ピカソ美術館:ピカソが最後まで手にしていた作品を所蔵する美術館

ピカソ美術館はフランス、パリの3区にある美術館で、パリ国立ピカソ美術館として20世紀を代表する画家パブロ・ピカソの作品を所蔵・展示してきました。所蔵品にはピカソが最後まで手元に置いていた作品も多く、ピカソの作品を鑑賞する中では大変重要な作品となっています。そんなピカソ美術館の歴史と、所蔵されている作品について詳しく解説していきます。

■ピカソ美術館とは

ピカソ美術館はフランス、パリの3区にある美術館で、20世紀を代表する画家パブロ・ピカソの作品を所蔵・展示しています。ピカソ美術館のコレクションのもととなった作品は、ピカソが1973年に亡くなるまで自身が手元に置いておいたものであり、ピカソ芸術を研究する中では大変貴重な作品が所蔵されています。特に親友カサへマスが亡くなった悲しみを表現した「青の時代」の作品や《ドラ・マールの肖像》など、ピカソ作品の中でも傑作といわれる作品を鑑賞することができます。

またピカソ美術館では絵画作品のほかに彫刻やデッサン、陶器や版画、写真なども所蔵しており、その収蔵品数は5000点近くにも及びます。またピカソ自身が収集したブラックやセザンヌ、ドガ、マティスといった画家たちの作品も所蔵しており、ピカソが活躍した時代の画家たちの作品やピカソ芸術をはぐくんだ画家の作品を鑑賞することができます。

ピカソ美術館は2009年から改修工事に入り、その際には美術館のコレクションが世界各地を巡回しました。工事は2011年までの予定であったものの、毎年予定がずれ込み、2014年10月25日になってようやくリニューアルオープンし、28日からは一般公開されることとなりました。

■ピカソ美術館の建築

ピカソ美術館の建物は、もともと塩税徴収官の邸宅であり「オテル・サレ(塩の館)」と呼ばれていました。1656年から1659年にかけて建築家ジャン・ド・ブイエによって建設された建物で、1964年には歴史的な建造物としてパリ市が購入しています。のち、1976年にコンペティションで選ばれた建築家ロラン・シムネが改修にあたり、ピカソ美術館として生まれ変わりました。

また内部装飾ではアルベルト・ジャコメッティの弟であるディエゴ・ジャコメッティがシャンデリアや椅子、テーブルなどのデザインを担当したことでも有名です。

■ピカソ美術館のコレクション

ピカソ美術館のコレクションは、ピカソ自身の作品でいうと、青の時代、バラ色の時代、キュビスム、新古典主義、シュルレアリスムとピカソの生涯にわたる作品が所蔵されており、その画風の変化を感じ取ることができます。また同時代の画家たちの作品も多数所蔵していることから、ピカソが活躍した19世紀から20世紀にかけての画家たちの表現を鑑賞することができるのも、大きな特徴といえるでしょう。

そんなピカソ美術館の所蔵品には、どのような作品が含まれているのでしょうか。主要な所蔵品を中心にご紹介します。

・《海辺の人物》 1931年 パブロ・ピカソ

本作品は1931年にパブロ・ピカソによって描かれた作品で、シュルレアリスムの技法で有名です。キャンバスいっぱいに複雑な幾何学的形状へと変化する二人の人物が描かれています。はっきりとしたライン、明るいコントラスト、機械的に加工された細部が絡み合っています。

左側の歪んで描かれている女性は、捕食的で脅迫的な性格を連想させます。女性の身体を構成する部分はバラバラにされ、所々鋭い形になっていることから、妖怪のようなイメージを与えています。そんな彼女と顔を合わせている男性は、どこか受動的です。彼らは口を大きく開け、舌のようなものをお互いに向けてとがらせています。

この作品には多くの解釈があります。欲望の抑圧や情熱、肉欲的な喜びに対する個人的な態度など、その捉え方は人によって様々です。いずれにしても、この作品の造形芸術は、ピカソに彫刻の制作のきっかけを与えました。こういった点でも、非常に重要な作品であるといえます。ピカソは、針金や釘、子供のおもちゃ、家具、段ボールなどで作られた作品の制作に興味を持っていました。

・《座る女》 1937年 パブロ・ピカソ

本作品は1937年に描かれた作品で、愛人であったマリー・テレーズを描いた作品の一つです。モデルであるテレーズは17歳の時からピカソと関係をもちますが、当時、ピカソは45歳の既婚者でした。長い間多くのピカソ作品のモデルをつとめていたようで、26歳の時には彼らの間に子供ができ、ピカソの妻オルガに関係が知られますが、ピカソは決して離婚しませんでした。

(Public Domain /‘The Representatives of Foreign Powers Coming to Greet the Republic as a Sign of Peace’ by Henri Rousseau. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

・《平和のしるしに共和国へ敬意を表して訪れた列国の代表者たち》 1907年 アンリ・ルソー

本作品はピカソと同様に20世紀を代表する画家であるアンリ・ルソーが描いた作品で、1907年に描かれました。異なる時代の6人のフランス大統領が、1枚の作品に集合して描かれている作品です。

左側には、第9代大統領アルマン・ファリエール、第4代大統領ジュール・グレヴィ、第5代大統領マリー・フランソワ・サディ・カルノー、第8代大統領エミール・ルーベ、第6代大統領ジャン・カジミール=ペリエ、第7代大統領フェリックス・フォールが、オリーブの枝を持って立っています。またその奥には、マダガスカル、ブラックアフリカ、インドシナ、北アフリカなどのフランスの植民地の代表者が立っています。

勉強途中であった遠近法はうまく用いられておらず、2次元空間的に構成されています。ルソーはこの作品で、自由の理想、平和主義、共和主義を表現しました。

(Public Domain /‘Portrait of a Woman’ by Henri Rousseau. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

・《女性の肖像》 1895年 アンリ・ルソー

本作品は1895年にアンリ・ルソーによって描かれた作品です。アンリ・ルソーはもともと税関の職員をつとめており、税関を退職したのちに絵を描き始めました。その独特の表現は当時のパリではなかなか受け入れられなかったものの、偶然本作品を目にしたピカソが5フランで購入したことからルソーとピカソの交流は始まったのです。

ピカソはルソーに敬意を表すためにバトー・ラヴォアールで「アンリ・ルソーの夕べ」といわれる宴を催し、その中にはアポリネール、ジョルジュ・ブラック、マックス・ジャコブなどが集まっていました。この会はからかい半分で催されたという説もあるものの、素朴派のルソーが評価されるきっかけになった出来事としていまなお伝説的に語られています。

■おわりに

ピカソ美術館は20世紀の巨匠パブロ・ピカソや同時代を生きた画家たちの作品を所蔵している美術館です。青の時代、バラ色の時代、キュビスム、新古典主義、シュルレアリスムといったピカソの一連の作品のほか、絵画や彫刻、デッサンや陶器といったさまざまなジャンルのピカソ作品を鑑賞できるのもこの美術館ならではといえるでしょう。

またアンリ・ルソーとの関係など、同時代の画家たちとのかかわりをうかがえる作品が所蔵・展示されているのもピカソ美術館の特徴の一つです。パリを訪れた際には、ぜひピカソ美術館をおとずれて20世紀の画家たちの情熱を感じてみてはいかがでしょうか。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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