アイゼンシュタット(オーストリア):交響曲の父、ハイドンが過ごした街

「交響曲の父」と称される稀代の作曲家「ハイドン」。生み出した1,000曲以上にも及ぶ名曲の数々は、長い時間が経過しても色褪せることのない輝きを放っています。「天地創造」や「四季」など、世界的に親しまれている曲も残されています。そんなハイドンが長い時間を過ごした街が、オーストリア東部に位置する街「アイゼンシュタット」です。歴史に残る偉大な作曲家ハイドンとアイゼンシュタットの魅力をご紹介していきます。

偉大な作曲家、交響曲の父「ハイドン」

(Public Domain /‘Portrait of Joseph Haydn’ by Thomas Hardy. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

「フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(Franz Joseph Haydn)」は1732年生まれの作曲家。古典派を代表する音楽家として名を馳せ、特に「交響曲(Sinfonie)」と呼ばれる多楽章構成の大規模な曲を多く残していることから「交響曲の父」とも称される人物です。ハイドンが作曲した「神よ、皇帝フランツを守り給え(Gott erhalte Franz den Kaiser)」は、かつてのオーストリア帝国の国歌。現在も、ドイツの国歌に転用されているほどの名曲です。

音楽学校の校長に才能を見出され、6歳の頃から音楽を学び始めたといいます。音楽の都ウィーンに移住後は聖歌隊で9年間働き、1755年には初めての弦楽四重奏曲の作曲を手がけました。1761年には生涯のほとんどを過ごすことになるエステルハージ家での職を獲得。当時のハンガリーでは有数の貴族であったエステルハージ家。ハイドンとの関わりは非常に深いものであったといいます。名曲の数々も、このときに生み出されたものです。

世間の音楽家との交流も少なく、独自の音楽性を開花させていったハイドン。「天地創造(Die Schöpfung)」は1796年〜1798年にかけて作曲された名曲です。聖譚曲、オラトリオと呼ばれるクラシック音楽の代表曲。演奏時間1時間40分に及ぶこの大作は、ハイドンの代名詞といえるでしょう。「四季(Die Jahreszeiten)」も、同様にハイドンが作曲したオラトリオの傑作です。天地創造を生み出した直後に作曲された作品は、全39曲からなる超大作です。歴史に名を刻む作曲家ハイドン。そのルーツは、アイゼンシュタットにありました。

ハイドンが長い時間を過ごした街「アイゼンシュタット」

ハイドンが仕えたエステルハージ家。その邸宅が位置していたのが、オーストリア東部にある街「アイゼンシュタット(Eisenstadt)」です。ブルゲンランド州の州都としての役割を担っている一大都市。4つの地域にわけられた街中には、多くの名所が根付いています。街の周辺にはぶどう畑が広がり、自然も豊か。近郊にはユネスコ世界遺産にも認定されているヨーロッパ最大規模の遠浅湖「ノイジードル湖」が、雄大な存在感を披露しています。

アイゼンシュタットの歴史は古く、紀元前12世紀以降に発展した「ハルシュタット文化時代」の遺物も発見されています。ケルト人やローマ人も居住したこの土地は、1118年の文献に「鉄の城(Castrum Ferrum)」の名称で初めて登場しました。1264年には「小さいノルマン(Minor Mortin)」の名前で登場。1921年にはオーストリアに加入し、現在は州都の役割を担っています。長い歴史を誇る街アイゼンシュタットは、旅の目的地にも最適でしょう。

アイゼンシュタットの見所

白い外壁と朱色の屋根。中世の街並みを今なお残すアイゼンシュタットの街並みは、非常に魅力的です。散策するだけでも、心が豊かに満たされてくるでしょう。「エステルハージ宮殿」や近郊に位置する「ノイジードル湖」、ハイドンの博物館ともいえる「ハイドン・ハウス」や「ベルク教会」など、見所も豊富です。街の歴史を物語る博物館やふらっと立ち寄りたい街「ケルト」もオススメ。アイゼンシュタットの街の見所を、ご紹介します。

豪華絢爛な邸宅「エステルハージ宮殿」

「エステルハージ宮殿(Schloss Esterházy)」は13世紀頃に城跡に建造された邸宅です。1805年〜1815年にはフランスの建築家「シャルル・モロー」によって改築。豪華絢爛な貴族の館の様相を呈しています。現在は州立のギャラリーとしても機能。豪奢に設えられた外観や内観は、アイゼンシュタットの最も有名な見所といっても過言ではありません。地下にはワイン樽が並んだワイン博物館も併設。豪華な暮らしぶりを知ることができます。

「ハイドン・ザール(Haydn-Saal)」はエステルハージ家に仕えたハイドンのための音楽ホールです。大広間の音響効果を上げるために板張りにし、木材を用いたというハイドン・ザールは、宮殿内でもとりわけ豪奢な装飾が目を引きます。天井に描かれた見事なフレスコ画には、息を飲むでしょう。現役で稼働もしており、9月には音楽祭も開催されているのだとか。内部鑑賞するには事前予約が必要です。訪れる前のチェックは怠りなく。

ユネスコ世界遺産認定、渡り鳥の楽園「ノイジードル湖」

「ノイジードル湖(Neusiedler See)」は、2001年にユネスコ世界遺産に認定されました。「フェルテー湖/ノイジードル湖の文化的景観(Fertö/ Neusiedlersee Cultural Landscape)」の名称で登録されている湖は、オーストリアとハンガリーにまたがるように、その存在をたたえています。南北36km、東西7km〜15kmに及ぶ広大な湖は独特の生態系を形成。とりわけ湖を囲うように生えているアシは、鳥類の生態系に大きな影響を及ぼしているといいます。

降雨と乾燥を繰り返し、歴史上100回以上も干上がったことがあるというノイジードル湖。圧倒的な自然が形成する環境は、この地を住処とするおよそ280種類以上もの鳥類の暮らしを支えています。一方で、最深部で1.8mと非常に浅いことも特徴。大草原に広がる湖は「ウィーンっ子の海」と呼ばれ、ヨットやウィンドサーフィンを楽しめる場所として、人気を集めています。ノイジードル湖で、穏やかな時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

交響曲の父の博物館と神聖な「ベルク教会」

「ハイドン・ハウス(Haydn-haus)」は1797年〜1809年の間、ハイドンが住んでいた場所に建造された博物館。実際にハイドンが住んでいた住居跡を改装したものです。貴重なハイドンの遺品のほか、絵画や楽譜、当時使用されていたピアノなども残されています。交響曲の父の軌跡を知るのに、ココ以上に適した場所はないでしょう。必見の見所といえます。

ハイドンの遺骨が納められた場所、「ベルク教会(Bergkirche)」と「ハイドン廟(Haydnmausoleum)」は1701年以降に造られた丘の上に佇んでいます。キリストの受難を表現した丘には、祠や礼拝堂が点在。その中で最も目を引く建物がベルク教会です。入り口左手にはハイドンの霊廟があります。1932年に建造されたというこの霊廟には、1954年にハイドンの頭部の遺骨が納められました。大理石の美しい棺には、今もハイドンが眠りについています。

街の歴史を伝える博物館と近郊の街ルスト、名物「ホイリゲ」で豊かな時間を

「ブルゲンランド州立博物館(Landesmuseum Burgenland)」は1926年に開館した、街の歴史、州の歴史を伝える博物館です。1968年〜1976年には建て替えがおこなわれ、コレクションも大幅に増加。現在の所蔵作品総数は70,000点を超えているのだとか。30を超える展示室には街や州の歴史や文化に関する展示だけでなく、考古学や民俗学、美術史まで網羅的な作品の数々が展示。じっくりと向き合って楽しんでみるのも一興といえます。

「ルスト(Rust)」はアイゼンシュタットの近郊、世界遺産ノイジードル湖のほとりに佇む街です。コウノトリとワインの街として名を馳せているルスト。ルネサンスやバロック様式の鮮やかな街の姿は、アイゼンシュタットとはまた異なる魅力を備えています。コウノトリの巣や、子育てをするシーンを見ることが可能です。時期にもよりますが、その珍しい光景を求めて訪れる人も少なくないのだとか。郊外に広がるぶどう畑は屈指のワイン名産地であることの証です。できたてのワインを堪能してみてくださいね。

「ホイリゲ(Heiriga)」はワイン酒場を意味する言葉です。ワイン産地としても有名なアイゼンシュタットと近郊の街ルストでは、ホイリゲは観光の定番といえます。自家製のワインとセルフサービスの簡素な食事。ワインの純粋な美味しさを堪能するのにホイリゲ以上の選択肢はないでしょう。値段が安価なのも嬉しいところ。ぜひ訪れてみてください。

歴史と音楽の街、アイゼンシュタットで滞在を謳歌

交響曲の父、ハイドンが長い時間を過ごした街アイゼンシュタットの魅力をご紹介してきました。長い歴史と音楽が根付いた街並み。その中には数々の見所が溢れています。豪華絢爛な邸宅エステルハージ宮殿や、ユネスコ世界遺産に認定されているノイジードル湖、ハイドンの博物館であるハイドンハウスや遺骨が納められたハイドン廟など、綺羅星のような名所がアイゼンシュタットには溢れています。ぜひ、訪れてみてはいかがでしょう。

オーストリアの首都、ウィーン南部に位置しているアイゼンシュタットの街。バスか電車を使えば、簡単にアクセスすることができるでしょう。所要時間は1時間〜1時間半ほどです。日帰りで訪れることも十分に可能でしょう。芸術性を惜しみなく表現した街の佇まいと、対照的な郊外のぶどう畑の風景。景色のコントラストもアイゼンシュタットの魅力といえます。次回の旅の目的地は、アイゼンシュタットに決めてみてはいかがでしょうか。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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