トゥールーズ(フランス):新古典主義の巨匠、ドミニク・アングル学びの地

「ドミニク・アングル」は18世紀中盤〜19世紀初頭にかけての芸術運動「新古典主義」の巨匠である。美しい曲線美と本物のような質感美を描き出したアングルの作品は、今なお注目を集め続けている。「グランド・オダリスク」に代表される数々の名作は、芸術史に深く刻まれているだろう。そんなドミニク・アングルが芸術を学んだ地がフランスの「トゥールーズ」。新古典主義の巨匠アングルとトゥールーズの魅力を、ご紹介していこう。

(Public Domain /‘Jean-Auguste-Dominique Ingres’by André-Adolphe-Eugène Disdéri. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

新古典主義の巨匠「ドミニク・アングル」

「ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル(Jean-Auguste-Dominique Ingres)」は端正な形式美が持ち味の偉大な画家。「新古典主義(Neoclassicism)」を代表する画家としてその名を馳せています。流れるような曲線の美しさと写実的でリアルな質感は唯一無二。先人の作品の研究にも多くの時間を割いていたというアングルの作品は、後世の芸術にも大きな影響を及ぼしました。アングルの登場以前と以降で芸術家の作品に差が生じているといわれるほどです。現代においても同様でしょう。

1780年、フランス南部のムースティエに誕生したアングル。父親は画家であり彫刻家、アングル自身も幼少期から絵画や音楽などを学んでいたといわれています。11歳のときにトゥールーズの美術アカデミーに入門。1797年には新古典主義の巨匠「ジャック・ルイ・ダヴィット(Jacques-Louis David)」のアトリエへと歩みを進めました。若手の登竜門といわれた「ローマ賞」を受賞したアングルの技術は、当時から確かなものだったのでしょう。

(Public Domain /‘The Grand Odalisque’by Dominique Ingres. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

「グランド・オダリスク(La Grande Odalisque)」は1814年に制作された、ドミニク・アングルの代表作品。展示された当初は批判にさらされたという作品には、肩越しに振り返る妖艶な女性の姿が描き出されています。

(Public Domain /‘The Turkish bath’by Dominique Ingres. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

「トルコ風呂(Le Bain Turc)」は1862年、アングル82歳のときに制作された作品です。多くの裸婦の姿を描いた作品は、現在フランスの「ルーヴル美術館(Musée du Louvre)」に所蔵されています。多くの作品を残した偉大な画家アングル。その感性の源泉は、学びを得た地「トゥールーズ」にあるのでしょう。

ドミニク・アングルが学んだ地「トゥールーズ」

「トゥールーズ(Toulouse)」はフランスの南西部、オート=ガロンヌ県の北部に位置する街です。オレンジや赤色を使用した多くの建物の外観から「バラ色の街(Ville Rose)」と呼ばれています。また、近郊にスミレが多く群生していることから「スミレの市街(Cité des Violettes)」と呼ばれることもあります。その別名から想像できるように、トゥールーズは鮮やかで華やかな街並みが特徴。特に夕暮れ時の美しさには圧倒されるはずです。

長年歴史に「トゥールーズ」の名前が刻まれた街は、3世紀〜4世紀の年月をかけ拡大していきました。14世紀に貿易を通して繁栄を遂げ、フランスでも第4の規模を持つ街として存在感を現してきました。1920年代には航空産業のパイオニアとしての地位を確立。現在はヨーロッパの航空産業・宇宙産業で中心的な役割を持つ街としても有名です。また、多数の外国出身者が住んでおり、多様性に満ちていることもトゥールーズの特徴といえるでしょう。

トゥールーズの見所

「バラ色の街」と呼ばれるほどに美しい街並みが自慢のトゥールーズ。街中には個性溢れる建造物や観光地が豊富にあります。街のシンボルである「サン・セルナン・バジリカ大聖堂」やドミニコ会最古の修道院「ジャコバン修道院」、街の中心に位置する「キャピタル広場」などが見所の中心でしょう。また、航空・宇宙産業の中心を担う「エアバス社」の見学ツアーもぜひ体験したいところです。トゥールーズの街の見所をご紹介します。

フランス最古のロマネスク様式「サン・セルナン・バジリカ大聖堂」

「サン・セルナン・バジリカ大聖堂(Basilique Saint-Sernin de Toulouse)」は11世紀〜13世紀にかけて建造され、トゥールーズのシンボルになっています。1998年にはユネスコ世界遺産に認定されました。現存するロマネスク様式の大聖堂としてはフランスで最古。堂々とした風格のある佇まいは、街を代表する見所といってもよいでしょう。高さ67m、八角形の尖塔は街のどこからでも目にすることができます。

「フランスのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路(Chemins de Saint-Jacques-de-Compostelle en France)」の重要な役割を担っており、かつてキリスト教の聖地巡礼をする人々が立ち寄っていた大切な場所。丸みを帯びたシンプルな作り、白とオレンジが印象的な外観は、安堵の気持ちをもたらし穏やかで優しげな表情を覗かせるでしょう。

身廊の南に設置されている「ミエジュヴィル門」。「街の中心」を意味する門にはキリストの昇天をモチーフにした彫刻が施されています。繊細な装飾は必見でしょう。大聖堂内部、祭壇の上部にはキリストの再臨の様子が描き出されています。半円状の美しい天井も見逃せないでしょう。4世紀〜5世紀時代のキリスト教の石棺にも注目です。

夜にはライトアップもされ、幻想的な一面を覗かせます。照明に照らされる姿は荘厳といえますよ。

ドミニコ会初の修道院「ジャコバン修道院」

「ジャコバン修道院(Couvernt des Jacobins)」は13世紀に建造されたゴシック様式の建造物。1206年、聖ドミニコによって設立された「ドミニコ会」が最初に建造した修道院として知られています。赤色のレンガが鮮やかな外観には、ゴシック様式の特徴である尖塔やアーチ状の窓が多数設置。

目を引く八角形の鐘楼は高さ45mです。細い路地の先に佇む修道院は街に住まう人々に愛されてきた為か、外観は美しく整備されています。

「ヤシの木」とも形容されるジャコバン修道院の内部。天井の高さはおよそ23mにもなり、建てられた柱の数は22本にもなります。柱と天井を繋ぐ装飾の見た目はまるでヤシの葉。天井に伸びる美しい螺旋のアーチから「ヤシの木」の言葉の真意もすぐにわかるでしょう。有料で鑑賞することができる回廊や中庭も見応えがあります。中心にそびえる糸杉と取り巻く回廊の柱は青空によく映えるでしょう。緑と赤の対比図は見事といえます。

オクシタンクロスが広がる「キャピトル広場」と壮麗な「トゥールーズ市庁舎」

「キャピトル広場(Place du Capitole)」はトゥールーズの街の中心地。バラ色の街を象徴するような、赤レンガを多用した建造物が周囲を固めています。広場の広さは12,000㎡。石畳が広がる中心部分には、全長18mにもなるオクシタン地方独特の末広がりが美しい十字架模様の「オクシタンクロス」。その先端には12星座を現したモチーフが描かれています。足元にもぜひ注目してみてください。

「トゥールーズ市庁舎(Mairie de Toulouse)」は鮮やかなオレンジの外観が印象的な、キャピトル広場のランドマークです。長い間、街の象徴として君臨してきた建物。その外壁部分は17〜18世紀頃に建造されたものだといいます。市庁舎は内部も開放されており、宮殿のような内装を見学することもできます。「大広間」は一面に壁画が描かれた豪華絢爛な市庁舎の一角。ときに結婚式もおこなわれる大広間、豪華な佇まいに圧倒されますよ。

トゥールーズの街を彩る橋と航空産業の中核、名物料理の「カスレ」も見逃せない!

全長647mにもなる「ガロンヌ川(Garonne)」に沿った街の風景は美しいものです。「ヌフ橋(Pont Neuf)」はガロンヌ川にかかるトゥールーズ最古の橋。全長238mにもなる橋が描く見事なアーチは、見るものを魅了するでしょう。夕暮れ時、街がオレンジに染まる時間帯はぜひこの場所へ。ガロンヌ川に沿った街並みが徐々に暗闇に紛れる姿は壮観です。近隣にはカフェやレストランも豊富なため、散策中の一休みにも最適の場所でしょう。

トゥールーズはヨーロッパの航空・宇宙産業を牽引する街です。「エアバス(Airbus)」は航空産業の2大巨頭。トゥールーズにはその本社が位置しています。エアバスを訪れるなら、事前予約制の見学ツアーに参加必須でしょう。実機のコンコルドや飛行機の製造工程を見ることができる貴重な機会。世界的にも珍しい体験ができる場所です。近隣に位置する「アエロスコピア博物館(Musee Aeroscopia)」も、ぜひ併せて訪れてみてください。

「ヴィクトル・ユゴー市場(Place Victor Hugo)」はトゥールーズ最大の屋内市場。魚介や肉、野菜などが豊富に陳列された市場内は、街の活気を感じるには最適の場所でしょう。

歩きまわってお腹が空いたら名物料理の「カスレ(Cassoulet)」に挑戦を!白インゲン豆に豚肉や羊肉を合わせた、トゥールーズの名物料理。深い土鍋で長時間煮込まれた、旨味たっぷりの味わいはクセになります。本場の味わいを心ゆくまで堪能してみてください。

バラ色の街、華やかなトゥールーズで滞在を楽しもう!

新古典主義の巨匠、ドミニク・アングルが学んだ地であるトゥールーズの魅力をご紹介してきました。鮮やかで華やか、赤色のレンガが印象に残る美しい街並みは、あなたの思い出にも深い印象を残すでしょう。サン・セルナン・バジリカ大聖堂やジャコバン修道院をはじめとした、興味深い見所も多々あります。これまでに訪れたどの街とも違う、個性豊かな時間を過ごすことができるでしょう。ゆったりとしたバケーションにも最適です。

「トゥールーズ・ブラニャック空港(Aéroport de Toulouse–Blagnac)」は街の北西部に位置する空港です。空港としての利用のほか、エアバスが飛行機を組み立てる際の拠点にしたり、新型のお披露目がおこなわれたりと、話題に事欠かない空港です。

シロイルカに似た外観の大型輸送機「エアバス・ベルーガ(Airbus Beluga)」が見られたらラッキーでしょう。魅力豊かなトゥールーズ。次回の旅先に、ぜひ選んでみてはいかがでしょうか?

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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