Cambodian Living Arts:カンボジアの伝統舞踊を体験しよう

写真:CLA提供

9世紀〜15世紀まで続いたアンコール王朝時代に宮廷で発展し、神々に捧げられた古典舞踊。
農村や漁村の暮らしに根づいた素朴な民俗舞踊。
村の集いや祝いごとなどの際に、村人達が自然と踊り出す社交ダンス。

カンボジアの人々の暮らしには、昔からダンスが脈々と息づいていました。

1975〜79年に政権を握ったクメール・ルージュ時代には、大虐殺によってダンサーのほとんどが命を落としたことにより、伝統舞踊は消滅の危機にさらされたこともあります。

しかし、内戦終結後に立ち上がった人々の働きによって、伝統はかろうじて繋ぎとめられ、再構築され、現在に至るまで発展を遂げながら継承されてきています。

そのような、伝統芸能の再生・継承にいち早く取り組んできたのがCambodian Living Arts(以下、CLA)。

あらゆる層の人々が伝統舞台芸術の魅力を肌で感じられるよう、体験型のプログラムを用意しているのが特徴的な団体です。

今回は、CLAのプログラムのうち、熟練ダンサー達が繰り広げる伝統舞踊ショーと、誰でも伝統舞踊を体験できるワークショップの様子をご紹介します。

戦前を知る数少ないカンボジア人芸術家によって設立された、Cambodian Living Arts

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CLAは、芸術一家に生まれ、クメール・ルージュ時代を生き延びたミュージシャンArn CHORN-POND氏によって、1998年に創設された団体です。

クメール・ルージュ政権時代、幼かったCHORN-POND氏は少年労働キャンプに送られ、強制労働に従事します。

国民の約3分の1が命を失ったとされる大虐殺では、知識人や芸術家は真っ先に虐殺の対象とされましたが、彼は国家のプロパガンダ音楽を演奏することによって、一命をとりとめました。

その後も続く内戦中、彼は戦火を逃れタイの難民キャンプで育ちますが、人道支援家の養子となり、アメリカで教育を受けることに。

1990年代に入って内戦が終結した後、祖国の芸術遺産を再構築するため、カンボジアに戻ることになりました。

CLAは1998年の設立以来、草の根レベルでの芸術教育・普及活動、アーティストの教育・雇用機会の提供、芸術文化研究といったような取り組みを通じ、カンボジアのアートシーン発展の一翼を担い続けてきたのです。

繊細優美な古典舞踊と素朴な民俗舞踊のコントラストが面白い伝統舞踊ショー

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今回ご紹介するのは、数あるCLAのプログラムのうち、国内外の人々に広く開かれている「Experience CLA」。
カンボジアの伝統舞踊を観て、踊って体験できるものです。

まず押さえておきたいのは、熟練アーティスト達による圧巻の伝統舞踊ショー。
毎日19時から20時まで、プノンペンの国立博物館敷地内にある野外劇場で公演されています。
宮廷で受け継がれてきた古典舞踊と一般民の暮らしを描いた民俗舞踊がバランスよく織り交ぜられている、見どころ満載のエンターテインメント。

神々の世界と人間の世界が交差するダイナミックなストーリーのほか、カラフルできらびやかな衣装や民俗楽器が奏でる味わい深い音楽にも要注目です。

アットホームな劇場では、ダンサー達の舞を間近で見られて臨場感もたっぷり。

アンコール王朝時代の出土品を中心に収蔵・展示している国立博物館で歴史に触れた後に鑑賞すると、歴史を様々な側面から知ることができ、楽しみも2倍になることでしょう。

事前情報なしでも十分に楽しめるショーになっていますが、「ダンサーたちの所作の一つひとつに込められた意味を知って、より奥深く楽しみたい」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

そんな方には、体験型ダンスワークショップに参加してからショーを鑑賞するのがおすすめ。

ここからは、筆者自ら体験したワークショップの様子をレポートします。

動きの意味を知り、よりディープに楽しむ古典舞踊の世界

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現役ダンサー達から直々に踊りの意味を解説してもらうことができ、参加者自身もダンスを体験できるワークショップ。

布1枚を巻きつけてズボンを形づくる伝統衣装を着付けてもらったら、まずはウォーミングアップ。
ショーに出演するダンサー達が実際に毎日行っているという柔軟体操を習います。

ウォーミングアップが済むと、最初に体験できるのが古典舞踊。
天女アプサラの舞に代表されるような、優美でしなやかな動きが特徴的なダンスです。

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手足の動きや顔の表情などを組み合わせると、4500もあると言われている古典舞踊の「型」。
ワークショップでは、その中で用いられる代表的な9つの手の動きを教えてもらうことができます。

たおやかな舞を印象づける手の動きは、自然界の生命の営みを表現しているそう。

木が植えられ、成長し、葉が出て枝が伸びる。
そして花が咲き、果実が実り、落ちていくところまでを手先の動作のみで表現していきます。

先生達と一緒に何度か繰り返したら、参加者だけで、いざ実演。
9つの動きを繰り返すだけでも、それらしい雰囲気が出るものです。

さらに、手足の動きに加えて大事な要素が、全身を用いて行う感情表現。
喜怒哀楽や愛情表現といった、代表的な9つの感情を表す動作を実演つきで教えてもらいます。

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古典舞踊では、ダンサーは歯を見せないのが原則。
口を開けずに、目線や手足の動きなどでバラエティ豊かな表情を作り出していきます。

同じ感情でも、王子、王女、巨人、猿といった役どころによって、まったく印象の異なる表現になるのが驚き。

それぞれの動きが表す意味がわかってくると、なんとなく眺めていた舞踊もより一層奥深く感じられてくるものです。

ダンサー達の動作からストーリーも読み取れるようになってくるので、楽しみが倍増します。

マスターすればカンボジア人との友好も深まる民俗舞踊と社交ダンス

写真:CLA提供

ゆったりとした優美な古典舞踊から一転。
ワークショップでは、軽快で躍動感に溢れた民俗舞踊と社交ダンスも体験することができます。

ほとんどは20世紀に作られたという民俗舞踊。
農業や漁業といった日々の営みと関わりが深いものも多く、一般の人々の日常生活を描いた踊りとなっています。

教えてもらうのは、カンボジア南東部に位置するスバイリエン州発祥のココナッツダンス。

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結婚式で踊られることが多く、「新たな夫婦の未来に幸あれ」と祝福する意味があるそう。

両手に1つずつココナッツの殻と持ち、ペアになった相手と打ち鳴らしながら行進していきます。
お手本を見せてもらったあとは、男女で2人組になって実践です。

神々に捧げる厳かな古典舞踊と異なり、軽快でリズミカルな民俗舞踊においては、ダンサーも歯を見せて笑うことを許されます。

掛け声をかけ合い、ココナッツの殻を鳴らしながら進んでいくと、踊り手も観ている側もたちまちハッピーな気分になってきます。

最後に教わるのは、社交ダンス。
子供から大人まで、カンボジア人なら誰でも踊れるという「サラバンダンス」を参加者皆で踊りました。

男女が向き合って列になり、前へ後ろへとシンプルな4ステップを繰り返していきます。

サラバンダンスさえ習得しておけば、カンボジアでパーティに呼ばれても大丈夫。
一晩中踊り明かす人々の輪にも自信をもって入っていくことができ、周囲のカンボジア人達とも一瞬で打ち解け、その場の雰囲気を存分に楽しむことができるはずです。

伝統芸能の体験はアートシーン発展への貢献の形

写真:CLA提供

CLAでは、毎日開催しているワークショップのほかに、プライベートワークショップの開催もしています。

都合のよい時間に先生方をお呼びし、皆で揃って伝統舞踊を体験することも可能。
団体旅行の際などには相談してみるとよいでしょう。

ショーの前にワークショップに参加すれば、ショーの内容をよりよく理解できること間違いなし。
反対に、まずは事前情報なく純粋にショーを鑑賞し、後からワークショップに参加して動作の意味を習えば、思いがけない発見があるかもしれません。

写真:CLA提供

多くの人々にカンボジアの伝統芸能をシェアする役目を負っているCLAは、カンボジアの若者達がプロのアーティストとして活躍できる機会を提供する使命をも負っています。

ショーやワークショップの収益は、アーティスト向けの奨学金制度やワークショップ・イベントの開催費、アート教育費などに回されます。

プログラムに参加することがカンボジアのアートシーンの発展に繋がると考えたら、素敵だと思いませんか?

神々や自然とともに育まれた「カンボジアの心」に触れてみよう

写真:CLA提供

宮廷で栄え、神々に捧げられた古典舞踊から、一般民衆の生活に根ざした民俗舞踊、社交ダンスまで。
古くからカンボジアの人々に愛されてきたダンスは、カンボジアのアイデンティティそのものとも言えるでしょう。

自然界の生命循環に関連づけられたしなやかな手先の動きや、躍動感溢れるステップ、バラエティ豊かな顔の表情には、それぞれ意味があります。

伝統舞踊ショーで動きをじっくりと目に焼き付け、ワークショップで自ら実践して見る中で、カンボジアの人々が大事に守り抜いてきたスピリットを感じることができるでしょう。

きちんと意味を理解して伝統舞踊を楽しみたい!
自分も一緒に踊ってみたい!

CLAの体験型プログラムは、そんな方々におすすめです。

Cambodian Living Arts
Experience Cambodian Living Arts (伝統舞踊ショー、ダンスワークショップについて)

【伝統舞踊ショー】
プノンペンの国立博物館敷地内の劇場にて、毎日19:00-20:00に開催中。
チケットは、上記WEBサイトから購入可能。

<料金>
セクションA席 大人$25 子供$15
セクションB席 大人$20 子供$12
セクションC席 大人$15 子供$9

(ディナーつきチケット)
ショーの内容に集中してもらいたいとの想いから、ショーを見ながらの食事提供はありません。会場近くのレストラン「Friends the Restaurant」で、ショーの前後に提供される形になります。

セクションA席 大人$40 子供$25
セクションB席 大人$35 子供$21
セクションC席 大人$30 子供$17

【ダンスワークショップ】
プノンペンの国立博物館敷地内の劇場にて、毎日15:00-16:30に開催中。

<料金>
料金 大人$15、子供(13歳未満)$8

※いずれも2019年5月時点の情報です

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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