オルレアン美術館:15世紀から20世紀の芸術品を楽しめる美術館

オルレアン美術館はフランス革命の間に設立された美術館で、15世紀から20世紀の芸術品を所蔵しています。2000点以上の絵画、700点の彫刻、1,200以上の装飾美術品、10,000のデッサン、50,000の印刷物という莫大な所蔵数に加え、パステル画のコレクションについてはルーブル美術館に次いで2番目の規模を誇っています。そんなオルレアン美術館の歴史とコレクションについて、詳しく解説していきます。

オルレアン美術館とは

オルレアン美術館は1797年フランス革命の際に美術学校の校長であったジャン・バルダンによって設立されました。美術館はオルレアンの旧大学の礼拝堂に設立されましたが、1804年には一度閉館しています。その後、1823年には市長や伯爵などの有力者たちによって再開館が決まり、一般に公開されることとなりました。1855年には史料と美術コレクションが分離されることとなり、オルレアン美術館には美術コレクションのみが残されました。

オルレアン美術館のコレクション

オルレアン美術館では15世紀から20世紀の芸術品を所蔵しており、そのコレクションは西洋絵画史に登場する画家たちを網羅するといってもいいほどです。2000点以上の絵画、700点の彫刻、1,200以上の装飾美術品、10,000のデッサン、50,000の印刷物などの中にはコレッジョやアンニーバレ・カラッチ、グイドレーニ、ディエゴ・ベラスケス、ギュスターヴ・クールベ、オーギュスト・ロダンなどその時代を代表する画家たちの作品が含まれており、非常に豊かなコレクションです。またフランス画家たちのパステル画でも豊富に作品を所蔵しており、そのコレクションの規模はルーブル美術館に次いで2番目の規模となっています。

そんなオルレアン美術館のコレクションの中には、どのような作品が含まれているのでしょうか。主要な所蔵品をご紹介します。

(Public Domain /‘The Adoration of the Shepherds’ by Annibale Carracci. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

《羊飼いの礼拝》 16世紀 アンニーバレ・カラッチ

本作品はアンニーバレ・カラッチによって16世紀に描かれた作品で、キリスト誕生の際に羊飼いたちが礼拝に訪れた際の出来事を描いた作品です。

アンニーバレ・カラッチは1560年にイタリア、ボローニャに生まれた画家で、16世紀のボローニャ派を代表する画家のひとりです。兄のアゴスティーノ・カラッチや従兄のルドヴィーゴ・カラッチとともに「カラッチ一族」と呼ばれており、特にアンニーバレはその中でも技術が優れた画家として高く評価されています。カラッチが活躍した時代は16世紀に盛んになったマニエリスムの不自然に引き延ばされた人体表現や技巧的な構図が批判されるようになった時代で、徐々に盛期ルネサンス風の写実的な人体描写が好まれるようになっていました。カラッチらが描いた作品はこうした時代の流れに則ったもので、様式や理想美を表す「マニエラ」と自然や写実を表す「ナトゥーラ」との調和がとれた様式として評価され、ファルネーゼ宮殿天井画など教皇庁や有力者からの依頼も受けていました。

本作品で描かれているのは「ルカによる福音書」2章に記された一説で、イエス・キリスト誕生の際に天使たちから救世主の誕生を知らされた羊飼いたちが急いで聖ヨセフと聖母マリアのもとを訪れ、幼子イエスを礼拝するという「羊飼いの礼拝」です。本作では上部に天上界を、そして下部に地上の様子を描いており、カラッチにしてはどこか劇的な表現となっています。天井の人々はそれぞれが喜びのポーズを示し、また中には楽器を演奏する者もいます。天使たちはそれぞれ花をもち、キリスト降誕を祝福しています。

地上の世界では中央にピンクと青の衣をまとった聖母が描かれ、その傍らには聖ヨセフが描かれています。中央には飼葉桶に寝かされた幼子イエスがおり、羊飼いたちや天使たちはその誕生を喜び、さまざまな感情を浮かべています。

(Public Domain /‘Saint Thomas’ by Diego Velázquez. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

《使徒聖トマス》 1619年-1620年 ディエゴ・ベラスケス

本作品は1619年から1620年にかけて制作された作品で、使徒の聖トマスを描いた作品です。描いたディエゴ・ベラスケスは1599年にスペイン帝国のセビーリャに生まれた画家で、スペイン黄金時代の17世紀を代表する巨匠といえる人物です。フランシスコ・パチェーコに弟子入りしたのち、首都マドリードに移り、オリバーレス伯爵ガスパール・デ・グスマンの紹介で国王フェリペ4世の肖像画を描いたことで、国王付きの宮廷画家となります。その後、約30年間に渡って国王や王女、宮廷の人々を描き続けました。特にブエン・レティーロ離宮に飾られた《ブレダの開城》や《鏡のヴィーナス》、《教皇インノケンティウス10世》、《ラス・メニ―ナス》などは西洋美術史に残る傑作として高く評価されています。

本作品はそんなベラスケスがキリストの使徒のひとりである聖トマスを描いた作品です。聖トマスは新約聖書に登場する人物で、キリストが復活したという他の弟子たちの言葉を信じなかったものの、実際にイエスを見たことで感激し、またイエスの脇腹の腹の傷に自分の手を差し込んでその身体を確かめたとも言われています。また聖トマスは「トマスによる福音書」を著したとも言われており、本作で聖トマスが手にしているのは福音書とも考えられます。

聖トマスは黄土色の外套を羽織り、杖を肩にかけて、右手には分厚い書物を手にしています。その顔はわずかながらに赤らみ、思慮深いまなざしを下に向けています。背景は黒と彼の衣の黄土色に近い色で塗りつぶされており、非常にシンプルな構図となっており、聖トマスの神秘性を高める表現となっています。

(Public Domain /‘Jeanne d’Arc à la sortie d’Orléans, repoussant les Anglais’ by William Etty. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

《オルレアンの城壁から出てフランスの敵を追い返すジャンヌ=ダルク》 1846年-1847年 ウィリアム・エティー 

本作品は1846年から1847年にかけてウィリアム・エティーによって描かれた作品で、オルレアンの伝説の聖女ジャンヌ=ダルクを描いたものです。ジャンヌはフランス東部のドンレミに農夫の娘として生まれたものの、神の声を聴き、フランス軍に従軍。イングランドとの百年戦争の際に勝利して、フランス王シャルル7世の戴冠を導きました。しかしその後ブルゴーニュ公国の捕虜となり、19歳で火刑に処せられ短い人生を終えました。

本作品では白馬にまたがったジャンヌが城を出て、敵を一掃する様子が描かれています。ジャンヌは鎧を付けて剣を大きく振りかざしており、それでいて冷静な視線を敵におくっています。ジャンヌの足元には城を包囲していた敵軍の兵士たちが描かれており、ジャンヌの突然の攻撃に驚きふためく様子がわかります。

作者であるウィリアム・エティーは1787年にイギリスのヨークに生まれ、画家である叔父から絵画の基礎を学んだあと、王立美術院に入学。その後歴史画を主に描くようになり、1822年から1824年にかけてはローマやフィレンツェ、ヴェネツィアなどでも評価を受けるようになっていきました。本作品では歴史画を得意としていたエティーの表現が存分に生かされており、ジャンヌ・ダルクの美しい一瞬を描き切っています。

おわりに

オルレアン美術館は17世紀から18世紀のフランス絵画を所蔵する美術館です。パステル画の豊富なコレクションを所有する一方、ジャンヌ・ダルクをテーマとした絵画作品もコレクションに含まれています。オルレアンを訪れた際には、ぜひ訪ねてみてはいかがでしょうか。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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