オデッサ(ウクライナ):抽象絵画の創始者、カンディンスキーが子供時代を過ごした街

抽象絵画の創始者といわれるロシア出身の画家、「カンディンスキー」。10個のシリーズ作品「コンポジション」に代表される抽象絵画の名作の数々を生み出した、稀代の画家です。そんなカンディンスキーが子供時代を過ごした場所が、ウクライナの「オデッサ」。映画史に歴史を刻んだ大作「戦艦ポチョムキン」の名シーンが撮影された場所としても有名です。抽象絵画の創始者カンディンスキーとオデッサの魅力を詳しく紹介していきます。

抽象絵画の創始者「カンディンスキー」

「ワシリー・カンディンスキー(Wassily Kandinsky)」は1866年生まれ、ロシア出身の芸術家です。具体的な対象物を描くことのない「抽象絵画」の創始者としてあまりにも有名な人物。芸術の歴史を変えた人物といってもよいでしょう。モスクワで生を受けたのち、ウクライナのオデッサで子供時代を過ごしてきました。1886年からの4年間はモスクワ大学で法律や政治を、1896年からはドイツのミュンヘンで絵の勉強を本格的に始めたといいます。

年齢にしておよそ30歳。画家としては遅咲きといってもよいでしょう。しかし、カンディンスキーが残した功績はあまりにも偉大です。ミュンヘンで師事したのは、抽象主義の「フランツ・フォン・シュトゥック(Franz von Stuck)」。師匠からの影響も色濃いものだったのでしょうか。1910年には初の抽象絵画を制作、1922年からはドイツの「バウハウス(Bauhaus)」で教鞭をふるっていたともいわれています。また、著作も残しています。

(Public Domain /‘Composition VI’ by Wassily Kandinsky. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

「コンポジション(Composition)」は、カンディンスキーが抽象絵画を描き始めた初期からのシリーズ作品です。その総数は10点、うち3点は世界大戦時に消失しています。幻想的な色使いと線と点。見るものを引き込む独特の雰囲気のこの作品は、彼の代表作といえるでしょう。「青騎士(Der Blaue Reiter)」は1903年に制作された作品。白馬に乗った騎士が緑溢れる牧草地を疾走するシーンを描いたもので、見る人によって解釈がわかれる傑作です。芸術に新しい息吹を吹き込んだカンディンスキー。その原点の一角はオデッサにあるのでしょう。

カンディンスキーが子供時代を過ごした街「オデッサ」

「オデッサ(Odessa)」はウクライナ南部に位置する港湾都市。ウクライナ最大の港湾を備え、かつ国内第3の人口数を誇る大都市です。黒海に面し、温暖な気候が特徴的なオデッサは、ウクライナ屈指のリゾート地としての側面も持ち合わせています。その美しさから、別名「黒海の真珠」と呼ばれることもあるのだとか。また、工業都市としての表情も持ち合わせており、街は繁栄を享受しています。かつては外国との文化交流の拠点でした。

オデッサの起源は、15世紀に存在した「ハジベイ」という名前の集落です。1795年に現在の名前に改称されました。1803年〜1813年にかけて、移民誘致や港湾施設の充実により、オデッサは革新的な発展を経験。人口数も飛躍的に増えていったといいます。19世紀末のロシア帝国時代には、国内第4の規模の街にまで成長。現在はウクライナを支える港湾都市として、確かな地位を確立しています。歴史が深いオデッサには魅力が溢れているのでしょう。

オデッサの見所

黒海の真珠とも呼ばれる美しいオデッサの街並み。港湾都市として発展を重ねてきたオデッサの珠玉の見所「ポチョムキンの階段」は、ほかの街で見ることができない「錯視」を利用した階段です。「オデッサ考古学博物館」をはじめとしたいくつもの博物館や美術館、街のシンボルたる「オデッサ・オペラ劇場」も見逃せないでしょう。オデッサに住む人々の信仰の拠り所「オデッサ大聖堂」も注目です。街の見所をご紹介していきます。

戦艦ポチョムキンで一躍有名に!錯視を利用した「ポチョムキンの階段」

「ポチョムキンの階段(Potemkin Stairs)」は、1841年に完成した大階段。オデッサの港と街を繋ぐ交通の要所でもあります。ポチョムキンの階段は、1925年に公開された映画「戦艦ポチョムキン(Battleship Potemkin)」の有名なシーン、「オデッサの階段」が撮影された場所。1905年に起こった戦艦ポチョムキンの反乱を描いた劇中で、最も印象的なシーンはこの場所で撮影されたのです。「映画史上最も有名な6分間」、史実にはないオデッサ階段での虐殺シーンは、のちの多くの映画作品にパロディやオマージュとして登場しています。

また、ポチョムキンの階段は遠近法を利用した「錯視」が楽しめる場所でもあります。最上段の幅は12.5m、最下段の幅は21mの階段は、上から見ると階段しか目にすることができず、下から見ると踊り場しか見ることができないといいます。映画への登場から錯視を利用した特徴的な造りまで、多くの物語が刻まれたオデッサでも屈指の見所。あなたもぜひ、ポチョムキンの階段の錯視の罠に、心ゆくまでハマってみてはいかがでしょうか?

オデッサの街に点在する3つの博物館・美術館

「オデッサ考古学博物館(Odessa Archaeological Museum)」は、1825年に設立された博物館です。古代ギリシャ風の外観が印象的な博物館には、古代ギリシャ、エジプト、ローマのコレクションが所蔵されています。その総数は16万点を超えるのだとか。特に黒海北岸の古代史に関係するコレクションは充実しています。博物館の正面に鎮座する彫刻の堂々たる姿は必見。古代ギリシャの陶器やガラス器など、歴史の旅に思いを馳せてみては?

「西洋東洋美術博物館(Museum of Western and Eastern art)」は、1923年に開館した博物館です。イタリアを代表する巨匠「ミケランジェロ(Michelangelo)」をはじめ、フランドルの絵画作品や東洋の作品も豊富に所蔵されています。クラシック様式の建物自体にも注目です。珍しい日本の墨絵なども展示。世界の芸術に浸る時間をお過ごしください。

(Public Domain /‘Facade of the museum was repainted red in 20th century’ by Serge Iantchichine. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

「国立オデッサ美術館(Odessa Fine Arts Museum)」は、1820年に建造された邸宅を基礎に、1899年に美術館として開館しました。所蔵している作品の数は1万点以上。16世紀〜18世紀のウクライナ絵画やロシア絵画、現代アートまで幅広く展示しています。ウクライナでも屈指の規模を誇る美術館。圧巻のイコン作品の数々に圧倒されます。

街のシンボル、美しい「オデッサ・オペラ劇場」

「オデッサ・オペラ劇場(Odessa State Academical Opera and Ballet Theatre)」は、1810年に完成した、街を代表するシンボル的な存在です。ルネサンス様式とゴシック様式が混在した外観は、非常に優雅かつ洗練を重ねた様相。ウィーンの建築家「フェルディナンド・フェルナー」と「ヘルマン・ヘルマー」が設計を手がけたことでも有名です。滑らかな曲線と彫刻が織り成すハーモニーは、劇場で上演される演劇に負けずとも劣りません。

現在もオデッサの文化の中心地といわれるオデッサ・オペラ劇場。普段オペラや演劇を鑑賞しない人であっても、オデッサを訪れたらぜひ足を運んでみてください。料金も比較的安く鑑賞することが可能ですよ。劇場の代表的な演劇は、「トゥーランドット(Turandot)」です。内部の壮麗な装飾に目を奪われてみるのもよいでしょう。見学ツアーも催行されていますよ。思い出に残る贅沢な時間を、ぜひオデッサ・オペラ劇場で過ごしてみてください。

オデッサに住む人々の信仰の拠り所「オデッサ大聖堂」と名物の「ボルシチ」を堪能

「オデッサ大聖堂(Odessa Cathedral)」は、1794年に建造、一時は街から姿を消したものの、1999年には再建、2003年に完全な修復を迎えた大聖堂です。円柱が連なる外観は、まるで宮殿。優しげなベージュの外壁と、黒色のドーム天井、尖塔が印象を引き締めます。内装は白を基調に金色の華やかな装飾。毎週日曜には多くの人々が祈りを捧げるために訪れるのだとか。夜には見事にライトアップもされ、幻想的な雰囲気を醸し出してくれます。

「ボルシチ(Borsch)」は、地方ごとに多くの個性が生まれるスープです。ビーツをふんだんに使用したロシアの伝統料理。オデッサでもボルシチは定番中の定番です。深い紅色をしたボルシチを口に含むと、爽やかな酸味と野菜の甘みが口いっぱいに広がります。「スメタナ(Smetana)」と呼ばれるサワークリームを加えれば、より一層の味の変化を楽しむことができます。たっぷりの野菜をいただける、ヘルシーな名物料理といえます。

ウクライナ第3の街、港湾都市オデッサの魅力を謳歌

抽象絵画の創始者カンディンスキーが子供時代を過ごした街、オデッサの魅力をご紹介してきました。映画史上に大きな影響を及ぼした「ポチョムキンの階段」や、3つの博物館に美術館、街のシンボル「オデッサ・オペラ劇場」など、滞在中に訪れておきたい見所は豊富にあります。また、リゾート地としても名を馳せているオデッサ。ビーチも完備されているため、リッチなヴァカンスタイムを過ごす場所としてもオススメです。

「オデッサ国際空港(Odessa International Airport)」は、ウクライナ南部に位置するオデッサの玄関口です。国際線はもちろん、国内線も就航。海外にも国内にも、アクセスをするには容易でしょう。オデッサの中心地へ向かうにも、難しくはありません。映画に芸術鑑賞に美食まで、さまざまな要素を持ち合わせたオデッサは、旅の目的地にも最適です。パスポートを片手に、ぜひオデッサの街を訪れてみてはいかがでしょうか?

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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