ジュ・ド・ポーム美術館:写真や映像を楽しめるパリの美術館

ジュ・ド・ポーム美術館はフランス、パリのコンコルド広場近くにある美術館です。ナポレオン3世期にチュイルリー公園の一角に建造された建物を改修して美術館にしており、もともとはかつてローンテニスの前身であるジュ・ド・ポームのコートが作られていました。現在は近現代美術に加えて映像芸術に関する展覧会も行っており、世界中のアートファンの注目を集めています。そんなジュ・ド・ポーム美術館の歴史と注目を集めた展覧会について詳しく解説していきます。

■ジュ・ド・ポーム美術館とは

ジュ・ド・ポーム美術館の建物は、もともとナポレオン3世期にチュイルリー公園の一角に建設されました。「ジュ・ド・ポーム」という名前はテニスの前身であるジュ・ド・ポームという競技を行うコートが作られていたことに由来しています。ジュ・ド・ポームは中世ヨーロッパで盛んになったラケット上の道具を用いてボールを打ち合う球技のことで、16世紀から17世紀にかけてのフランスおよびイギリスの絶対王政時代に全盛期を迎えました。

その後時代を経て1909年にはテニスコートが展覧会会場に改装され、主に外国人作家の絵画作品を常設展示する美術館としてパリ市民に親しまれるようになりました。1930年代にはモディリアーニやピカソ、シャガール、藤田嗣治といった20世紀を代表する画家たちの作品を展示していました。

しかしその後ナチスドイツがフランスに侵攻し、パリがナチスの占領下におかれると、ユダヤ人から没収した作品がジュ・ド・ポームに集められ、長く美術館として用いられることはありませんでした。1947年になるとジュ・ド・ポーム美術館として開館し、印象派の作品を多数展示するようになります。ジュ・ド・ポーム美術館の印象派コレクションは1986年にオルセー美術館に移管され、改装の後フランス国立写真センターを吸収する形で近現代美術に加えて映像芸術の展示を行うようになりました。

パリにおいて映像に関する展示を行っている美術館は珍しく、ジュ・ド・ポーム美術館の画期的な展覧会はいつも注目を集めています。またオーディオビジュアルのサロンや図書館、カフェなどが増築されたことによって、人々の憩いの場としても親しまれています。

■ジュ・ド・ポーム美術館の建築

ジュ・ド・ポーム美術館は、建物そのものはナポレオン3世時代に建築されたもので、チュイルリー庭園の北西端にあります。同じ頃、庭園の南西端でセーヌ川に面した場所に現在のオランジュリー美術館も建設されていました。

内部は地下階も含め、3階建ての構造です。全部で9つの展示室を有しており、420メートルの長い手すりが印象的です。壁は一面真っ白に塗られ、清潔感と近代的なイメージを与えてくれます。

■ジュ・ド・ポーム美術館で行われた展覧会

ジュ・ド・ポーム美術館では主に映像芸術に特化した展覧会が行われており、映写機や画期的な展示方法を用いていることからジュ・ド・ポーム美術館で行われる展覧会はいつも注目を集めています。有名なアーティスト、あまり知られていないアーティスト、新進気鋭のアーティストの展覧会が数ヶ月ごとに開催されており、歴史的な作品から現代的なも作品まで、幅広く鑑賞することができるのも特徴です。そんなジュ・ド・ポーム美術館で行われた展覧会は、どのようなものだったのでしょうか。近年注目を集めた展覧会について詳しく解説していきます。

・《ヨゼフ・スデック展》 

《ヨゼフ・スデック展》は2016年に行われた展覧会で、1896年から1976年にかけて戦争期に主に活躍した写真家ヨゼフ・スデックにスポットライトを当てた展覧会です。ヨゼフ・スデックはチェコ出身で、第一次世界大戦の際に右腕を負傷し失うことになるものの、1920年代には写真家として活動をはじめます。

スデックの写真家としてのキャリアは当初広告写真から始まりましたが、主にプラハの街を撮影した写真作品を制作、特に印象的に光を捕えた写真を撮影したことから「光と影の作家」とも称されました。第二次世界大戦の際にはナチスにより撮影活動が制限されたため、アトリエの窓からの眺めを撮影し、「スタジオの窓辺より」というシリーズを発表。現在では20世紀を代表する写真家のひとりとして注目が集まっています。

ジュ・ド・ポーム美術館で行われた展覧会では、窓辺を撮影したシリーズに加えてプラハの街の風景写真などが出品されました。シンプルに展示されることで、スデックの写真作品の美しさが際立ち、写真ファンにも高く評価される展覧会となりました。

・《The Art and Science of Life Wear》 

《The Art and Science of Life Wear》は2018年に開催された展覧会で、世界的なメーカーであるユニクロのヒット商品であるニットのデザインに迫る展覧会です。2017年10月にはヒートテックの販売から15年の節目となり、ニューヨークと東レ株式会社で「The Art and Science of Life Wear -Celebrating 15 Years of Innovation-」が開催されました。加えて2018年はカシミヤニットの発売から15年を迎えた記念すべき年であり、ジュ・ド・ポーム美術館でのニットデザインに着目した展覧会の開催となったのです。

展示会場では100色のニット素材で作られた1万パーツのインスタレーションに加え、無縫製ニットの技術と最新の編み機を映像で紹介する展示が行われ、企業とタイアップした展覧会としては非常にユニークな展示を行ったことで話題を集めました。また最後のフロアではパリのブランド「ANDREA CREWS」「Maison Labiche」「Keur Paris」とコラボレーションしたニットウェアが会場限定で販売されており、パリの人々にも注目されるしかけが随所に見られます。

美術館での展覧会の形は絵画作品を鑑賞するという形から、家具や宝飾品、そしてデザイン製品など幅広いジャンルに広がっています。そうした意味では一番に注目される企業の技術やデザインを展示するというのも現代ならではの試みであり、幅広いジャンルの展示に挑戦するジュ・ド・ポーム美術館だからこそ行えた展覧会でもあるといえるでしょう。

■おわりに

ジュ・ド・ポーム美術館はナポレオン三世時代に建てられたもともとは球技のコートが設置されていた建物を改修することによって生まれた美術館です。1930年代はモディリアーニや藤田嗣治といった20世紀を代表する芸術家たちの作品を常設展示したのち、印象派美術館として印象派の作品を多数展示、そして2004年には映像芸術の展示を行う美術館となりました。

その古めかしい建物のイメージに反して、ジュ・ド・ポーム美術館では近現代美術から映像芸術の展示を最新の展示方法で展示しており、パリで活躍した芸術家から世界的に発展する企業をも展示対象としている点では、非常に画期的な美術館であるといえるでしょう。ジュ・ド・ポーム美術館ではこうしたユニークな展覧会を複数同時に楽しむことができるので、フランス、パリを訪れた際にはぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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