カンペール美術館:ブルターニュ絵画のコレクションを所蔵する美術館

カンペール美術館はフランスのカンペールにある美術館で、1867年に開館しました。はじめはブルターニュ出身のジャン=マリー・ド・シルギーの個人コレクションを展示していましたが、今では15世紀から近代までの1200点の絵画とデッサン2000点のコレクションをもつフランス有数の美術館となっています。そんなカンペール美術館の歴史やコレクションについて、詳しく解説していきます。

カンペール美術館とは

カンペール美術館はもともとブルターニュでも由緒ある一族の出身であるジャン=マリー・ド・シルギーの膨大なコレクションをもとに開館しました。これは、シルギーは遺贈する際、市がコレクションを保存・展示するための博物館を建設することを条件にしていたためです。やがて、1867年の建設当初の美術館はコレクションが増えるにつれて手狭になり、1993年には建築家ジャン・ポール・フィリポンによって全面的に改装されます。この際、作品の展示をより見やすくするため、表面積が広げられました。改装後は、700点の作品が常設展示されているほか、企画展専用のエリアも設けられています。また、館内には講堂、受付、書店も併設されました。

作品を展示するスペースが広がったことにより美術館の地位が向上し、国からの美術品も所蔵するようになります。現在では、フランス西部の主要な美術館の一つとなり、19世紀を中心とした14世紀から現代までのフランス絵画、イタリア絵画、フランドル絵画、オランダ絵画の豊富なコレクションが展示されています。

カンペール美術館のコレクション

カンペール美術館のコレクションは、もともとジャン=マリー・ド・シルギーからの膨大な美術コレクションが中心となっていました。現在ではそのコレクションは拡大し、15世紀から近代までの絵画1200点、デッサン2000点という膨大なコレクションとなっています。そのうち半分がフランスの画家の作品で、残りはスペインやイタリア、フランドルなどの作品が占めています。

《カンペールの港の風景》 1857年 ウジェーヌ・ブーダン

本作品はウジェーヌ・ブーダンによって1857年に描かれた作品で、カンペールの港が描かれています。ウジェーヌ・ブーダンは1824年ノルマンディ地方のオンフルールで水夫の子として生まれた画家です。1859年に写実主義の画家ギュスターヴ・クールベに出会ったことをきっかけとして、パリのサロンに作品を出品するようになります。またブーダンは印象派の巨匠クロード・モネに戸外制作を指導したことでも知られており、ブーダン自身も1874年の印象派展に出品するなど、印象派と縁の深い画家として知られています。その後ベルギーやオランダ、南フランスを旅しながらもパリのサロンに出品をつづけ、1881年には第3賞、1889年には金賞を受賞。1892年にはレジオン・ドヌール勲章を受章します。1898年にはドーヴィルで生涯を閉じることになるものの、その青空と雲の表現はボードレールやコローから「空の王者」と賛辞を受けるほどでした。

本作品では画面の半分以上が空の表現となっており、移ろいゆく空模様が大気の流れと共に表現されています。こうした移ろいゆく対象を見事に表現しているのはブーダンならではの表現であり、のちの印象派に受け継がれていく作風といえるでしょう。また港には民族衣装をまとったブルターニュの人々が描かれています。人々はそれぞれ思い思いの日常を過ごしており、こちらも印象派の画家たちがパリの人々を描いた作品を思い起こさせます。こうしたブルターニュをテーマとした作品のコレクションは、カンペール美術館の特長であり、地域の伝統や在りし日の姿を紹介しているという点では非常に重要な役割を果たしているといえるでしょう。

そんなカンペール美術館の所蔵品には、どのような作品が含まれているのでしょうか。主要な所蔵品をご紹介します。

(Public Domain /‘Arrival of the Pardon of Sainte Anne at Concarneau’ by Alfred Guillou. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

《コンカルノーのパルドン祭》 1887年 アルフレッド・ギユー

本作品は1887年アルフレッド・ギユーによって描かれた作品で、ブルターニュ地方固有の祭りであるパルドン祭りを描いたものです。パルドン祭りは告解を示す祭りのことであり、信者たちは聖人の墓や聖人に捧げられた場所に向けて巡礼を行います。一部では聖母マリアの母にしてブルターニュの守護聖人である聖アンヌに対し、人々は伝統衣装に身を包んで祈りを捧げます。

パルドン祭りは19世紀フランス美術において非常に人気の主題の一つでした。民族衣装やその地域ならではの信仰は当時の画家たちの目に非常に新鮮に映ったようで、ジュール・ブルトンやパルカル・ダニャン=ブーベレといった画家たちがこの祭りを主題として作品を残しています。またポール・セリュジエやポール・ゴーギャンといったポン=タヴェン派の画家たちも、パルドン祭りにインスピレーションを受けて作品を制作したといわれています。

本作品を描いたアルフレッド・ギユーはフランス、ブルターニュ出身の画家であり、パリの市立美術学校アカデミー・シュイスで学んだ後、アレクサンドル・カバネルのアトリエで学び、1868年からはサロンに出品するようになります。ギユーは故郷であるブルターニュを主題に多数の作品を描いており、本作品もそうした作品のひとつに数えられています。この作品では、祭りの衣装に身を包み、人々が海路をたどって聖域に向かっている様子が描かれています。空と海の反射が混ざり合う夕日の露の光に包まれたキャンバスは、全体に穏やかで庶民的な敬虔さを感じさせます。

《ブルターニュの習作》 1888年 エミール・ベルナール

本作品はエミール・ベルナールによって1888年に描かれた作品で、伝統衣装に身を包んだブルターニュの女性が描かれています。エミール・ベルナールは1868年フランスのリールに生まれた画家で、1884年にフェルナン・コルモンの画塾に通った後、ノルマンディやブルターニュ半島を歩いて旅しています。

本作品では、3つの人物のグループが、脈絡もなく重ね合わせて描かれています。手前には、大胆に切り抜かれた2人のブルトン人の女性が描かれており、イタリア・ルネサンス期のグラデーションや遠近法を否定するような技法は、浮世絵の影響を明確に示しています。彼女たちの上部には、楽器を演奏している二人の男性がいますが、こちらも遠近法を無視して非現実的な位置に描かれています。一番奥には、草原の上に座るブルトン人の女性たちがいますが、距離感の表現はかろうじて相対的に離れていることがわかる程度です。

カンペール美術館の作品ページ

おわりに

カンペール美術館はもともとブルターニュの由緒ある一族出身のジャン=マリー・ド・シルギーのコレクションから始まり、現在では15世紀から近代までの膨大な作品を所蔵するフランス有数の美術館となっています。コレクションは半分がフランス、そのほかはスペインやイタリア、フランドル出身の画家たちの作品が占めていますが、そのなかにはブルターニュをテーマとした作品が多く含まれており、ブルターニュの文化を伝える貴重なコレクションといえるでしょう。

カンペール美術館はパリから足を延ばすにはかなりの時間を要しますが、ブルターニュの文化に触れる貴重な経験ができる場所でもあります。機会があれば、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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