アレックス・シアラー:アットホームコメディの天才

アレックス・シアラー(1949年〜)はイギリスの作家、脚本家です。約14年間、テレビ、映画、舞台、ラジオ劇の脚本を手がけた後、作家として活躍しました。児童向けのコミカルな冒険小説が人気で、主な作品に「チョコレート・アンダーグラウンド」、「青空のむこう」、「魔法があるなら」などがあります。

■アレックス・シアラーとは

アレックス・シアラーは、世界的なベストセラー作家として人気を集めています。彼は若い頃、30以上の様々な仕事を経験した後、29歳の時にシナリオライターとして認められました。その後、小説家活動に専念しますが、その職歴は作品づくりにも活かされており、登場人物たちの職業や、活躍する舞台がリアルに描かれています。少年の心を忘れていない彼が描く子供たちは、まるでそこに実在するかのようで、ちょっとした会話や行動も、子供たちの動きをよく捉えて表現しています。そんな彼の作品をご紹介しましょう。

■アレックス・シアラーの作品

【チョコレート・アンダーグラウンド】

本作品は、選挙に行く重要さを描いており、子供にも分かりやすい内容となっています。

大人たちが選挙に行くのをサボっていたため、勝利を収めた「健全健康党」によって「チョコレート禁止令」が発令されます。国中から甘い物が奪われ、ケーキ屋、テレビCMでチョコレートの宣伝をしていた役者など、仕事も圧迫されていきました。そんな大人たちを心配した少年ハントリーとスマッジャーは、チョコレートを密造し、「地下チョコバー」を始めます。

笑いを誘うテンポの良い会話や、「健全健康党」の手下となった同級生を出し抜くための罠など、読んでいてワクワクしてきます。まるで、作者自身が見てきた世界をそのまま書き記しているかのように、登場人物が生き生きとしていて、読者側もハントリーやスマッジャーの友達のような気分になれるのです。難しい題材を扱っていても、ユーモア溢れる文章によってスラスラと読み進める事が出来ます。

【青空のむこう】

本作品は、少し涙を誘う物語です。
突然の交通事故により亡くなった少年ハリーは、この世に未練を残し、ゴーストとなって戻ってきました。みんな悲しみに暮れているに違いないと、自宅や学校を見て回りますが、いつも通りに過ごす姿を見てがっかりします。しかも、ゴーストになった身では、なかなか友達や家族に思いを伝える事も叶いません。

子供の「死」を扱っていますが、語り口が軽快なため、重くなりすぎずに読み進める事が出来ます。日常生活を送れる素晴らしさを感じ、家族や友達を大切にしようと思える作品です。

【魔法があるなら】

本作品はイギリスのBBCでドラマ化もされ、1999年のクリスマス・イブに放映されました。

主人公のリビーは、母親に連れられてなんと高級デパートに住む事になりました。デパートの閉店間際、寝具売り場に隠れ、店員が帰った後に店内を彷徨き始めます。幼い妹の面倒を見たり、落ち着きがなく、だらしない母親を嗜めたり、リビーの苦労は絶えません。また、食べ物を買うお金すらないので、賞味期限切れの食品を食べ、寝具売り場のベッドを使って過ごします。

「デパートに住む」という、子供なら一度は夢見る体験を面白おかしく描いています。スリルとユーモアがいっぱいで、家族愛に満ち溢れた作品です。

【13ヶ月と13週と13日と満月の夜】

少し怖いけれど、続きが気になってしまう本作品は、作者が電車に乗っている時に思い付いた物語です。
携帯電話の使用が禁止されている車内で、携帯電話を使用している若い女の子がいました。見兼ねた作者が注意すると、「ダサいじじい!」と吐き捨てられてしまいます。「ダサい」はともかく、「じじい」と言われるほど歳を取っていないと、大変心外だったようです。

本作品は、年老いた魔女に体を入れ替えられてしまった少女カーリーの物語です。中身が子供のまま、おばあさんになってしまったチグハグ感などがリアルに描かれています。「歳を重ねるごとに体は老いていくけれど、心は若いまま」と感じている大人も多いのではないでしょうか。

他の作品と同様にユーモアも健在ですが、読み終わった後にずっしりと考えさせられる作品です。

【海のはてまで連れてって】

本作品は、「最初に断っておくけど、クライヴは馬鹿だ」の一文から始まります。

主人公(兄)は、クライヴ(弟)の困った行動に毎日振り回されていました。ぺたんこの扁平足を直そうと靴の中にソーセージを入れたり、歯を磨くのに靴磨きクリームを使ったりして、父親に怒られています。双子として生まれた主人公(兄)とクライヴですが、「生まれる時、先に母さんのお腹から出ようとした僕を押しのけた」と、兄を責めます。そんな2人ですが、この夏で豪華客船の仕事を辞める父親に内緒で、父親の職場に忍び込む事に成功し、ここから2人の冒険が始まりました。

子供の目線で描かれているので、豪華客船の描写がよりキラキラとしています。最後まで飽きさせないストーリー展開で、夏休みの読書にぴったりです。ちなみに、クライヴの行動が可笑しいので、外で読む事はあまりお勧め出来ません。

【スノードーム】

本作品は、シアラーにしては珍しく、ダークな部分が多い物語です。

「光の減速機」の研究を続ける若い科学者クリストファーは、不思議な物語が綴られた原稿を同僚に残し、ある日突然失踪しました。その物語の主人公である小男エックマンは、顕微鏡でしか見えないようなミニチュアの世界を作る、天才的アーティストです。彼の美術館を訪れた客は、展示物のあまりの緻密さに感動しますが、「さて、本物の芸術を観に行きましょう」と帰っていきました。彼の作品は、「本物」として見なされていなかったのです。そんな彼ですが、パントマイマーの女性に恋をし、芸術家らしく作品で愛を表現しようとします。彼女をモデルに、針の先に立つ踊り子を作成しますが、彼女には他に愛する男性がいました。

科学者クリストファーが失踪した原因と物語がどう絡んでくるのか、読者は気になって目が離せません。歪んだ愛と孤独が美しい作品です。

【骨董通りの幽霊省】

本作品は、アルバイト求人を見かけた2人の小学生が、幽霊ハンターとして幽霊省で働く物語です。

幽霊省は、幽霊がいるかを調べる役所ですが、今まで大した実績を上げられていないため、このままだと3ヶ月で取り潰されてしまいます。そこで、子供の方が大人よりも霊感が強いと思っている職員たちは、子供にアルバイトを頼んで、幽霊がいる事を証明してもらおうと考えました。

シアラーの作品にしては、何となくオチが読めてしまうのですが、真実を確かめたいと思わせる上手な語り口で、最後まで読めてしまいます。子供たちの行動も微笑ましく、「そうそう、こういう子っているよね」と、本の前で頷いてしまう人もいるのではないでしょうか。ユーモアに溢れた温かい作品です。

【まとめ】

アレックス・シアラーの作品は、重い題材を扱っていても、ユーモア溢れる語り口と温かい目線によって、ほっこりした気持ちになるのです。特に子供たちの描写が上手く、まるでクラスや街中にいるような親近感が湧いてきます。また、高級デパートや豪華客船など、舞台となる場所のリアルな描写は、様々な仕事を体験してきたシアラーだからこそ出来るのでしょう。ドキドキわくわくする冒険小説が読みたい子供はもちろん、少年時代に戻りたい大人にも楽しめる物語ばかりです。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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