ブリストル(イギリス):ランド・アートの芸術家、リチャード・ロングの故郷

「リチャード・ロング」は、イギリスを代表するランド・アートの芸術家です。岩や木などの自然素材を用いた芸術作品の数々は、洗練と穏やかさを兼ね備えています。「歩行の芸術家」とも呼ばれるリチャード・ロングは、多くの時間を自然の中で過ごし、印象的な作品を生み出し続けてきました。そんな彼の故郷が、イギリス西部に位置する「ブリストル」です。港湾都市としての存在感を放つ街でもあります。リチャード・ロングとブリストルの魅力を紹介します。

ランド・アートの芸術家「リチャード・ロング」

岩や木、草原などの自然を用いた芸術「ランド・アート(Land Art)」。その代表的な芸術家の一人が、イギリス出身の「リチャード・ロング(Richard Long)」です。歩行の芸術家とも呼ばれる彼は、自らの足で出向き自然を謳歌、名作と呼ばれる作品の数々を生み出してきました。自然を題材としながらも、環境への干渉はあくまで最小限。ナチュラルな佇まいを披露する作品の数々は、美術館で眺める芸術作品とはまた違った魅力を備えています。

(Public Domain /‘Riverlines’ by Richard Long. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

1945年、イギリスのブリストルに生まれたリチャード・ロング。1966年にはロンドン芸術大学のカレッジへ入学し、芸術の学びを深めていきました。1967年の在学中に発表した作品は、世間からの注目を集めたといいます。場所に束縛されない彼の作品の数々。学生時代に培った芸術性が、ふんだんに反映されているのでしょう。採集した石などを加工せず、ありのままの状態を用いたランド・アートは、変わらずの注目を集めています。

「歩行による線」は、1967年にリチャード・ロングが発表した代表作であり、出世作。ロンドン大学のカレッジ在学中に生み出した傑作は、草原を何度も行き来して残した痕跡を写真に残した作品です。彼の原点ともいえるでしょう。「アスコット・サークル(Ascott Circle)」は、2005年に制作した作品です。大地から突き出た姿が壮大な自然の息吹を感じさせるこの作品。現在、イギリスのアスコット・パークに保存されています。自然の代弁者ともいうべき芸術家、リチャード・ロング。彼の芸術性を育んだ場所が、故郷ブリストルといえます。

リチャード・ロングの故郷「ブリストル」

「ブリストル(Bristol)」は、イギリス西部に位置する港湾都市。エイボン川に沿って建造された街は、水の都の様相を呈しています。40年頃に古代ローマ人によって建造された港が基礎となり、5世紀以降、ブリストルの街を形成してきました。当初の街の名前は「橋が近い場所」を意味する「ブリグストゥ(Brycgstow)」。水の恩恵をたっぷりと受け発展したブリストルは、10世紀には商用港としての地位を確立。さらなる革新を遂げました。

11世紀には羊毛貿易の中心地としても発展を重ねたブリストル。産業革命時代には一時の衰退を経験するも1809年に新しい港が、1841年には鉄道が開通し、かつての繁栄を取り戻していきました。1978年にも新しい港が完成し、現在はイギリス屈指の港湾都市としての地位を維持し続けています。また、2つの大学を要するブリストルは、学術都市としても有名です。独特のブリストル訛りがあることも、街を彩る個性のひとつといえるでしょう。

ブリストルの見所

港湾都市としての確かな地位を確立しているブリストル。その街中には歴史を彩り、また現在も変わらぬ魅力を放つ見所が豊富にあります。街のランドマークたる「ブリストル大聖堂」や、芝生に佇む「セント・メアリー・レッドクリフ教会」、歴史的にも価値ある「グレート・ブリテン号」などはその代表でしょう。街で最古かつ最大の駅「テンプル・ミーズ」も見逃せません。ブリストルの街の確かな見所を、詳しくご紹介していきます。

街のランドマーク「ブリストル大聖堂」

「ブリストル大聖堂(Bristol Cathedral)」は、街の中心に佇む大聖堂。その存在感は、まさしく街を代表するランドマークといえます。12世紀に建造された修道院が基礎となった大聖堂。当時のローマ様式に加えて16世紀にはノルマン様式、19世紀にも大規模な改修が施され、現在は見事なヴィクトリア様式の姿を披露しています。印象的な西側の身廊や目を引く塔は、19世紀に建造されたものです。石壁の壮麗な彫刻も見逃せないでしょう。

2本の塔がおだやかな印象を与える、ブリストル大聖堂。アーチ状の窓や中央に配されたバラ窓は、正面から見ると見事なシンメトリー。その美しさには時間の流れを忘れるでしょう。また、大聖堂内部にも同様に注目です。身廊や礼拝堂などがすべて同じ高さのホール様式を用いた内部は、壮観です。西側の身廊に設置されたステンドグラスや、天井の見事なアーチにも注目でしょう。街中にあるためアクセスも抜群。ぜひ、訪れてみてください。

芝生に佇む「セント・メアリー・レッドクリフ教会」

「セント・メアリー・レッドクリフ教会(St Mary Redcliffe Church)」は、12世紀初頭に建造された、ゴシック様式の教会です。現存している部分の多くは15世紀に建造されました。イングランドで最大級の教区教会。ひときわ目を引く尖塔の高さはおよそ90m、その姿はまさしく天を衝く槍のような形状です。アーチ状の窓が連続する姿は荘厳。歴史を物語る色褪せも、教会を彩る魅力のひとつです。重厚な佇まいの教会は、圧倒的な見所でしょう。

1574年にブリストルを訪れた「エリザベス一世(Elizabeth I)」が、「イングランドで最も美しい教区教会」と称したというセント・メアリー・レッドクリフ教会。内部にはエリザベス一世の木製の彫像も展示されています。天井に施された個性豊かな装飾や、「カオス・ペンデュラム」と呼ばれる、独特の動きをする振り子にも注目でしょう。静寂と荘厳が同居する教会内部。滞在中、最も深い感銘を受ける時間になることは間違いありません。

港湾都市を代表する見所「グレート・ブリテン号」

「グレート・ブリテン号(Great Britain)」は、1845年にお披露目された、世界初の鉄製大型船。現在はブリストルを彩る見所である、博物館としての役割を担っています。総重量3,450トン。圧倒的な規模を持つグレート・ブリテン号は、後に装備を換装。世界初の大型スクリュー推進船です。設計は、グレート・ウェスタン社の技師「アイザンバード・キングダム・ブルネル(Isambard Kingdom Brunel)」によるものです。

船内を見学すれば、甲板や船底などを詳細に鑑賞することができます。当時使用されていた道具や、働いていた人々の様子も再現されているため、現役時代の状況を想起することもできるはずです。かつての時代の最先端、グレート・ブリテン号は、イギリスを代表する鉄製大型船といえます。水に浮かんだその姿はまさしく偉大。船自体の造りにも注目ですが、船首に設置された豪奢な装飾も見逃せないでしょう。船の隅々までぜひご堪能を。

ブリストル最古の駅と最古の吊り橋、街中に点在するゴリラって?

「テンプル・ミーズ駅(Temple Meads Railway Station)」は、1840年に開業した、ブリストル最古にして最大の駅。駅の大部分が一級史跡に指定されている、非常に価値ある建物です。見事な尖塔が統べる駅の雰囲気は、まるで神聖な教会。その外観には目を見張るでしょう。街の公共交通機関の要所でもあり、電車はもちろん、バスやフェリーのアクセスも充実。駅自体も注目ですが、その機能の豊富さに滞在中何度もお世話になることでしょう。

「クリフトン吊り橋(Clifton Suspension Bridge)」は、1864年に建造された、世界最古のワイヤーを使用した吊り橋です。渓谷にまたがるように設置された姿は圧巻。その全長は412mにもなるのだとか。ちなみに、水面からの高さは76m。高いところが苦手な人は、遠くから眺めるに留めたほうが賢明かもしれません。周辺は自然も豊か。ブリストルの街の姿を望むこともできるでしょう。思い出に深く残る印象的な時間になるはずです。写真撮影もお忘れなく。

(Public Domain /‘Western lowland gorilla’ by Adrian Pingstone. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

ブリストルの街を散策していると、なぜかカラフルなゴリラの像が多く目に止まります。これらのゴリラ像は、かつてブリストル動物園の建造175周年を祝うために作られたもの。緑や赤、青色をたたえる華やかで鮮やかなゴリラ像は、街のシンボルマークのひとつです。その総数はおよそ61体にもなるといいます。オークションで競り落とされ、街に点在するさまざまなゴリラの姿。見つけるたびに笑顔がほころぶ、街の隠れた見所ですよ。

歴史を彩る港湾都市、ブリストルの魅力を滞在で

ランド・アートの代表的な芸術家、リチャード・ロングの故郷、ブリストルの魅力をご紹介してきました。港湾都市としての発展と衰退、そしてさらなる革新を遂げてきたブリストル。現在の街並みは、さまざまな価値ある建造物や見所が溢れています。「ブリストル大聖堂」や「セント・メアリー・レッドクリフ教会」、鉄製大型船「グレート・ブリテン号」も見逃せないでしょう。ぜひ、滞在を通してその魅力を感じてみてはいかがでしょうか。

「ブリストル空港(Bristol Airport)」は、ブリストルの街の中心部から南西へおよそ13kmの地点に位置する、街の玄関口です。首都であるロンドンからは電車で1時間半ほどの距離のため、日帰りで訪れることも可能でしょう。多種多様な魅力の宿った街ブリストル。イギリスのほかの主要都市に負けない見所の数々を、あなた自身で確かめてみてください。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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