ジョヴァンニ・ベッリーニ:ヴェネツィア派の巨匠たちを育てた画家

ジョヴァンニ・ベッリーニは1430年ごろヴェネツィアに生まれた画家です。父親はヤコーポ・ベリーニ、兄はジェレンティーレ・ベリーニとベッリーニ一族は画家一族として知られており、特にジョヴァンニ・ベッリーニはその中でももっとも活躍した画家として知られています。そんなジョヴァンニ・ベッリーニの生涯と作品とはどのようなものだったのでしょうか。

■ジョヴァンニ・ベッリーニとは

ジョヴァンニ・ベッリーニは1430年ごろイタリアのヴェネツィアに生まれました。父親はヴェネツィア派の始祖であるヤコポ・ベッリーニであり、ジョヴァンニは庶子であったといわれています。正妻の息子であるジェレンティーレは異母兄弟であり、ベッリーニ一族は当時から画家一族として知られていました。

ジョヴァンニは早くから父の工房で修業を開始し、徐々にその才能を開花させていきました。その画風には15世紀北イタリアの代表的な画家であるマンテーニャやドナテッロ・アントネロ・ダ・メッシーナといった同時代に活躍した画家たちの影響が見られ、その色彩豊かかつ柔軟な表現は当時の人々を魅了していきました。

その後独立したジョヴァンニはジェレンティーレとともに工房を開きますが、この工房は当時としては最大規模のもので、この工房からジョルジョーネやティツィアーノといったヴェネツィア派の巨匠となる画家たちが育つこととなります。そうした意味では教育者としてもすぐれた人物であったといえるでしょう。

ジョヴァンニは1516年に生まれ故郷であるベニスで亡くなったことがわかっていますが、その頃はすでに80代半ばの高齢であったことになります。晩年になってもジョバンニは筆を握り続けており、数多くの作品を残しました。特にジョバンニは多くの聖母子像を残しており、のちの画家たちの作品に多大な影響を与えたといわれています。

■ジョヴァンニ・ベッリーニの作品

ジョヴァンニ・ベッリーニはヴェネツィア派の第一世代を代表する画家であり、その色彩鮮やかで人間味あふれる表現は盛期ルネサンス時代の表現にも影響をもたらしたほどでした。またマンテーニャやドナテッロ、フランドル絵画など同時代の作品から大きな影響を受け、ドイツルネサンスの巨匠であるデューラーとも交友を持っていたこともあり、作品にもその影響が見られます。

ベッリーニは祭壇画やピエタ、磔刑といった宗教画を主に描いていたことで知られていますが、肖像画も多数描いており、当時の風俗を考証するうえでも非常に重要な役割を果たしています。そんなベッリーニの作品とはどのようなものだったのでしょうか。主要な作品を中心にご紹介します。

・《ピエタ》 1460年ごろ

(Public Domain /‘Pietà’ byGiovanni Bellini . Image via WIKIMEDIA COMMONS)

本作品は1460年ごろに制作された作品で、現在はブレラ美術館に所蔵されています。描かれているのは、聖母マリアと聖ヨハネに支えられた磔刑後のキリストの姿です。

等高線の鋭さと細かな視覚効果(ジョヴァンニの髪の毛が一本ずつ描かれていたり、キリストの腕の脈打つ静脈に描かれていたり)は、マンテーニャの教えから参照されていますが、色と光の使い方は彼独自のものとなっています。色調はより柔らかくされ、晴れた日の自然光から金属のように冷たい効果が引き出されていますが、この場面の苦悩に満ちた状況と相まって、人間の感情を伝える点でうまく機能しています。テンペラの特殊な下書きが非常に細かい筆致で描かれているため、色の中に光が混ざり合い、表現が柔らかくなっています。

澄んだ空を背景に立つ人物の彫像的なボリュームが場面を際立たせ、母と息子の静かな対話と聖ヨハネの穏やかな落胆のまなざしを印象づけています。

・《サン・ジョゼッペ祭壇画》 1487年

(Public Domain /‘Madonna and Child Enthroned’ by Giovanni Bellini. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

本作品は1487年ごろに制作された作品で、現在はアカデミア美術館に所蔵されています。聖会話を描いたもので、高い大理石の玉座に座る聖母子を中心に、音楽を奏でる3人の天使が足元に、左にはアッシジの聖フランシスコ、洗礼者ヨハネ、ヨブ、右には聖人ドミニコ、聖セバスティアヌス、トゥールーズのルイが描かれています。

絵の上部には、遠近法で作られた棺付きの天井があり、元々の祭壇をコピーした柱が並んでいます。聖母の背後には暗い壁龕があり、後ろの半円ドームには、ヴェネツィア様式で作られた金色のモザイク装飾が施されています。祭壇画の風景にビザンチン建築とヴェネツィアの伝統的な要素を取り入れることで、ベッリーニはパトロンを喜ばせることに成功しました。

・《総督レオナルド・ロレダンの肖像》 1501年ごろ

(Public Domain /‘Doge Leonardo Loredan’ by Giovanni Bellini. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

本作品は1501年ごろに制作された作品で、現在はロンドン・ナショナル・ギャラリーに所蔵されています。描かれているのはヴェネツィアの元首であったレオナルド・ロレダンで、リネンの帽子にコルノと呼ばれる先の尖った帽子を被った礼服姿が威厳を強調しています。

ロレダン総督のローブが構図の半分を占めており、無地の背景が、私たちの視線を人物と礼服に集中させます。目の前にいる思慮深く堅固な男性は鑑賞者のすぐ近くにいるように見えますが、下部には彼と私たちを隔てる仕切りが描かれており、その隔たりが彼に威厳を与えています。ベリーニは胸像の形式を採用することで、権力と権威を意味するローマ時代の肖像画の胸像を意図的に想起させました。

・《サン・ザッカリア祭壇画》 1505年

本作品は1505年に制作された作品で、現在もサン・ザッカリア聖堂に所蔵されています。中央の台座の上に聖母子、階段の上には音楽を奏でる天使、両脇に4人の聖人が配置されているという、典型的な図式に沿った聖会話が描かれています。

全体的な配置は《サン・ジョゼッペ祭壇画》などの前作とあまり変わりませんが、風景への横方向への開放などの工夫も見られます。これは、アルヴィーゼ・ヴィヴァリーニのアイデアに由来しており、シーンに明度を与え、形を和らげ、雰囲気を暖め、広い平面と衣服の色斑、そして静かで瞑想的な色調からなる新しい調和を生み出すことができる効果があります。

■おわりに

ジョヴァンニ・ベッリーニはベッリーニ一族に生まれ、ヴェネツィア派を確立した画家として知られています。ドナテッロの彫刻表現やフランドル絵画から学んだほか、当時としては最大規模の工房をジェレンティーレとともに運営しており、のちにヴェネツィア派最大の巨匠となるジョルジョーネやティツィアーノといった画家たちを輩出したことからも、初期ルネサンスの基盤を作った人物といえるでしょう。

ジョバンニの作品はイタリア・ヴェネツィアを中心とした教会や聖堂、美術館などに所蔵されており、現在も世界中から訪れる人々を魅了し続けています。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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