ギルドホール・アート・ギャラリー:中世からのロンドンの芸術作品を楽しめる美術館

ギルドホール・アート・ギャラリーは、ギルドホールとはシティ・オブ・ロンドンの市庁舎東側にある美術館です。現在も市長の晩餐会や講演会などが行われています。そのギルドホールに隣接するギルドホール・アート・ギャラリーは、シティ・オブ・ロンドンのコレクションを所蔵している美術館で、1886年「首都にふさわしい宝物とアートのコレクションを所蔵する美術館」として設立されました。

ギルドホール・アート・ギャラリーとは

ギルドホール・アート・ギャラリーは、シティ・オブ・ロンドンのギルドホールの東側にある美術館です。第二次世界大戦の空襲の際には、ギルドホールはもちろん、ギルドホール・アート・ギャラリーも大きな被害を受け、160点以上の絵画やデッサン、20以上の彫刻が失われました。その後は臨時で展覧会を開くなどしていたものの、1988年に再建が決定されます。

再建工事の際には建物の下にローマ時代の円形劇場が発見され、大きな話題となりました。このことにより建築計画の見直しがなされ、1999年に再び開館。ギルドホール・アート・ギャラリーでは1660年から収集してきたコレクションはもちろん、この円形劇場も目にすることができる展示空間になっており、遺跡とあわせて芸術作品を楽しめるという非常にユニークな美術館となっています。

ギルドホール・アート・ギャラリーのコレクション

シティ・オブ・ロンドンでは1660年から作品を収集しており、コレクションは4000点以上の絵画、デッサン、彫刻作品などから成り立っています。16世紀以降の王族や歴代の市長たちの肖像画、17世紀から現在にいたるまでのロンドンの風景画に加え、ラファエル前派のコレクションも所蔵しており、中世から現代にいたるまでのロンドンゆかりの品々を目にすることができます。

そんなギルドホール・アート・ギャラリーのコレクションには、どのような作品が含まれているのでしょうか。主要な作品をご紹介します。

《ジブラルタル浮き砲台の敗北1782年9月》ジョン・シングルトン・コプリー1783年-1791年

本作品は1783年から1791年にかけて制作された作品で、独立期のアメリカを代表する画家ジョン・シングルトン・コプリーによって描かれた作品です。

コプリ―は1738年にアメリカのボストンに生まれた画家です。1750年ごろ母親が版画家と再婚したことで義理の父親から絵画を学ぶようになり、ゴドフリー・ネラーやジョシュア・レノルズらの画集を模写しては独学で画力を身に付けていきました。1766年にはロンドンで《少年とリス》を出品し、レノルズから称賛されたことにより、徐々に画家としての地位を確立していくことになります。

Public Domain / ‘Watson and the Shark’ by J S Copley. Image via WIKIMEDIA COMMONS

アメリカ独立戦争前の混乱が生じたこともあり、1774年にはイギリスに渡ってベンジャミン・ウェストをはじめとするアメリカ出身の画家たちと交流するようになります。特にウェストとは親しく交流しており、ウェストの影響で自然と戦う人間を題材として作品を制作したといわれています。ハバナの海でサメに襲われる少年ワトソンを描いた《ワトソンと鮫》などの劇的な描写は大きな反響を呼びました。

そんなコプリ―によって描かれた本作品は、アメリカ独立戦争の際にイギリスからのジブラルタル奪取を目的としてスペインとフランスによって起こされた戦いを描いたものです。1779年7月フランスとスペインの軍隊はジブラルタルに駐留するイギリス軍を包囲。10万人以上の兵と48隻からなる連合軍でイギリス軍に攻撃を仕掛けますが、イギリス軍は4年近く耐え抜き、ジブラルタルは難航不落の要塞としてその名をとどろかせることとなります。

この戦いの中で、スペインは筏に湿った砂を充填した「浮き砲台」を考案し、ジブラルタルに近づいて砲撃を行う作戦に出たものの、イギリスは焼玉式焼夷弾でこれを撃破。1783年包囲は解かれ、指揮したジョージ・オーガスタス・エリオットはバス勲章に叙せられることとなります。

右側には軍服を着て雄々しく戦うイギリス軍が描かれ、左側にはイギリス軍の攻撃を受けて海に沈んでいく浮き砲台が描かれています。イギリス軍の上部は青い空が、連合軍の上部は暗い空が描かれていることにより、両者の衝突・対立が劇的に表現されています。

PublicDomain / ‘La Ghirlandata’ by Dante Gabriel Rossetti. Image via WIKIMEDIA COMMONS

《花輪の女》1873年ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ

本作品は1873年に描かれた、ラファエル前派の巨匠ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの作品です。

ロセッティは1628年にイギリス・ロンドンに生まれた画家です。父親ガブリエーレは著名なダンテ詩人であり、1831年に創設されたキングス・カレッジでイタリア語の教授として働いていました。ロセッティは1837年にキングス・カレッジに入学したものの徐々に芸術に傾倒するようになり、1841年にはキングス・カレッジを退学し、大英博物館のそばにあった私立絵画学校ケアリーズ・アート・アカデミーに入学しています。

1846年にはロンドンのロイヤル・アカデミー付属美術学校に入学し、ウィリアム・ホルマン・ハントやジョン・エヴァレット・ミレーとともにラファエル前派を結成します。本作品は美しい女性やハープ、バラやスイカズラの花などを用いて美しさや愛を描いた作品ですが、驚くべきことにロセッティは本作品を描いたころ神経衰弱状態にあり、自殺未遂も図っているような状態でした。

ロセッティは長い婚約期間の後エリザベス・シダルと結婚しますが、ウィリアム・モリスの妻となったジェーン・モリスにも思慕を抱いており、徐々にシダルとの結婚生活は冷え切っていきます。結婚2年目にはエリザベスが夫への不安感からか、薬物の大量摂取で自殺したこともあり、ロセッティは徐々に精神を病んでいくのです。

本作品のモデルとなったのはアレクサ・ワイルディングという女性だったといわれているものの、その顔はジェーン・モリスそのものであり、ロセッティがどれほどにジェーンを愛していたのかが伺えます。

おわりに

ギルドホール・アート・ギャラリーはシティ・オブ・ロンドンのコレクションを所蔵しており、ローマ時代の円形劇場やラファエル前派の作品、現代のアーティストの作品など、ロンドンゆかりの品々を鑑賞できる美術館です。ロンドンにはナショナル・ギャラリーや大英博物館などの世界を代表する美術館・博物館がいくつかありますが、ロンドンの歴史を知りたいという方はギルドホール・アート・ギャラリーをぜひ訪れてみてください。

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