サウサンプトン(イギリス):イギリスの画家、ジョン・エヴァレット・ミレーの原点

「ジョン・エヴァレット・ミレー」は、ラファエル前派を代表する画家の一人です。「オフィーリア」に代表される優雅かつ繊細、写実的な描写は、世界的に高い評価を受け続けています。その名前を聞いたことがある人も多いでしょう。そんなミレーが生まれた街が、イギリス南部に位置する「サウサンプトン」です。貿易港として成長と発展を遂げてきたイギリス屈指の港街でもあります。ジョン・エヴァレット・ミレーとサウサンプトンの魅力を紹介していきます。

ラファエル前派を代表する画家「ジョン・エヴァレット・ミレー」

「ジョン・エヴァレット・ミレー(John Everett Millais)」は19世紀後半に発生した芸術運動「ラファエル前派(Pre-Raphaelite Brotherhood)」を代表する画家の一人です。当時の西洋美術において、フランスの印象派と同様に、象徴主義を牽引したといわれる芸術運動です。ジョン・エヴァレット・ミレーは、そんなラファエル前派の中でも、とりわけ知名度が高い人物です。その画才は幼少から注目を集め、存命中から高い評価を受けていました。

1829年、イギリス南部のサウサンプトンに誕生したミレー。その家族は馬具製造販売業者であったといいます。幼い頃から優れた画才を発揮したミレーは、家族とともに首都ロンドンに転居します。11歳のときには、史上最年少でロンドンのロイヤルアカデミー付属の美術学校への入学を許可されました。16歳のときには美術学校の年次展に入賞。1848年にはラファエル前派を結成し、大きな時代のうねりを形成していきました。「ファンシー・ピクチャー(Fancy Picture)」と呼ばれる、幼い子供を描いた作品も高い評価を集めています。

(Public Domain /‘Ophelia’ by John Everett Millais. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

1896年にはロイヤル・アカデミーの会長に就任。また、華やかな経歴を持つミレーの代表作といえば、「オフィーリア(Ophelia)」をおいてほかにないでしょう。1852年のロイヤル・アカデミー展に出品した作品で、シェイクスピアの戯曲「ハムレット(Hamlet)」のヒロイン「オフィーリア」が題材となっています。鮮やかな色使いとオフィーリアの浮かべる微笑み、自然風景の美しい描写はまさしく最高傑作です。芸術にひとつの潮流を生み出したジョン・エヴァレット・ミレー。その原点はサウサンプトンでの生活にあったのでしょう。

ジョン・エヴァレット・ミレーの原点「サウサンプトン」

「サウサンプトン(Southampton)」は、イギリス南部に位置する港街。古代から人類が暮らしを営んでいた場所といわれ、ローマ人が港を建造、11世紀にはノルマン人によって征服がおこなわれた街です。貿易港として発展を重ねたサウサンプトンは、13世紀までにイギリスの主要な港としての地位を確立。18世紀には軍事港としての機能を果たしていました。また、1912年に豪華客船タイタニック号が処女航海へ出航した場所としても有名です。

現在のサウサンプトンは、医療技術とサウサンプトン大学を要とする学術都市として発展が進んでいます。ウォーターフロントでは再開発が進み、摩天楼の姿も散見されるようになってきました。街の発展は今後も加速していくでしょう。また、サウサンプトンは街中に50以上の公園がある、「緑の街(Green City)」としての側面もあります。もちろん、多くのクルーズ船が寄港する港街としての役割も健在。資源が豊富な街でもあります。

サウサンプトンの見所

歴史深い港街であるサウサンプトンには、いくつもの見所が存在しています。800年以上の歴史を誇る木造りの家「チューダーハウス」や、かつて建造された「旧市街の城壁」、サウサンプトンと豪華客船タイタニック号の歴史を語る「シーシティ博物館」などがその代表でしょう。また、ウォーターフロントにあるイギリス最大規模のショッピングモール「ウェスト・キー」や、「サウサンプトン航空博物館」も注目です。街の見所を詳しく紹介していきます。

800年の歴史を誇る価値ある建物「チューダーハウス」

「チューダーハウス(Tudor House and Garden)」は、サウサンプトンの旧市街の中心に建てられた、木造りの家です。白と黒、茶色の外観がもたらす雰囲気は、シンプルかつ落ち着いた印象です。建造されてから800年以上も経つ、愛すべきサウサンプトンの見所です。1912年には、街で初めての博物館となりました。また、サウサンプトンで最も価値ある建物のひとつといわれています。街を訪れたら見逃すわけにはいきません。

チューダーハウスの内部には、長い歴史を彩ってきた品々が所狭しと展示されています。ヴィクトリア朝の鳥のはく製や中世の宝箱など、見所も豊富。また、裏庭にあるチューダー様式の庭園も非常に美しいものです。16世紀のデザインを用いて幾何学模様を表現したという庭園は、写真映えも抜群でしょう。屋根に木花が生えた、併設のカフェもオススメ。美味しくまったりとした時間を過ごすことができますよ。ショップも併設されています。

街を守る役割を担った「旧市街の城壁」

1153年に建造が始まり、完成までにおよそ300年の時間を費やしたといわれる、サウサンプトン旧市街の城壁。かつて居住していたノルマン人が、侵略を防ぐために建造したものです。建造時は8つの門と29の城壁が造られたといいますが、現存しているのは6つの門と13の城壁のみ。歴史の流れを感じる壮大な姿は、一見の価値ありでしょう。ガイドツアーの参加はもちろん、標識を頼りに自分のペースで歴史のロマンを紐解いていくのも一興です。

「バーゲート(Bargate)」は旧市街の入り口に建てられた、城壁の出発点ともいえる場所です。1175年に建造されてからは、このバーゲートを起点に城壁が造られていったといわれています。城壁巡りの出発点として、これ以上に最適の場所はないでしょう。バーゲート自体の堂々とした佇まいにも注目。週末には周辺でマーケットも開催されており、賑わいを見せます。石畳が広がる中世の街並み、城壁と共に堪能してみてはいかがでしょうか。

街の歴史と豪華客船タイタニック号の歴史「シーシティ博物館」

「シーシティ博物館(SeaCity Museum)」は、2012年に開館した、比較的新しい街の見所です。シンボルとなっているのは、天高く伸びた時計台。博物館自体のモダンなデザインにも注目です。シーシティ博物館の常設展示は2種類あります。「ゲートウェイ・トゥ・ザ・ワールド」は、サウサンプトンの歴史を物語る常設展示。古代〜中世の街の変遷を知ることができるでしょう。幅広く所蔵された展示品の数々は、要注目といえます。

「サウサンプトンズ・タイタニック・ストーリー」は1912年4月10日に初航海に出航し、沈没した豪華客船「タイタニック号(Titanic)」に関する展示スペースです。1/25スケールのタイタニック号の模型展示や、船員が持っていた懐中時計など、見所は多数。館内では事故に至った経緯の解説や、実際におこなわれた裁判の様子も知ることができます。また、擬似的なタイタニック号の操舵を体験することも可能です。お土産も充実していますよ。

イギリス最大規模のショッピングモールとサウサンプトンの航空博物館

「ウェスト・キー(West Quay)」は2000年の9月にオープンした、イギリス最大規模のショッピングモールです。旧市街の入り口であるバーゲートの近くに位置しているため、観光の途中に立ち寄ることもできるでしょう。モール内には100を超えるお店やフードコートも充実。週末には特に多くの人で賑わいを見せるといいます。散策中の一休みにも最適。めくるめくショッピングの大海へ、ウェスト・キーで飛び込んでみてはいかがでしょう。

「サウサンプトン航空博物館(Solent Sky Aviation Museum)」は、港街と同様に航空産業でも発展を遂げてきたサウサンプトンを代表する博物館です。航空産業の歴史を辿り、さまざまな種類の航空機の展示を目にすることで、発展の過程を目撃することができるでしょう。1943年に製造された当時の世界最大の飛行艇「S25 Sandringham」や、併設のショップで販売されているイギリス空軍「レッドアローズ(Red Arrows)」のお土産物を購入してみるのもよいでしょう。サウサンプトンの新しい一面を垣間見ることができますよ。

旅を彩るのは美食も同様。「フィッシュ・アンド・チップス(Fish & Chips)」はイギリスの食の定番ですが、それはサウサンプトンでも堪能することができます。また、ドーバー海峡で採れる舌平目「ドーバーソール(DoverSole)」も絶対に食べたい名物のひとつ。柔らかでふんわりとした食感は唯一無二です。バターでこんがりと焼き上げたムニエルやシンプルなグリルがオススメ。サウサンプトンを訪れたらぜひ試してみてください。

イギリス南部の港街、サウサンプトンで思い出に残る時間を!

イギリスを代表するラファエル前派の画家ジャン・エヴァレット・ミレー。その原点である故郷サウサンプトンの魅力を、ご紹介してきました。長い歴史を刻んできたチューダーハウスや、旧市街を囲うように建造された城壁、街の歴史とタイタニック号にまつわる展示が豊富なシーシティ博物館まで、サウサンプトンを彩る見所は多種多様です。これまでの旅の中でもひときわ印象に残る、思い出深い時間を過ごすことができるでしょう。

サウサンプトンへのアクセスは、首都であるロンドンから電車の利用が一般的です。所要時間はおよそ2時間。電車の車窓から覗く風景も、旅を彩る記念になるはずです。歴史ある街に広がる中世の雰囲気は、ほかで味わうことはできません。また、近年再開発が進んでいるウォーターフロントにも注目でしょう。イギリスでも屈指の観光都市サウサンプトン。次の旅はココに決まりですね。思い出に残る滞在をお約束いたします。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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