ウィリアム・ブレイク:イギリスの幻想画家

(Public Domain /‘Portrait of William Blake’ by Thomas Phillips. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

ウィリアム・ブレイクは1757年にロンドンで生まれた画家です。詩人や画家、銅版画職人として数々の名作を残し、イギリスを代表する幻想画家として有名です。そんなブレイクの生涯と作品とはどのようなものだったのでしょうか。

■ウィリアム・ブレイクとは

ウィリアム・ブレイクは1757年、ロンドンのソーホー地区ゴールデン・スクエア、ブロード・ストリート28番地に生まれました。同年12月11日にはピカデリー教区のセント・ジェームズ教会で洗礼を受けています。

ブレイクは幼いころから絵の才能を示しており、1772年には彫刻家ジェームズ・バジアに弟子入りし、修業を積んでいきます。1779年にロイヤルアカデミーに入学しますが、アカデミーの教育はブレイクを満足させるものではなく、次第に足が遠のいてしまいます。その後ブレイクは銅版画家や挿絵画家として独立し、生計を立てていきました。

1782年にはキャサリン・ブーシェと結婚。ブレイクは教養のなかったキャサリンに、読み書きはもちろん絵の描き方も教え、そんなブレイクをキャサリンは盲目的に崇拝するようになっていきました。

(Public Domain /‘Songs of Innocence (Title page)’ by William Blake. Image via WIKIMEDIA COMMONS)
(Public Domain /‘Songs of Experience: Title page’ by William Blake. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

そんなブレイクにとって転機となったのは1788年のことでした。その年ブレイクは新しい版画技術の手法、レリーフ・エッチングを発明します。これにより彩飾印刷ができるようになりました。また出版社から独立し、自分の印刷機で自分の本を印刷することも可能になりました。自身の版画印刷所を開設すると1789年に《無垢の歌》、1793年《天国と地獄の結婚》、1794年、《無垢と経験の歌》と次々に自身の作品を発表していきます。

1800年になると詩人ウィリアム・へイレイから挿絵の依頼を受け、へイレイが住む小さな海沿いの街フェルファムに引っ越すものの、徐々に二人は衝突するようになってしまいました。また1803年には兵士と言い争いになり訴えられてしまいます。これをきっかけにブレイクはロンドンに戻ることになります。

(Public Domain /‘Jerusalem, Plate 1, Frontispiece’ by William Blake. Image via WIKIMEDIA COMMONS)
(Public Domain /‘page 1 of Milton a poem, scanned from a copy held by the New York Public Library’ by William Blake. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

1804年にロンドンに戻ると、ブレイクは大作《エルサレム》に取り掛かります。《エルサレム》は約15年の歳月を要する大作となりました。1823年からはヨブ記の版画を21枚制作。さらに、とダンテの神曲の水彩画を102枚描くなど精力的に制作活動を行っていましたが、1827年ブレイクは69歳で死去。そのため、神曲を描いた作品群は未完成で終わっています。

■ウィリアム・ブレイクの作品

ブレイク作品はエルサレムやダンテの神曲など古くから好まれたモチーフを扱いつつも、独特の構図と幻想的な表現が特長です。ブレイクの表現は多くのアーティストたちに影響を与え続けており、20世紀においては詩人アレン・ギンズバーグやロックスターであるアトミック・ルースターなどの作品にその様子が見られます。そんなブレイクの作品とはどのようなものだったのでしょうか。主要な作品を中心にご紹介します。

(Public Domain /‘Elohim Creating Adam’ by William Blake. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

・《アダムを想像するエロヒム》 1795年-1805年

本作品は1795年から1805年にかけて制作された作品で、現在はテートギャラリーに所蔵されています。旧約聖書創世記の一説「主なる神は土のちりで人を創った」の場面を描いたもので、エロヒムはヘブライ語で神の名前を意味しています。

エロヒムは横たわるアダムのほおに手を当てており、いままさに土の塵から人類最初の男であるアダムを創り出したように見えます。自らに似せてアダムを作ったという記述にあるように、エロヒムとアダムの表情はどこか似ているようにみえます。

(Public Domain /‘The Ancient of Days’ by William Blake. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

・《日の老いたる者》 1793年-1794年

本作品は1793年から1794年に制作されたもので、現在は大英博物館に所蔵されています。本作品はブレイクのお気に入りであったことでも知られており、宇宙の創造神を描いた作品です。

(Public Domain /‘Newton’ by William Blake. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

雲と太陽と思われるものを背景に創造神ユリゼンはしゃがみこんでおり、手はコンパスのような動きを見せています。そのコンパスの光は長く伸び、より暗い空間に向かって伸びています。このコンパスを用いた表現は次の年に完成した《ニュートン》という作品にも用いられており、お気に入りの表現であったことが窺えます。

前述のように本作はブレイク自身が気に入っていたため、多くの複製が本人によって作られました。少しずつ彩色が異なるそれらは、ヨーロッパやアメリカにある図書館や美術館でみることができます。
また、本作品はブレイクの作品の中でも一般の人々に大変好まれた作品で、複製品が大量に生産されました。

(Public Domain /‘Nebuchadnezzar’ by William Blake. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

・《ネブカドネザル》 1795年-1805年

本作品は1795年から1805年に制作された作品で、現在はテート・ブリテンに所蔵されています。モチーフとなっているのは旧約聖書の一書であるダニエル書のネブカドネザルの一説です。バビロニア王であったネブカドネザル2世は過剰な自尊心から発狂してしまい、その罰として草を食べる雄牛として生きることになってしまったという場面を描いているとされています。

伝記作家のアレクサンダー・ギルクライストが、「狩りをした獣のように岩間の巣に這う狂った王」と表現したネブカドネザルの姿は、どこか滑稽でありながら哀れな姿にうつります。ブレイクは同じ構図を《天国と地獄の結婚》でも用いています。

(Public Domain /‘Blake Marriage of Heaven & Hell i p3 detail (1827) Fitzwilliam Museum’ by William Blake. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

・《天国と地獄の結婚》 1790年-1793年

本作品は1790年から1793年に制作された本です。聖書の預言に基づいて制作されたものであり、版画家でありながら詩人でもあったブレイクの世界観が全面に表現された作品となっています。
本作品の制作にあたってブレイクはもちろん、その妻キャサリンも版画の色付けに参加し、夫婦の共作となった作品でもあります。

(Public Domain /‘The Great Red Dragon and the Woman Clothed with the Sun’ by William Blake. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

・《巨大な赤い龍と太陽の衣をまとった女》 1805年

本作品は1805年に制作された作品で、現在はブルックリン美術館に所蔵されています。ブレイクはこの時期100点を超える聖書の挿絵を描いていましたが、本作もそうした作品の一つで、ヨハネによる黙示録に出てくる巨大な赤い龍に関するシーンを主題としたものです。

ヨハネによる黙示録は新約聖書の最後の書であり、キリスト教徒への信仰を保つようにという警告とともに、背教した場合どのような結果が待っているのかという寓話が語られています。女性は神の信者であるキリスト教徒を生み出す者を示しており、龍はサタンを具現化しています。

■おわりに

ウィリアム・ブレイクは、その作品の独自性から同時代の人々からは変人と思われていましたが、その後の批評家たちからは高く評価され、2002年BBCの「100人の偉大なイギリス人」の世論調査では38位になるほどでした。
詩人アレン・ギンズバーグやロックスターであるアトミック・ルースターなど、20世紀のアーティストたちにも多大な影響を与えたブレイクの作品は世界中の美術館に所蔵され、現在も人々を魅了し続けています。

参考サイト:wikipedia、2021年1月13日閲覧
ウィリアム・ブレイク
William_Blake

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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