ガールズ&パンツァー:ミリタリー好きも納得の戦車ラインナップをご紹介

女の子& 戦車。不思議な組み合わせをしている本作は、2012年に放送された日本のオリジナルアニメである。キービジュアルのみ見ると、可愛い女の子が多数描かれており、重厚な戦車とはイマイチ似合わない。内容も可愛い女の子がちょこんと戦車に乗るだけかと思われたが、蓋を開けるとそこには本格的な戦車の戦いが待っていた。そのあまりに熱い戦闘シーンの数々にはこれまでアニメを見なかった人、ミリタリーなど全く興味もなかった人も魅了され、あっという間に世界的に大人気となってしまった。
そんな本作ではミリタリー好きも納得の戦車が数々登場する。第二次世界大戦に使われていた代表的なあの戦車、多くの伝説を残したあの戦車…。ロマンがたっぷり詰まった豪華な戦車ラインナップをご紹介しよう。

■【大洗女子学園】あんこうチーム「IV号戦車D型」

まずは主人公のみほたち5人で編成された「あんこうチーム」の使用車輌、「IV号戦車D型」から始めよう。「IV号戦車」は第二次世界大戦中にドイツが使用していた中戦車。主に対戦車戦闘を想定して用いられ、大戦中は敗戦時まで使用されていたとのこと。

車体の特徴は攻撃に特化しているというよりも、やや保守的、と言える。というのも、元々この戦車は火力支援を行うために開発されたという経緯があるから。開発当初は短砲身24口径75mm砲搭載という、火力には若干心許ない装備だった。しかし対戦の戦況が傾いてくると、後のF型という改良版では長砲身の43口径75mm砲を搭載、主力戦車として用いられるまでに至る。
先に述べた保守的という点だが、これは敵に撃破された時に素早く脱出できるような設備が整っていたり、後の武装強化を想定した上での大きめなターレットリングを備えていたりというところに起因する。装甲も20cmと薄めなため、機動力を重視したような形になっている。また、耐久性や信頼性の高い懸架装置を採用し、整備のしやすさにも配慮していた模様。
ちなみにこの戦車はドイツで最も生産され、最初の先行量産型であるA型からJ型までバリエーションも豊富。中でも主力戦車としての地位を確立しだしたのはG型あたりと推測されている。この頃の型になると短砲身から長砲身に変更され、ドイツの「ティーガーI」にも劣らない火力を備えていたからだ。実戦投入された車輌は少なかったものの、連合軍からは恐れられる存在となったのであった。

テレビアニメではみほを車長、沙織を通信手、華を砲手、優花里を装填手、麻子を操縦手として機動させていた。物語最後の全国大会決勝戦、宿敵の黒森峰女学園との戦いではフラッグ車も務め、相手をどんどん撃破していくだけでなく、機敏に動き指揮を執りつつ、大洗女子学園を牽引していく様が映し出されていた。

余談だが、史実では大戦中、より強力な火力が必要とされ、「IV号戦車」は火力を向上させようと34.5口径の新型砲の試作が決まっていた。イギリス軍の重厚な装甲を持つ戦車、主に「マチルダII歩兵戦車」に対抗するためである。しかし34.5口径の試作を待っている猶予がなく、最終的に43口径75mm砲が搭載されるというのが実際の強化の流れである。
しかしアニメでは確かに同じ強化(短砲身24口径75mm砲→長砲身43口径75mm砲)をされているものの、長砲身43口径75mm砲は校庭の片隅に放置されていたということになっていた。しかもそれを、どこかの部が物干し竿に使用していたらしい。自動車部の面々がそれを見つけ、先の対戦のためと搭載したのだが、この改良経緯がなんともアニメらしく気の抜けた感じで面白いところだ。

■【大洗女子学園】カメさんチーム「38(t)戦車B/C型」

大洗女子学園の戦車から生徒会3人組が登場する車輌、「38(t)戦車B/C型」という軽戦車も紹介しよう。非常に小型で、ひと言で行ってしまえばコンパクトな戦車。
この車輌はいくつかの型が存在するが、本作で登場するB/C型というものは厳密には存在しない。推測するに、このB/C型はB型とC/D型を掛け合わせたものだろう。

その歴史は1934年にチェコで開発指示が発令されたことから始まる。しかし後の1938年、チェコがドイツに併合され、開発中の全車輌がドイツ国防軍に向けて完成された。そのため使用国は主にドイツ。しかしチェコ製であることを示すため、車輌名にはチェコ製を表す「(t)」の形式番号を取り入れている。
大戦時は開戦と同時に実戦投入され、高い火力と装甲により主力戦車のように使用されていた。武装は37mm戦車砲と7.92mm機銃2挺の2刀流。まだ戦車の大型化がなされていない時分には十分な火力であり、「IV号戦車」と肩を並べて前線に立つような存在であった。機動力の高さも存分に活かし、起動戦術を駆使した「38(t)戦車」は当時のドイツで大活躍したとのこと。装甲に関しても25mmはあったため、電撃戦にも負けない防御力を備えていたと言えるだろう。また、故障が少なく信頼性が高いという面も高く評価されていたようだ。
しかし小型故の欠点も。砲塔が狭く、乗員は2人のみだったということ。通常、戦車は最低車長、砲手、操縦手の3人が必要になるが、「38(t)戦車」では2人しか搭乗できないので車長が砲手を兼ねなければならず、指揮に専念することが困難になってしまい、結果として戦闘力が下がってしまったのだ。砲塔旋回が手動であり非常に重かったことにも大きな不満の声が挙がっていたそうで、これも操縦性や戦闘力という面で他の戦車に劣る要因となっていたようである。

しかし作中では、その小型さ故に戦車の戦闘とは思えないアグレッシブな役割を次々と果たしていた。ときには味方の大型車輛の上に乗って運んでもらい奇襲を、ときには砲台の狙いを上にするための角度を付けるために踏み台のような役割を、ときには小型であることを活かして味方に車輌ごと投げてもらい捨て身のタックルを。といったように、搭乗者の性格がでるような動きで相手チームを錯乱していた車輛である。これだけの動きをしても故障は中々せず、車輌の頑丈さと高い火力は存分に描かれていたと言える。

■【黒森峰女学園】「ティーガーI」

全国大会で9連覇を成し遂げた強豪校、黒森峰女学園のフラッグ車を務める「ティーガーI」。搭乗するのは隊長であり、西住流戦車道の後継者である西住まほ(みほの姉)ら。強豪校のフラッグ車を務めるだけありその火力は絶大で、作中でも数多くの車輌を撃破してきた重戦車である。

この車輛は第二次世界大戦中にドイツで開発された。88mm戦車砲を搭載し、100mmの車体前面装甲を備えていることが特徴で、攻撃に転じれば敵をほぼ一撃で撃破、防御に転じれば正面から撃ち合って勝てる戦車はほぼいない、という正に「無敵戦車」と呼ぶに相応しい車輛である。しかしその重装備から機動力には欠け、足回りが故障しやすいという欠点も抱えていた。それでも当時、連合軍側を恐怖のどん底に落とし、数々の伝説を残した。特にアメリカの主力戦車「M4シャーマン」がゼロ距離で攻撃をしても貫けない重装甲は、「ティーガーI」を前にしたら逃げるしか術がないと戦慄させた程なのだとか。
ちなみにこの車輛には後継車輛がいる。その名も「ティーガーII」。「ティーガーI」は角ばった装甲をしていたのに対し、こちらでは車体と砲塔に傾斜装甲を採用、主砲を56口径から71口径に進化させている。また、車体前面装甲は100mmから180mmとなり、火力だけでなく防御力もとてつもないレベルにまで向上させたモデルとなっている。この車輛は「ティーガーI」を遥かに凌駕した戦闘能力を誇り、この車輛に正面から対抗できる戦車は世界中にも存在しなかった。歴史にも残る「世界最強戦車」である。

さて、王者と呼ぶに相応しい黒森峰女学園のフラッグ車なだけあって、やはり作中でもその恐ろしさが遺憾なく発揮されていた。相手チームの戦車を一蹴、まほの的確な指示も合わさり、次々と相手を追い詰めていく。相手チームは「ティーガーI」というだけで萎縮してしまう者も少なくなく、しかも黒森峰は先程紹介した「ティーガーII」も保有していたため、圧巻の戦闘を繰り広げるのであった。ここまでくるとある意味で清々しさも覚えられる最強戦車の機動を、本作にて是非ご覧になって頂きたい。

■【聖グロリアーナ女学院】「チャーチル歩兵戦車Mk.VII」

戦車に乗っているときも必ず紅茶を飲んでいる姿が印象的だった聖グロリアーナ女学院の面々。その隊長を務めるダージリンが搭乗するのがこの「チャーチル歩兵戦車Mk.VII」である。その名の通り、歩兵を支援する目的で作られた戦車で、装甲重視の作りになっているのが特徴的である。製造はイギリス、名前の由来は首相のウィンストン・チャーチルからとられている。

元々、イギリスには歩兵戦車の決定版と呼ばれている「マチルダ歩兵戦車Mk.II」という車輛があったのだが、大戦が始まって暫くすると火力不足が目立つようになっていた。そこで、火力を向上させた歩兵戦車の開発に取り組み完成したのが「チャーチル」である。
ダージリンたちが乗っていた型は、1944年に正式採用された同車の「Mk.VI」の後継車であり、最大装甲厚が152.4mmの重装甲タイプ。その重装甲から車輌が重いため、最大速度は20km/hに留まるものの、1942年に初めて実戦に投入されたときはその防御力の高さが証明される結果となった。というのも、実際に参加した17輌中、砲火によって撃破された車輌はたった2輌しかなかったのだという。火力に関しても歩兵を支援するものを備えており、37.5口径75mm戦車砲を装備、数ある派生型の中には火炎放射戦車なども開発されている。


これは「チャーチル歩兵戦車Mk.VII」だけでなく、「チャーチル」全車輌に言えることだが、この戦車はとにかく走破能力が高い。特に低速ギアでの走破能力が高く、超堤能力は120cmを誇り、さらに超壕能力は370cmもあるのだ。超堤能力とは戦車が乗り越えられる障害物の高さを言い、一般的な戦車は70cm程度。対して超壕能力とは地面に空いている穴や溝を超えられる最大幅を指し、一般的な戦車は車体の約半分弱がせいぜいだとされている。その標準値を遥かに超えた走破能力を持っているため、高い急斜面や湿地、森林などの悪路でも機動力は随一を誇る。

この車輌を見事に乗りこなすダージリンたちは、基本的に優雅な戦い方をする。強行突破をするのではなく、強固な装甲を活かした浸透強襲戦術を主に用いていた。チームを小隊に分け、それぞれが主体的に動き、迂回しながらジリジリと相手を追い込んでいく。その動きは彼女らの優雅さを表すようであり、また、歩兵戦車の能力を最大限発揮するようなものだと言えるだろう。しかし同学園は「クルセーダー」という巡航戦車も所有しており、細かな動きもできるため敵を攪乱するのもお手の物。紅茶を嗜みながらも確実に王手に向かって詰めていく様を楽しめる。

■【サンダース大学付属高校】「M4シャーマン75mm砲搭載型」

アメリカ系のサンダース大学付属高校がメインに使う車輛はやっぱりコレである。「M4中戦車」、通称「シャーマン」。これは第二次世界大戦時にアメリカが開発した中戦車で、アメリカの主力戦車でもあった。数々のシリーズはあるものの、累計生産数は5万輌にものぼり、大ベストセラー車輛だったと言える。

1939年、当時のアメリカ陸軍の主力戦車であった「M2中戦車」の威力、装備はドイツ戦車に通用しないことが問題視されていた。そこでひとまず火力を上げようと75mm砲を追加した「M3中戦車」が開発される。それをベースに更なる改良を加え、全周旋回砲塔に75mm砲を装備した「T6戦車」が誕生、1941年に「M4中戦車」として正式採用された。その後、自動車大国アメリカでは早急に量産体制の整備が進むと同時に、信頼性の高い戦車として広く活用されていくのである。

「M4」は非常に多くのバリエーションがあり、主砲も105mm榴弾砲、75mm砲、76mm砲といくつかの種類がある。中でも全ての原型となった「M4」は105mm榴弾砲を搭載。しかし生産簡略化のため、その後のモデルでは75mm戦車砲を搭載した車輛がメジャーとなった。もうひとつの76mm戦車砲は、もちろん75mm戦車砲よりも貫通力に優れていたが、搭載数が少なかったこと、砲煙が多いことなどの欠点があったと指摘されている。
防御に関しては少し残念な車輌である。初期の型は車体にある弾薬箱からの炎上がしやすく、装甲も薄い。そのため被弾した車輌は高確率で炎上、ドイツ軍には「アメリカのストーブ」と揶揄されることもあったのだとか。応急処置として、敵車輌の装甲から切り出した鋼板を貼り付けたりもしていたらしい。この薄い装甲からくる防御力の低さは主だって改善されることはなく、日本の所有していた47mm対戦車砲でも撃ち抜くことが可能だった。これは、アメリカが火力や防御を高めるのではなく、数で敵を圧倒することを選んだからだと言われている。

正直言って、アメリカでとてもメジャーな車輌であり、数が大量であったためにその価値が見出されていただけと言っても過言ではない「M4」。作中でも大きな威力は見せずに終わってしまった。
しかしこの戦車は戦車を題材にした作品、ならびに戦車が登場する作品には数多く取り上げられており、その数は膨大。例えば、アメリカ軍と日本軍の硫黄島での戦いを描いた映画「硫黄島からの手紙」、1962年に上映されたゴジラシリーズ「キングコング対ゴジラ」、他にはあのルパン三世シリーズにも複数回登場している。その圧倒的知名度は称賛するべき点であろう。
ちなみに、本作で登場する「M4シャーマン75mm砲搭載型」は、初期型の105mm榴弾砲を搭載した「M4」に75mm砲搭載型にアレンジしたものとなっている。劇場版では最初の派生形ともなる「A1」車輌も登場した。大きな違いは車体上部が一体鋳造になり、車体前面が丸みを帯びた形状に変化している点にあるが、その他のスペックはあまり変わっていない。

■【ç】「CV33型快速戦車(L3/33)」

お次は本編では一瞬で終わったアンツィオ戦に登場したアンツィオ高校が保有している「CV33型快速戦車(L3/33)」をご紹介する。アンツィオ高校の隊長、アンチョビが搭乗するのは「P40型重戦車」と、また違った戦車となるが、同校での主力戦車のひとつと位置づけられている戦車である。劇場版ではこの車輌が登場し、しっかり活躍していた。

「CV33型快速戦車(L3/33)」、通称「カルロベローチェ」。イタリア製。非常に小さな戦車で豆戦車とも呼ばれる。主に偵察・警備用の軽車輌として開発されたもので、乗員はわずかに2名のみ。そのため武装は8mm重機関銃が2挺装備されているだけで、火力は皆無と言っても過言ではない。しかし本当の初期型は6.5mm重機関銃が1挺のみだったことを考えれば、「L3/33」モデルは少しだけ火力を向上させたという捉え方もできる。後の改良版では火炎放射型、20mm対戦車砲を搭載したモデルもある。
気になる装甲だか、非常に薄く、ほぼ1撃で撃破される。しかし走行速度は最高で42km/hを誇り、戦車の中では早い部類に入る。そして小さいが故に小回りも利き、敵から逃げたりするのは得意。

何故ここまで小さな戦車をイタリアは開発したのか。その歴史は1929年にまで遡る。当時イタリアは資金面の問題を抱えていた。豆戦車というのは車体が小さく貧弱な武装、薄い装甲という面で、安価で生産しやすい。そのため、資金面で豊かでないイタリアにとっては都合の良い機材であったため、開発を進めたとされている。
元となったのは、同じく豆戦車であるイギリスの「カーデンロイドMk.VI」。イタリアはイギリスより4輌輸入するとライセンスを取得、「CV29」という名称で生産。その後に「CV33」という名で正式採用された。先に取り上げた「M4シャーマン」と同じく、バリエーションに富んでいる戦車で、本作で登場する「L3/33」は最初の量産型である。

そんな小さなちいさな「CV33型快速戦車(L3/33)」。作中でもその小ささを活かした活躍を描いていた。他の戦車に乗って運搬してもらったり、小回りが利くことを活かして逃げ回ったり。搭乗したアンチョビのノリの良い性格をそのまま反映させたような、勢いのある軽快な機動性を見せていた。
しかしこの車輌の本来の使用用途は偵察。そこもしっかりと描き、ジェットコースターの線路に昇って敵陣を偵察するという、とんでもない偵察を行っていた。実際の「CV33型快速戦車(L3/33)」がジェットコースターに昇れるかはさておき、本来の使用目的もしっかり果たしながら活躍していたことは、戦車ファンにはたまらなかったであろう。

■【プラウダ高校】「T-34/85」

全国大会10連覇がかかっていた黒森峰学園を破った実力を持つプラウダ高校。ロシア系の学校で、小さな隊長カチューシャがいる高校である。そこのフラッグ車であり、カチューシャが搭乗するのが「T-34/85」という中戦車。これは初期ソ連の集大成とも言える傑作戦車「T-34/76」に85mm高射砲を搭載した強化型で、機動力、火力、防御力のバランスが非常に良いパーフェクトな車輌である。

この戦車は第二次世界大戦にソ連を中心に使用された。1930年代前半、ソ連は「BT戦車」を主力戦車に添えていたが、防御の面で問題があることが指摘され開発されるに至った。
大戦中では最も大量生産された戦車であり、「T-34/76」と「T-37/85」合わせて57,000輌も生産されたのだとか。また、戦後もポーランドやチェコスロバキアなどで生産が続き、最終的な合計生産車輌は84,000輌以上になるとのこと。ここまで大量生産されるまでには、ソ連内での政治的圧力や複数工場を跨いでの生産など、数々の問題があったという。けれども実戦投入では「ソビエト反撃の象徴」とされるほどに活躍したこと、さらには終戦時には開発当時の価格の約半分で生産可能となったことが量産された理由ではないかと推定されている。

しかし、やはりここまで大量生産された最大の理由は、圧倒的機動力、火力、防御力に起因する。
まず機動力だが、「T-34」のエンジンはイタリアの自動車メーカー「フィアット」の航空用ディーゼルエンジンを元に開発された。それは被弾した時に炎上しにくく、燃費も良いとされている高性能アルミ合金製ディーゼルエンジン。また、軟弱地の多いソ連でも走破しやすい幅広履帯を採用することで設置圧を低くし、雪上などでも高い走破能力を実現させていた。さらには高速走行もできるよう、クリスティー式サスペンションを用いた大型転輪も装備しているという、正に完璧を誇る機動力を備えていた。
次に火力についてだが、「T-34/76」では30.5口径76mm戦車砲を搭載。これは当時にしては強力な戦車砲とされており、口径がやや大きいのが特徴である。後に41.5口径に変更され、装甲貫通力が向上する。ちなみにこの41.5口径76mm戦車砲はドイツの主力戦車、本作では大洗女子学園のみほたちが搭乗していた「IV号戦車」の装甲を1km先から貫通可能な程の威力を持っている。今回取り上げている「T-34/85」は、55口径85mm高射砲を搭載し、更なる強化を。砲塔が大きくなったことから、これまで砲塔内は2人しか乗れなかった点も改善されている。
最後に防御力だが、何より特徴的なのは傾斜装甲を積極的に取り入れたことにある。傾斜装甲は実厚以上の防御力を誇り、また、徹甲弾などの対戦車砲弾のエネルギーを分散させ弾くこともできる。特に「T-34」で優秀とされていた点は、全方面に対して均一に傾斜装甲を施していたところにある。これによりどの方面から被弾しても跳ね返すという無敵っぷりを手にしたのだ。

これまで述べてきた通り、やはり「T-34」は無敵と言うに相応しい戦車であろう。本作ではそんな傑作であり無敵戦車「T-34/76」と改良版「T-34/85」の両車輌を投入、凄まじい戦闘能力を見せつけていた。また、「T-34/85」に搭乗していた隊長のカチューシャは瞬時に状況を判断して的確な指示を下せ、高度な作戦立案力を備えていることから、同車輌の性能を如何なく発揮させることにも繋がっていた。
余談だが、この「T-34」は数々の逸話を残している。例えばドイツ軍に「T-34ショック」と言わせたり、「ドア・ノッカー」と称されたり。気になる人は調べてみると更に同車輌の凄さを知ることができるだろう。

■【大学選抜】「巡航戦車A41センチュリオン」

これまでは本編で使用された車輛のみを取り上げてきたが、ここで劇場版に登場した戦車も紹介する。ひとつめは第二次世界大戦でイギリスの第一世代主力戦車として活躍した「巡航戦A41センチュリオン」。これは劇場版の大学選抜チームのフラッグ車として登場し、優れた火力と機動力を発揮した戦いを見せてくれた。

元々イギリスでは、機動力に優れた巡航戦車と歩兵の盾として前進する歩兵戦車を分けて開発、運用していた。しかし第二次世界大戦で、巡航戦車は機動力の確保の代償として装甲の脆さが、歩兵戦車は盾としての役割を持つ重厚な装甲故に走行速度の遅さが露呈された。そこでそれぞれの良い点を取り入れた新型戦車を開発する動きが始まり、完成したのが「巡航戦車A41センチュリオン」である。
イギリスは元から17ポンド砲を保有してはいたのだが、巡航戦車も歩兵戦車も砲塔が狭すぎて搭載できなかった。しかしこの点を考慮し設計されたため大直系の砲塔リングが使用可能に、晴れて強力な17ポンド砲を搭載することに成功したのだ。その火力はドイツの重戦車「ティーガー」とも互角に撃ち合える程のもの。また、「ティーガー」との撃ち合いで負けないためにと歩兵戦車から採用した重装甲を装備。さらに地形把握性と整備性に優れた新開発のホルストマン式サスペンションを搭載。不整地での走破能力も兼ね備えた、火力、防御力、機動力の全てが揃ったスペックとなったのである。曰く、イギリスの戦車史の最高傑作。

そんな「巡航戦A41センチュリオン」だが、実はちょっと残念なエピソードがある。試作を含め最初に完成した6輌は、最初の戦場となるはずだったベルギーでは使用されずに終わったのだ。というのも、ベルギーに戦車を輸送中、ドイツが降伏したため。
しかしその後の実戦投入で「巡航戦A41センチュリオン」の高水準さは評価され、戦後も長きに渡り使われ続けると同時に改修も行われる。そのバリエーションは豊富で、機関銃搭載型、105mmライフル砲型など主力戦車の名に恥じない火力を備えた車輌が誕生していた。また、自国だけでなく売却した国々でもオリジナルの改修が行われる。それぞれ「テンペスト」「ショット」と名付けられた車輌が有名だろう。

作中では動き出すや否や単騎で次々と敵戦車を撃破し、「IV号戦車」と「ティーガーI」の2輌を同時に相手にするという凄技を見せてくれた。先に説明した通り、「IV号戦車」も「ティーガーI」も高水準の戦車と言える。それを単騎で相手にし、互角に渡り合うのだから、「巡航戦車A41センチュリオン」のポテンシャルの高さを認めないわけにはいかない。世界的に強い影響力を及ぼした「巡航戦A41センチュリオン」は、戦車好きならば絶対に知っておきたい車輌のひとつと断言できるだろう。

■【大学選抜】「カール自走臼砲」

最後は上に同じく劇場版に登場した戦車で、大学選抜チームが保有していたものをご紹介する。これはもう戦車というよりミサイルと称した方が適しているのではないか、と思う。それが「カール自走臼砲」。
第二次世界大戦時にドイツで開発、製造され、60cmもしくは54cmの超大口径臼砲を搭載する。試作車も含めて全7輌が製造され、それぞれの車輌に固有名が付けられているのが特徴。それらは全て旧約聖書や北欧、ドイツ神話に登場する神の名が冠されている。作中で登場するのは後期型、スペックは全てオリジナルとなっているが、8.45口径60cm砲というとてつもない破壊力を備えた車輛としてみほたち大洗女子学園チームを震撼させた。

超大口径臼砲を搭載するだけあり、破壊力は並々ならぬもの。それに伴い車体の大きさも桁外れであるが、その代償として重量が120tを超え6~10km/h程度のスピードしかでない。そのため運搬には専用の貨車が必要とされ、また、砲弾も専用の輸送車輌によって運ばれていた。さらに、大きな弱点として有効射程が4.3kmと非常に短いという点が挙げられる。これは場合によっては迫撃砲の射程にも劣るという。これを改良して射程距離を延ばすため、54cm砲身の試作が始まったという。
開発経緯は、フランスの要塞および城砦を突破すること。そのため「対要塞専用自走砲」とも言われることがある。当初は戦場で組み立てる「大砲」として開発がスタートしたのだが、それでは非常に危険な状況下に置かれてしまうこと、多大な労力を要することから、自走砲にすることになった。1937年に開発を開始すると1940年~1941年には6輌の生産を終えた。しかし完成時には目標としていた要塞の侵攻が終了していたことから、実戦投入は後に延期されることとなる。

そんな大砲と呼ぶに等しい超重量級の戦車は、作中でも最終兵器のように扱われていたのが印象的だ。史実でも「カール自走臼砲」はドイツの秘策とまで謳われ、これはこの車輌を保有していた大学選抜チームにとっても同じだったよう。
さらに面白いのが、劇場版でもこの車輌が投入されるのがとても困難だったとしている点だ。実際の第二次世界大戦時でも、「カール自走臼砲」を実戦投入できるのは限られた条件下のみだったそうで、色々とケースが違えど、史実と同じ問題を抱えさせるという点に好感を覚えずにはいられない。ちなみに「カール自走臼砲」が投入されるのに適した条件と言うのは、自軍が圧倒的に優勢を保っている場合だという。短射程、機動力の悪さ、そしてその車体の大きさから、敵の格好の的になる危険性が高かったからである。

■さいごに

本作は可愛い女の子が登場していることを忘れるくらい、圧倒される激戦が繰り広げられる。通常、可愛い女の子が登場する場合は女の子がメインとされるが、本作ではその真逆を突いてきた。戦車がメインで、むしろ可愛い女の子はオマケのようである。

そんな本作に登場する戦車は豪華ラインナップで構成されている。どれも第二次世界大戦時に活躍した車輌であり、数々の伝説を残したものも多数。重戦車から軽戦車のみに留まらず、巡航戦車や歩兵戦車まで幅広く取り上げているのも魅力的だ。そして作中で描かれる戦闘ではそれぞれの特徴を表す動きをしていたので、これまで戦車を全く知らなかった人でも感覚的にその車輌の特性を知ることができる。

名戦車の名に恥じない車輌たちが繰り広げる激戦を、是非ご覧頂きたい。もしそこで少しでも戦車に対して興味を抱いたなら、その戦車について調べてみると一層作中の戦闘を楽しめるようになるだろう。とにかく、まずはただただ魅了される激戦を視聴してほしい。本作は絶対に誰でも夢中になれる熱い戦いが繰り広げられているから。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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