J.K.ローリング:魔法をかけ続ける作家

1965年7月31日生まれのイギリス作家。魔法使いハリーと、闇の魔法使いヴォルデモートの対決を描いた「ハリー・ポッター」シリーズで一世を風靡する。同小説は映画化され、スピンオフ作品「ファンタスティック・ビースト」では脚本を担当。今なお、世界中に物語の魔法をかけ続けている。

誰でも一度は目にしたことがある「ハリー・ポッター」シリーズ。世界中の子供と大人を虜にし、5億部以上出版されました。史上最も売れたシリーズ作品であり、映画も世界歴代3位の興行収入をあげています(2018年9月時点)。
イギリス女王よりも資産を持っていると噂される彼女ですが、ツイッターでのファンとのやりとりも嫌味がなく、慈善活動に力を注いでいる姿にも好感が持てる作家です。
世界中の人が知っている本を書いた著者は、どんな人物なのでしょうか。この記事で解説していきたいと思います。

【悲しみのなかでの執筆】

幼少期から本を読むことが好きで、初めて書いた作品は「はしかのうさぎ」。5歳のときに書いた物語で、妹を読者にしていました。
学生時代には、ハーマイオニーのようにガリ勉の時期や、男の子に喧嘩をふっかけられていたような頃もあったとか。
この作品の執筆中に彼女は、母親の他界、シングルマザーでの子育て、生活保護を受ける身になるなど、辛い経験をたくさんしています。魔法が溢れた楽しい世界の物語が、暗い影を落とす内容になったのも、この悲しい一連の出来事が影響しているといいます。
ストーリーだけでなく、キャラクターにも彼女の人生が投影されています。彼女の母親が赤毛だったそうで、これはハリーの母親の「深みがかった赤い髪に、ハリーそっくりの緑の目」に反映されています。一方父親に関しては、ローリングがあまり自分の父親をよく思っていなかった影響からか、ダンブルドアやシリウスをはじめ、あらゆる「良き父親像」が登場します。
また、母の病が進行していくのを見るのが辛かった頃、たびたび彼女を街へ連れ出してくれた友人の愛車、フォードアングリアは彼女にとって自由の象徴だったそう。作中でもハリーをダーズリー家から救い出す役目として登場しています。この友人がロンのモデルになっています。
さらに彼女は、貧困と心労でうつ病になり、自殺を考えたこともありました。そのことがディメンター(作中登場する魂を吸いとる魔法生物)を生みだすきっかけになっています。

作品執筆後、児童文学にしてはあまりにも長すぎるということで、なかなか出版社が決まりませんでした。この作品が世の中に出なかったらと、想像すると恐ろしいですよね。出版を決めたブルームズベリー出版社には、盛大な拍手を送りたいものです。

J.K.ローリング

【慈善活動】

ローリングは売れっ子作家になってからも、自身に起きた辛い過去や悲しい出来事を忘れず、積極的に慈善活動に参加しています。
ロンドンに本部を置く、シングルペアレント・ファミリーのための全国協会に50万ポンド寄付し、2000年には同協会の慈善大使も務めました。また、地元エディンバラでは、ガン患者とその家族に対するカウンセリングや支援を行なっている、マギーズ・センターズのために動いています。その内容は、スコットランド各地で朗読会を開催するというもの。これは、新しい支援センターを開設するための資金集めの助けとなりました。
母の闘病生活を通じて関わりを持つようになった、スコットランド多発性硬化症協会の後援者にもなりました。また、多発性硬化症の研究・治療のためのクリニック設立基金で、1000万ポンドの寄付も行っています。

さらに、お堅いイメージの慈善活動を身近に感じてもらう工夫をしている慈善団体、コミック・リリーフを支援しようと2冊の本を書き下ろしました。「ホグワーツ校指定教科書」とされ、タイトルは「幻の動物とその生息地」と「クィディッチ今昔」。こちらは2冊とも「ハリー・ポッター」作品に教科書として登場するため、発売当初、子供たちはこぞって読みたがりました。この本の売り上げは、世界中の貧しい子供達へ渡るようになっています。
そして、「幻の動物とその生息地」はニュート・スキャマンダー名義で出されており、彼が主人公となる映画、「ファンタスティック・ビースト」も全世界で公開されており、彼女の紡ぐ物語の魔法はまだまだ続いています。

2005年に設立された慈善団体「ルーモス」の活動も有名です。名前の由来はもちろん、作中に登場する光を灯す呪文「ルーモス」。
この活動の目的は、「世界中の孤児院などで暮らす子供たちが、施設でなく“家族”と暮らせるようにする」ことです。2017年、ローリングはイギリスのウィリアム王子から、名誉勲位「コンパニオンズ・オブ・オナー勲章」を授与されました。これは、文学と慈善活動への貢献が認められた証です。

イヴァナ・リンチ

【病気の“ルーナ”を救った】

世界中の子供たちに勇気を与えた彼女の作品。その物語の魔法は、片田舎に住む闘病中の少女のもとにも届きました。
「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」から登場する、ルーナ・ラブグッド役のイヴァナ・リンチ。11歳か12歳のころ、摂食障害と闘っていた時期がありました。入退院を繰り返すほどの重症だったイヴァナを救ったのが、「ハリー・ポッター」シリーズでした。意識をそらしてくれる唯一のものが、この物語だったのです。彼女が作者のローリングにファンレターを送ったところ、なんと返事が返ってきました!超売れっ子作家で多忙なローリングから、一人のファンに返事が送られてくるなんてすごいことですよね。イヴァナの書いた手紙が熱心で、作者のハートに刺さった内容だったのだろうと想像できます。
そんなイヴァナはルーナ・ラブグッド役のオーディションに参加。プロデューサーによると、「他の応募者はルーナを演じることができたが、イヴァナはルーナそのものだった」そう。映画への出演は摂食障害を克服する手助けになりました。
今でも、ツイッターなどでローリングとイヴァナの交流は続いています。

【人類の平等を訴えるリベラル派】

ハーマイオニー役のエマ・ワトソンはフェミニストとして有名です。「『女らしくあるべき、男らしくあるべき』というステレオタイプの概念から脱却しよう」という彼女の行なったスピーチは、多くの人たちの胸に響きました。
作者のローリングもリベラルな考えを持っており、彼女のツイッターでの発言も話題になっています。「女性と意見が合わないときに、女性蔑視の言葉を使うのはリベラルでない」と語っており、多くのフォロワーから賞賛されています。舞台版「ハリー・ポッターと呪いの子」のハーマイオニー役に、黒人女性が選ばれたことに対して異論が上がったときも、「一度も作中で、ハーマイオニーが白人だと明記されていません。ハーマイオニーが黒い肌の女性であるというのも十分ありえることです」と、反論しました。彼女のリベラルな考え方がうかがえますね。
「ハリー・ポッター」の物語のなかでも、魔法使いの両親を持つ「純潔」の魔法使いを尊重し、非魔法使いであるマグルの子は忌むべきだと考える人物と、「マグル生まれである」「純潔である」と区別するのは恥ずべきことだと主張する人物の両方が描かれています。彼女が作品でも、人種問題に焦点を当てていることがわかるでしょう。
また、座敷しもべ妖精が無給料で働かされていることに対して、ハーマイオニーは「給料をもらうべき」と活動を始めます。
このように、「ハリー・ポッター」シリーズは子供向けでありながら、大人の世界にも言及しています。加えて、作者の世間に対する考え方などもストーリーに組み込まれているのです。

【ファンとの交流】

世界の大富豪ランキングにも名を連ねるローリング。彼女はそれにお高くとまることなく、ツイッターなどでファンと交流している姿がよく話題に上がっています。
例えば、自傷行為に悩む女性のために作者自らタトゥーをデザイン。返信を送られた女性は、リストカットした部分に自分を守る呪文「エクスペクト・パトローナム」のタトゥーを入れ、その画像を投稿しました。このやりとりに多くのファンが感動し、多数のあたたかいコメントが寄せられたのです。
また、「ハリー・ポッター」と「ファンタスティック・ビースト」の主人公を描いたイラストを投稿したファンへ、「このイラスト大好き」と返信。そのイラストのツイートは、ローリングのページにしばらく固定されていました。
世界中を熱狂させた素晴らしい物語を書いた作者は、気さくで親しみやすいファン思いの人物でした。

【まとめ】

このように、億万長者となったイギリスの作家ローリングは、自らの辛い経験を忘れることなく、慈善活動やファンとの交流を大事にしている作家でした。「ハリー・ポッター」シリーズはもちろん、「ファンタスティック・ビースト」シリーズの人気も衰えることを知りません。世界中に物語の魔法をかけた作家は、ファンからも愛される人柄の人物でした。

J.K. Rowling

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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