パドヴァ(イタリア):ヴェネツィア派の代表、ティツィアーノゆかりの街

イタリア絵画の歴史上、指折りの知名度を誇る人物が「ティツィアーノ」です。ヴェネツィア派の代表ともいわれ、類稀な技術と感性から後世の芸術家に多大な影響を与えた画家で、肖像画や宗教画まで幅広いジャンルを手がけたこともでも有名です。そんなティツィアーノゆかりの街がイタリア、ヴェネト州に属する街「パドヴァ」です。偉大な画家ティツィアーノと、彼ゆかりの街、パドヴァの魅力をたっぷりとお伝えしていきます。

ヴェネツィア派の代表画家「ティツィアーノ」

(Public Domain /‘Self-Portrait’ by Titian. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

「ティツィアーノ・ヴェツェッリオ(Tiziano Vecellio)」は、1490年前後に生まれたとされるイタリアの画家です。15世紀後半〜16世紀にかけてヴェネツィア周辺で活躍した芸術家「ヴェネツィア派」の代表としても知られています。「星々を従える太陽」とも称されたティツィアーノは、肖像画や風景画、宗教画に至るまでさまざまなジャンルの絵画を描き出し、後世の画家に大きな影響を及ぼしてきました。とりわけその筆使いと色使いには特徴があります。また、年代ごとに作品の風合いが変化することも彼の特徴でしょう。

10歳前後のとき、弟と共にヴェネツィアの叔父の元へ画家修行に出向いたことが、ティツィアーノの芸術家人生の始まりといってもよいでしょう。同年代の画家仲間とも、このときに出会いました。ルネサンスを代表する画家「ジョルジョーネ(Giorgione)」の助手としても活躍。当時の評価はすでに高いものであったといいます。1511年にパドヴァでフレスコ画を制作。1512年にはヴェネツィアに工房を構え、名声を獲得していったのです。

(Public Domain /‘Assumption of Mary’ by Titian. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

ヴェネツィア派を代表する画家としての地位を長年獲得していたティツィアーノ。「聖母被昇天(Assunta)」は1516年に制作を開始、1518年に完成した代表作です。たくさんの天使に囲まれた聖母マリアが、天に向かっていく姿を描いたもの。ティツィアーノの名声を確立した作品といえます。「バッカスとアリアドネ(Bacco e Arianna)」も同様に傑作のひとつ。珠玉の名作を描き続けた画家ティツィアーノ。彼のゆかりの地がパドヴァです。

ティツィアーノゆかりの街「パドヴァ」

「パドヴァ(Padova)」はイタリア北東部に位置するヴェネト州、パドヴァ県の県都。北イタリアで最古の街ともいわれるパドヴァの歴史は古く、紀元前1183年には街が建造されていたといわれています。歴史上たびたびの侵攻や支配を受けてきたパドヴァは、13世紀にとりわけの発展を見せました。1405年にはヴェネツィアの支配下に入り、1797年にオーストリア領に、1866年にはイタリアに併合され、その後は農業や工業で発展を重ねてきました。

世界大戦後、急速に発展を遂げてきたパドヴァ。現在は、イタリアでも指折りの繁栄を遂げた地域として認識されています。1222年に創設された名門「パドヴァ大学(Università degli Studi di Padova)」付属の植物園は世界遺産に認定。勉学のため、芸術を学ぶための場所としても、多くの人々を惹きつけています。その魅力は底知れません。

パドヴァの見所

長い歴史を重ねてきたパドヴァの街。その歴史に裏打ちされるように、街中にはさまざまな見所が溢れています。イタリアを代表する画家であり建築家、ジョットのフレスコ画が描かれた「スクロヴェーニ礼拝堂」や、パドヴァの守護聖人を祀った「サンタントニオ大聖堂」、大広間が有名な「ラジョーネ宮」などはその代表でしょう。世界遺産に認定されたパドヴァ大学の植物園も見逃せません。パドヴァの街の見所を紹介していきます。

ジョットの描いた青のフレスコ画を堪能!「スクロヴェーニ礼拝堂」

「スクロヴェーニ礼拝堂(Cappella degli Scrovegni)」はロマネスク・ゴシック様式の礼拝堂。シンプルな外観とは裏腹に、内部にはイタリアの至宝ともいうべき芸術作品が眠っています。14世紀にイタリアの画家であり建築家「ジョット・ディ・ポンディーネ(Giotto di Bondone)」が描いた、一面のフレスコ画です。「青のフレスコ画」とも呼ばれるこの作品には聖母マリアの生涯、キリストの生涯が、緻密な表現を駆使して描き出されています。

見渡すばかりに広がる青の一面は壮観です。受胎告知や最後の晩餐、出口の上部に描かれた最後の審判に至るまで、歴史に残る芸術家ジョットの手によって生み出された壮大なフレスコ画に、心を奪われるでしょう。内部鑑賞するのは事前予約制のため、訪れる前に必ず予約をしておいてください。時間制限は15分ほど。限られた時間で鮮やかな世界を堪能してみるのも乙でしょう。それぞれの描写の細かさに思わずため息が出てしまうはずです。

パドヴァの聖人、聖アントニオを祀った「サンタントニオ大聖堂」

「サンタントニオ大聖堂(Basilica di Sant’Antonio)」は13世紀〜14世紀に建造された聖堂です。改築の作業は15世紀にまで及んだため、現在の建物には多種多様な建築様式が混在しています。ロマネスク様式のファサードやゴシック様式のアーチ、ビサンティン様式までが見事に調和した姿は壮麗です。尖塔やバラ窓が織り成すその佇まいは、必見といえます。

サンタントニオ大聖堂には、パドヴァの聖人である聖アントニオの遺品が祀られています。世界各国からも多くの信者が訪れているのだとか。静けさが似合う大聖堂内部には、荘厳な雰囲気が漂っています。また、イタリア出身の彫刻家「ドナテッロ(Donatello)」が制作した主祭壇のブロンズ像や、正面広場に設置された「ガッタメラータ騎馬像」も見逃せません。パドヴァの主要な見所のひとつである大聖堂。ぜひ、訪れてみてください。

広大な大広間と500を超えるフレスコ画「ラジョーネ宮」

「ラジョーネ宮(Palazzo della Ragione)」は裁判所として12世紀〜13世紀に建造された建物です。古代ローマ時代には街の中心広場であり、パドヴァの生活や文化の集まる場所としての役割も果たしていました。現在の建物地下にはさまざまな種類のお店が軒を連ねており、日々の生活を支えています。観光で訪れた際も、ぜひ覗いてみてください。

ラジョーネ宮の2階には広大な大広間が残されています。天井は船底をひっくり返したようなアーチ状。広がりを生み出す造りは、広い空間をさらに大きなものに感じさせます。大広間の壁には500を超えるフレスコ画が描かれており、それぞれの色彩に目を奪われるでしょう。かつてはジョットの描いたフレスコ画もあったようですが、15世紀に火事で焼失。12星座を描いたものや庶民の生活を描いたものなど、作品のジャンルもさまざまですよ。

パドヴァの芸術と世界遺産の植物園、老舗のカフェで一息

「市立博物館(Museo Civico di Padova)」はスクロヴェーニ礼拝堂と同じ敷地内にある博物館です。1階には考古学に関する展示品を、2階には美術作品の数々を、豊富に展示しています。2階の美術展示にはヴェネツィア派の描いた作品が充実しています。中でもジョルジョーネが描いたとされる2つの小さな絵画は注目。芸術鑑賞のひとときを、ぜひどうぞ。

1997年にユネスコ世界遺産に認定された植物園「パドヴァの植物園(Botanical Garden Padua)」は、「オルト・ボタニコ(Orto Botanico)」とも呼ばれるパドヴァ大学付属の植物園です。1545年に創設された歴史深い場所。園内には1585年に植えられ、ドイツの文豪「ゲーテ(Goethe)」が着想を得たといわれるヤシの木、通称「ゲーテのヤシの木」も現存しています。美しい植物の共演を、じっくりと楽しんでみるのもよいでしょう。

1831年に創業した「カフェ・ペドロッキ(Caffe Pedrocchi)」はパドヴァで最古のカフェです。円柱が連なる神殿風の建物が目印。カフェを訪れたら、代名詞である名物「カフェ・ペドロッキ」に挑戦してみてください。エスプレッソにミント風のクリーム、上からチョコレートをかけた贅沢なデザート。クリーミーでリッチな味わいはパドヴァを訪れたら外せない名物です。散策中の一休みにも最適。昼下がりに贅沢な時間をお過ごしください。

ヴェネト州を代表する街、パドヴァで癒しの時間を

ヴェネツィア派を代表する画家ティツィアーノ。彼が1511年に訪れ、そしてフレスコ画を描いた街、パドヴァの魅力をご紹介してきました。ジョットの鮮やかなフレスコ画が楽しめるスクロヴェーニ礼拝堂やサンタントニオ大聖堂、いくつものフレスコ画が鑑賞できるラジョーネ宮など、魅了されるスポットは無数にあります。博物館や世界遺産の植物園、街で最古のカフェ、ペドロッキで、穏やかな時間を楽しんでみるのもよいでしょう。

パドヴァへのアクセスは、水の都ヴェネツィアからは電車でおよそ30分、花の都フィレンツェからは、電車でおよそ1時間30分の距離です。イタリアを代表する魅力的な街の数々、そのいずれからも容易にアクセス可能なため、日帰りで訪れてみるのもよいでしょう。石畳が広がるオレンジの街並みがひろがる、歴史深い街パドヴァは観光にも最適です。次回の旅の目的地は、パドヴァに決めてみてはいかがでしょうか?

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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