バーミンガム美術館:エドワード・バーン=ジョーンズのコレクションで有名な美術館

バーミンガム美術館は、イングランドのバーミンガムにある美術館です。絵画だけでなく陶磁器や宝石、考古学といったジャンルの作品も所蔵しており、特にラファエル前派の画家エドワード・バーン=ジョーンズの作品が充実していることで知られています。そんなバーミンガム美術館の歴史と所蔵品について詳しく解説していきます。

左奥バーミンガム美術館、右Birmingham City Council

■バーミンガム美術館とは

バーミンガム美術館はイングランドのバーミンガムにある美術館で、1885年に開館しました。バーミンガムはイングランドのウェスト・ミッドランズに属す工業都市であり、首都ロンドンに次ぐ第二の大都市とされています。バーミンガムは18世紀まで小さな村であったものの、鉄道と運河の交叉点であったことから産業革命の際重要な拠点として発展し、工業都市として栄えることとなりました。

そんなバーミンガムにあるこの美術館は、古代ギリシアやローマ時代の作品から現代にいたるまでのさまざまな作品を所蔵しています。バーミンガム美術館には40の展示室があり、絵画作品や彫刻、陶磁器といった所蔵品の他、ラファエル前派の作品を多数展示しています。

参考サイト:wikipedia バーミンガムバーミンガム美術館

■バーミンガム美術館のコレクション

バーミンガム美術館のコレクションには、古代から現代にいたるまで幅広い時代の品々が含まれていますが、特にラファエル前派の巨匠エドワード・バーン=ジョーンズのコレクションは類を見ないレベルです。
そんなバーミンガム美術館コレクションの主要な作品をご紹介します。

(Public Domain /‘The Wizard’by Edward Burne-Jones. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

・《魔法使い》1896年-1898年エドワード・バーン=ジョーンズ

本作品を描いたエドワード・バーン=ジョーンズはバーミンガムを故郷とする画家で、めっき師の息子として1833年に生まれました。バーミンガムのキング・エドワード6世グラマースクールに通い、1848年からはオックスフォード大学エクスター・カレッジで神学を学んでいます。もともとは聖職者になるつもりであったものの、在学中に出会ったウィリアム・モリスの影響で芸術家を志すようになり、その後はステンドグラスの制作に取り掛かるようになっていきました。その後ラファエル前派の巨匠ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティのもとで学び、ステンドグラスはもちろん、絵画作品にも取り組んでいきました。

私生活ではジョージア・マクドナルドと結婚したものの、絵のモデルをつとめたギリシア人のマリア・ザンバコと不倫関係になるなどスキャンダルが多く、決して安定したものではありませんでした。しかし徐々に名をあげていき、1881年にはオックスフォード大学から名誉学位を授与され、1885年にはバーミンガム芸術家協会の会長に就任。バーミンガムはもちろん、イギリスを代表す芸術家となっていきました。1898年には64歳でその生涯を閉じることとなりますが、当時のプリンス・オブ・ウェールズによってウェストミンスター寺院で葬儀が行われるなど、芸術家としては大変名誉ある生涯であったといえます。

本作品はそんなバーン=ジョーンズによって描かれた作品で、「テンペスト」に登場する父娘プロスペロとミランダが描かれています。「テンペスト」はウィリアム・シェイクスピアによって描かれたロマンス劇で、復讐のために魔法を研究するプロスペロとその娘ミランダ、そしてナポリ王子ファーディナンドを中心とした物語です。本作に描かれている父娘は、鮮やかな紺や紫、緑といった色のマントを身にまとっており、二人とも水晶玉に映る物を見て何か考え事をしているようです。娘ミランダが触れているこの水晶玉には、魔法によって海の荒波にもまれる船の様子が映っています。

参考サイト:wikipedia エドワード・バーン=ジョーンズ

(Public Domain /‘Pygmalion and the Image -The Heart Desires’by Edward Burne-Jones. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

・《ピグマリオンと彫像I》1875年-1878年エドワード・バーン=ジョーンズ

本作品は1875年から1878年にかけて制作された、エドワード・バーン=ジョーンズの作品です。

本作品で描かれているのはキプロス島の王ピグマリオンの物語であり、4枚の油彩画で構成されています。ピグマリオンは理想の女性像としてガラテアの像を彫るものの、やがてその彫像に恋をしてしまいます。ピグマリオンは像が人間になることを願うものの、願いはかなわず衰弱していってしまいます。それを見かねた愛と美の女神アフロディーテがガラテアを人間にし、ピグマリオンはガラテアを妻に迎えるのです。

中央には手を顎にあてて思い悩むピグマリオンの様子が表現されています。右側の背景にはヘラ、アテナ、アフロディーテを指す三美神が描かれており、そこに光が当てられることで、のちにアフロディーテの恩恵があることを示唆していると考えられます。左側には好奇心から部屋をのぞき込む2人の町娘が描かれていますが、ピグマリオンは現実の女性たちに目を向けることはありません。ピグマリオンの視線は、理想の女性であるガラテアにのみ向けられているのです。

(Public Domain /‘Valentine Rescuing Sylvia from Proteus’by William Holman Hunt. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

・《プロテウスからシルビアを救うヴァレンタイン》1851年ウィリアム・ホルマン・ハント

本作品は1851年に描かれた、ラファエル前派の巨匠ウィリアム・ホルマン・ハントの作品です。

ウィリアム・ホルマン・ハントは、ジョン・エヴァレット・ミレーとダンテ・ゲイブリエル・ロセッティとともにラファエル前派を結成した画家です。彼らは中世や初期ルネサンスを手本として、新しい表現に取り組んでいました。ミレーやロセッティは徐々にラファエル前派の活動から離れていきましたが、ハントは最後までラファエル前派結成のきっかけとなったジョン・ラスキンの「自然を忠実に再現する」という思想を守り続け、聖書や伝説、宗教的な作品を制作し続けました。

本作品はウィリアム・シェイクスピアの喜劇「ヴェローナの二紳士」からの一場面を描いた作品で、作品の左上と右上には第5幕第4場から抜粋された文章が記述されています。左からジュリア、シルビア、ヴァレンタイン、そしてプロテウスが描かれており、背景にはシルビアの父であるミラノ大公とその使者たちが描かれています。

参考サイト:wikipedia ウィリアム・ホルマン・ハントValentineRescuingSylviafromProteus

■おわりに

バーミンガム美術館はイギリスを代表する工業都市バーミンガムにある美術館であり、エドワード・バーン=ジョーンズをはじめとしたラファエル前派の充実したコレクションを所蔵していることで知られています。バーミンガムはロンドンから鉄道で結ばれているということもあり、非常にアクセスのよい場所でもあります。イギリスを訪れた際には、ぜひ足を延ばしてみてはいかがでしょうか。

公式ホームページ

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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