バンクシー:社会現象を巻き起こした謎だらけの覆面アーティスト

「バンクシー」の作品がサザビーズのオークションに出品され、140万ドルで落札された直後にシュレッダーが作動して引き裂かれるというニュースが世界中を駆けぬけました。謎に包まれた「バンクシー」についてさまざまな憶測が飛び交い、そのことが人気に拍車をかけています。今回は「バンクシー」について調べてみました。

「バンクシー」について

世間を騒がせている「バンクシー」は、イギリスのロンドンとその周辺をベースに活動している覆面アーティストです。「バンクシー」は1人なのか、それとも数人のグループで活動しているのか、さまざまな憶測が飛び交っています。

社会を風刺する内容のストリートペインティングを、世界各地で行っている「バンクシー」。正式な許可をとって描くのではなく、ゲリラ的に出没し無断で描いて立ち去るという手口が特徴です。

ストリートペインティングでは、主にステンシル(型紙)を使って人物像や象徴的なイメージを描く手法が用いられています。傾向としては、資本主義を批判する内容や権力主義に抵抗する、政治的なメッセージ性が強いようです。

2000年代前半頃には、ニューヨークにあるメトロポリタン美術館やロンドンの大英博物館などに忍び込んで、制作した作品を館内展示作品に紛れ込ませるパフォーマンスが話題になりました。

最近では、ロンドン・サザビーズのオークションに出品された「赤い風船に手を伸ばす少女」が話題になりました。140万ドルで落札された直後、額縁に仕込まれたシュレッダーにかけられるというハプニング(パフォーマンス)には、誰もが呆気にとられてしまいました。この作品は「バンクシー」の代理人により、「愛はゴミ箱の中に」というタイトルに改題されています。
アート作品が高値で売り買いされる現状へのアンチテーゼとして行ったパフォーマンスだといわれています。「このパフォーマンスでさらに作品の価値が高まったという意味で、アンチテーゼになっていない」という意見もあるようです。

反資本主義の立場を宣言する「バンクシー」は、企業とのコラボや制作依頼を受けません。これまで、ナイキやソニー、マイクロソフトといった世界トップ企業からのオファーがあったようですが、すべて断っています。例外として、2002年に日本のファッションブランド「モンタージュ」のTシャツだけデザインしているようです。こちらは、すでにどのアイテムも売り切れています。

さまざまな憶測が飛び交う「バンクシー」とはいったい何者なのか?

「バンクシー」は個人だという説と、グループで活動しているという説があります。
最近、「バンクシー」に関わりがあると思われる男性を撮影した動画が公開されて、話題になりました。

この男性は「ロビン・ガニンガム」という人物で、イギリスのブリストル大学の卒業生。「バンクシー」の作品が発見された場所と「ロビン・ガニンガム」の行動が一致していることから、彼が「バンクシー」ないしは「バンクシー」のメンバーである可能性は極めて高いといわれています。

そしてもう1人名前が挙がっているのが「ロバート・デル・ナジャ」という人物。「ロバート・デル・ナジャ」はイギリスのバンド「マッシブ・アタック」のメンバーで、バンドを結成する前はグラフィックアーティストとして活動していました。

主な「バンクシー」の作品

「陽気な子猫」

「陽気な子猫」は、2015年にガザ地区の北部、ベイトハヌーンという廃墟の中で発見されました。ベイトハヌーンは2014年にイスラエル軍の攻撃を受けて廃墟となった街です。廃墟の壁に「陽気な子猫」の絵が描かれています。陰鬱な廃墟と化した街の壁面に突如現れた「陽気な子猫」。廃墟と「陽気な子猫」のコントラストが、シュールな静けさの中で訴えかけてくる作品です。

「風船と少女」

「バンクシー」作品の中で一番有名なシリーズです。ロンドン・サザビーズのオークションに出品された時には、3万7200ポンドで落札された後にシュレッダーにかけられたことが話題になりました。「風船と少女」のシリーズは2002年頃からロンドン周辺のさまざまな壁面に登場しました。
モチーフは、風で飛んでいきそうになっているハート形の風船に手を伸ばしている少女。
最初の作品は、ロンドンのサウス・バンクにあるウォータールー橋の階段に描かれました。次に登場したのはイースト・ロンドン・ショップの壁面でした。
2005年にはイスラエル西岸地区の分離壁に描かれて話題になり、平和と希望の象徴として、ネットを中心に反戦キャンペーンを展開することになります。反戦キャンペーンのアニメーションも制作されています。

「パルプ・フィクション」

「パルプ・フィクション」は、クエンティン・タランティーノ監督の同名作品に登場したサミュエル・L・ジャクソンとジョン・トラボルタをモチーフにした作品です。2人が所持していたピストルはバナナに置き換えられています。
この作品は2002年から2007年までの間に「バンクシー」によって制作されましたが、ロンドン交通局は「放置すれば犯罪を助長しかねない」という理由で消去しました。再度同じ場所に「バンクシー」は絵を描きましたが、今度は2人の衣装がバナナに変更されていました。

「爆弾愛」

「爆弾愛」は爆弾を抱えたポニーテールの少女をモチーフにした作品です。まるでクマのぬいぐるみを抱えるかのように爆弾を抱く少女。2003年にイースト・ロンドンの壁面に描かれました。また、署名入りのものを150枚限定でプリントしました。
「バンクシー」は「爆弾愛」をさまざまなパターンで、壁やキャンバス、ボードなどにステンシルを使って描いてきました。この作品は、まるでおもちゃのように兵器を作り、安易に戦争に走る政府の幼さを批判しています。

「シリア移民の息子」

2015年、フランス・カレー市の一時難民キャンプ「カレー・ジャングル」に描かれた作品です。「カレー・ジャングル」には、イギリスへの入国を試みるシリアやアフガニスタンからの難民が多数収容されています。
モチーフの男性は「スティーブ・ジョブズ」氏。彼をモチーフにしたことについて「バンクシー」は、『「スティーブ・ジョブズ」氏はシリア移民の息子だった。「スティーブ・ジョブズ」氏はアップルを開発して、年間70億ドル以上の税金をアメリカ政府に支払っている。もとをたどれば、シリア移民(ジョブズの父親)の入国を許可したからではないのか』とコメントしています。
カレー市はこの作品を保護ガラスとプラスチックで囲って保護する方針です。

「ピンク色の仮面をつけたゴリラ」

2001年、「バンクシー」の故郷であるブリストルのソーシャルクラブに描かれた作品です。10年以上目印や待ち合わせ場所として親しまれてきました。2011年、ソーシャルクラブからムスリム文化センターに改装した際、オーナーの「サイード・アーメド」氏が塗りつぶしてしまいました。

まとめ

ハプニングを企てたり、驚くような場所に作品を展示したりと、出来事や空間といった演出までも作品にしてしまう「バンクシー」。その動向にこれからも注目したいと思います。

「バンクシー」のホームページ

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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