです。

しかも、それを会社のサイトに「CSRとして実施した」と簡潔に書くのではなく、どの組織と連携して、どのような資金の流れを生み出したのかまで明確にし、記事にまとめました。それが下記の記事です。

2018 West Japan Flood Donation Report

透明性が大切といいつつも実行できていない企業が多いなか、CZ氏は何をどのように行ったのかを細かいところまでわかるよう、記事にして世の中に知らしめました。

この行動が世界中から喝采されたことは言うまでもありません。スローガンだけで終わらせず、実践する。ここにも、CZ氏の偉大さが見て取れます。

5)最後に

仮想通貨業界で第3位の地位に、たった1年で躍り出たCZ氏。富豪ときくと、嫉妬のようなネガティブな感情を巻き起こしかねませんが、彼は多くの人に愛され、その発言や動向には好意的な目線が注がれています。彼は業界に対して中立的で、決して射幸心を煽るようなことはしません。その姿勢が多くの人から愛されている理由の一つでしょう。

参考
Binance (Wikipedia)
2018 West Japan Flood Donation Report

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

関連記事一覧