ピーター・ジャクソン:ファンタジー映画の巨匠

ピーター・ジャクソン(1961年-)は、ニュージーランド出身の映画監督、映画プロデューサー、脚本家である。「ミート・ザ・フィーブル怒りのヒポポタマス」や「ブレインデッド」など、スプラッター系ホラーコメディ映画がヒットし、カルト映画の巨匠となる。「ロード・オブ・ザ・リング」三部作や「ホビット」三部作で有名。

「ロード・オブ・ザ・リング」三部作で、数々の記録を叩き出したピーター・ジャクソン監督。「映画化不可能」と言われていたJ・R・R・トールキンの原作を見事に再現し、完結編である「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」では「タイタニック」に並ぶ、アカデミー賞11部門を受賞しました。彼は、子どものときテレビで観た「キング・コング」に魅了され、自身も8ミリカメラで映画を撮り始めます。そのときの熱意を忘れることなく、30年後「キング・コング」のリメイクに成功するのです。いまや、ハリウッドの殿堂入りも果たしたピーター・ジャクソン監督。「ロード・オブ・ザ・リング」などで大ヒットを記録しましたが、一部のコアなファンに刺さる「ブレインデッド」などのスプラッター・コメディも手掛けています。彼の作品を、製作背景など交えながら解説していきましょう。

【ロード・オブ・ザ・リング三部作】

J・R・R・トールキン原作の「指輪物語」を、実写映画化。人間とエルフやドラゴンなどが共存する国を舞台に、あるひとつの指輪を巡って、壮絶な戦いが繰り広げられます。選ばれし9人の旅の仲間の中心的存在は、背が低く戦闘能力もさほどないホビット族の男たちでした。撮影時にはほかの種族との身長差を表現するために、遠近法を駆使したり、セットに細工を施したりとさまざまな工夫が凝らされています。ホビット族に関しては、意外とアナログな見せ方をしていましたが、この作品はほかのファンタジー映画と同様に、CGがふんだんに使われているのも見どころのひとつです。オークと呼ばれる闇落ちしたエルフの大群による戦闘シーンでは、群の一体一体に別々の動きをさせるために、映画で初めてMASSIVEが導入されました。これは、当時最新のコンピューター技術となっており、「ロード・オブ・ザ・リング」のほかにも「ナルニア国物語」や「エラゴン」などのファンタジー映画でも使われている技術です。ファンタジー界の世界観を形作るCGのすごさはもちろんですが、ストーリーも重厚なものとなっています。原作者のトールキンが学生時代から書いてきた物語とだけあって、作者独自の言語“エルフ語”が使われていたり、人間以外にもホビットやエルフ、ドワーフといった様々な種族が登場したりするため、ファンタジーの世界にどっぷりと浸かれます。

【ホビット三部作】

「ロード・オブ・ザ・リング」の前日譚にあたる作品。「ロード・オブ・ザ・リング」の主人公フロドに指輪を預けたビルボ・バキンズが、どのようにして指輪を手に入れたかが描かれています。この映画では、「ロード・オブ・ザ・リング」に登場する一部のキャラクターの昔の姿も見ることができ、ファンにとってはたまらない作品です。「ホビット」でも最新の撮影技術がふんだんに使われています。一般的な映画の撮影では24fpsを採用しているのに対し、この作品では48fpsを採用。(fpsというのは、一秒間に表示される画像の数を意味します。)そのため、激しいアクションシーンもより鮮やかな映像で観ることができるのです。

また、ロケ地であるニュージーランドの風景が美しく、まさに「中つ国」の世界を表しています。ホビット庄のかわいらしい小さな家も細部まで作りこまれており、ここに住んでみたいという人もいるのではないでしょうか。

【キング・コング】

1933年の映画「キング・コング」のリメイク作品。ピーター・ジャクソン監督は子どものころに同作を観たことから映画製作を志し、2005年にようやくその悲願を果たしました。よほどこの作品に思い入れがあったのか、彼は制作費の一部を自腹で切っています。子供の頃にミニチュアを用いて、自らリメイク作品を作り出したことのあるジャクソン。大人になった彼は最新の技術やスタッフの力を集結させ、この作品を見事完成させました。

アカデミー視覚効果賞、アカデミー音響編集賞、アカデミー録音賞の3部門を受賞。「ロード・オブ・ザ・リング」で培った特撮技術がふんだんに用いられており、なかでもシャッタースピードを落としたブレのある映像は、自身のホラー映画をオマージュしたような演出となっています。

【バッド・テイスト】

当時25歳だったジャクソンが、新聞社勤めの合間を縫って、仲間たちと4年半の歳月をかけて製作した記念すべきデビュー作です。スプラッター・コメディ作品で、主人公を監督自らが務めています。人肉を販売するファスト・フード店を開くため、エイリアンが材料となる人間の調達のため地球にやって来るという設定。とにかく全編通してスプラッター描写が続くのですが、コメディ要素も交えているので不思議と不快にはなりません。いまや、最新技術を駆使して映画を製作しているジャクソン監督ですが、初期の手作り感溢れる作品はカルト的人気を誇っています。

【ブレインデッド】

ゾンビが登場するB級スプラッター・コメディ。1993年アボリアッツ国際ファンタスティック映画祭でグランプリを受賞など、数々の映画賞を受賞しました。映画史上最大量と言われる徹底的な血まみれ映像に笑い転げるか、気持ち悪くなるか、感想が別れるところではあります。この映画でもジャクソンはキャストとして登場。謎の生物の住むスカル島の学者と、葬儀屋助手を演じます。世界中でヒットを飛ばす「ロード・オブ・ザ・リング」と同一の監督なのだろうか?と疑問を持ってしまうほど対照的な作品になっていますが、「ブレインデッド」で使われた技術は「ロード・オブ・ザ・リング」など、のちの作品に受け継がれています。

【まとめ】

ニュージーランド出身の、最新CG技術を駆使するピーター・ジャクソン監督は、子どものころからの夢を持ち続け、実現させた人物でした。血まみれのB級ゾンビ映画を撮るような監督が、正統派ファンタジーである「ロード・オブ・ザ・リング」を撮るまでに、いったいどんな心境の変化があったのでしょうか。B級映画を観るもよし、世界的ヒット作品を観るもよし、2パターンの作品を楽しめる監督となっています。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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