イルクーツク(ロシア):ロシアの名ピアニスト、デニス・マツーエフの故郷

『デニス・マツーエフ』は、現代のロシアを代表するピアニストです。4歳の頃からピアノに親しみ、天性の才能と卓越した演奏技術を磨き上げてきました。そんな彼の故郷は、バイカル湖(ユネスコ世界遺産)近郊に位置する美しい街、ロシアの『イルクーツク』です。デニス・マツーエフと、故郷イルクーツクの魅力を詳しく紹介していきましょう。

■ロシアの名ピアニスト『デニス・マツーエフ』

『デニス・マツーエフ(Денис Леонидович Мацуев)』は、1975年にロシアのイルクーツクで生まれたピアニストです。学生時代、名だたる国際コンクールで優勝を納め、国内外で圧倒的な活躍ぶりを披露しました。特にロマン派音楽(19世紀の音楽)の演奏が高い評価を集め、流れるような指さばきで奏でる旋律は、世界各国の人々を魅了し続けています。ウィットに富んだ演奏の才覚は、今後も世界から注目されるでしょう。

『Denis Matsuev -Chopin: Ballade No. 4』

音楽一家に生まれたデニス・マツーエフは、4歳からピアノに親しんできました。芸術学校で早くも才能を開花させ、なんと9歳でデビューを飾っています。さらに、学校生活の傍らコンサート活動も精力的に行なってきました。若くして、ロシア国内のみならず、海外でも活躍していたという事実に驚きです。1994年にモスクワ音楽学校へ入学、その完璧な技術・表現力・音楽の才能を絶賛され、1998年のチャイコフスキー国際音楽コンクールでは、見事に優勝を獲得しました。

天性の音楽センスとたゆまぬ修練が、現在のデニス・マツーエフの地位を確立しています。ロシアを拠点に活躍する名ピアニスト、その故郷がロシアの『イルクーツク』です。

■デニス・マツーエフの故郷『イルクーツク』

『イルクーツク(Иркутск)』は、ロシアの真南・シベリア地方に属するイルクーツク州の街で、州都にも指定されています。シベリア地方の経済や文化の中心地であり、その美しい街並みから“シベリアのパリ”と称される事も。毛皮の集積地として発展を遂げてきたイルクーツクの起源は、1652年頃まで遡ります。交易の中心地であり、ロシア国内の囚人を送る流刑地(るけいち)としても、頻繁に利用されてきました。

1900年代前半頃にはシベリア鉄道が開通し、イルクーツクの発展はより顕著になっていきました。現在のイルクーツクは、“歴史の交差点”ともいうべき新旧の街並みが残されています。また、近隣に広がるのは、ユネスコ世界遺産にも認定されている世界最大規模の湖『バイカル湖』です。バイカル湖には、1,000を超える固有種が生息し、陸上のガラパゴス諸島とも言えるでしょう。その他、教会などの建造物も見逃せません。それでは、イルクーツクの見所を紹介していきます。

■世界最大規模の湖『バイカル湖』

『バイカル湖(озеро Байкал)』は、イルクーツクからバスでおよそ2時間の距離にある世界最大規模の湖です。(三日月型の湖)その透き通る美しさから“シベリアの真珠”とも呼ばれ、1996年にはユネスコ世界遺産に認定されました。

遊覧船やホバークラフトなどを使った観光業も盛んで、季節を問わずに世界中の人々がバイカル湖を訪れます。真冬には厚い氷が張り、雪に覆われた湖面が幻想的な光景を生み出すのです。

“世界最古の湖”とも言われるバイカル湖の誕生は、なんと3000万年以上も前に遡ります。通常の湖は、数千年〜数万年で川からの堆積物が消失してしまうのですが、バイカル湖はその数十倍の歳月を同じ場所で過ごしてきました。そして、驚く事にその規模は年々広がっているのだとか。また、湖の透明度は世界一を誇ります。2つの世界一の称号を持つバイカル湖は、まさに地球の神秘を体感出来る随一のスポットと言えるでしょう。

バイカル湖には、1,000を超える数の固有種(その場所にしか生息しない生物)が存在しているそうです。世界でも類を見ない生物の多様性から“生物進化の博物館”とも呼ばれています。

バイカル湖は、陸上のガラパゴス諸島とも言えるでしょう。中でも、注目を集めているのは、愛くるしい姿のバイカルアザラシです。周辺にある『バイカル湖博物館』でも飼育されているので、イルクーツクを訪れたら、まずはバイカル湖を目的地に選んでみてはいかがでしょうか。

■イルクーツクで最古の女子修道院『ズナメンスキー修道院』

『ズナメンスキー修道院(Znamenskiy Convent)』はイルクーツク最古の女子修道院で、1693年に建造、1762年に再建されました。ロシアの石造教会の中では大変古く、白を基調とした落ち着いた外観と可愛らしい緑色のクーポラ(丸屋根)が特徴です。院内には、聖人や聖書を題材に描いたイコンが豊富に展示されています。静謐な修道院の敷地には、歴史の重要人物や貴族などの墓もあるので、静かに鑑賞しましょう。

■まるで童話の中の建物『カザン大聖堂』

『カザン大聖堂(Казанская церковь)』は、1892年に建造されたロシア正教会の教会です。典型的なビザンチン様式で設計された大聖堂は、鮮やかな紅色のレンガ造りが目を引き、2種類の青色を使った屋根が全体を引き締めています。

可愛らしい外観は、たとえ童話の舞台になったとしてもおかしくありません。まるでおとぎ話に出てくるような雰囲気が建物全体を包んでいます。

※サンクトペテルブルクのカザン大聖堂

ロシアの首都モスクワやサンクトペテルブルクにも、『カザン大聖堂』があります。見た目の印象や造り、規模は大きく異なりますが、それぞれの大聖堂を見比べてみるのも面白いでしょう。

堂内には様々なイコンや彫像、そして豪華なシャンデリアや主祭壇が設置されています。見所が豊富なカザン大聖堂へ、ぜひ足を運んでみてください。

■古きよきイルクーツクの街並み『130地区』

『130地区(130 Kvartal)』は、イルクーツクの古い街並みを再現したエリアで、イルクーツクの歴史を彩ってきた様々な木造建築を目にする事が出来ます。

イルクーツクの紋章にもなっている『バブル』の銅像は、虎の頭と体、ビーバーの足と尻尾を持った架空の動物です。130地区の入口にあり、待ち合わせ場所としても親しまれているのだとか。カフェやレストランも豊富にある130地区は、散策中のひと休みにも最適です。

■イルクーツクの名物『オームリ』

『オームリ(О́муль)』は、バイカル湖のみに生息する魚で、鮭の仲間です。バイカル湖周辺では、古くから貴重なタンパク源として愛されてきました。珍味とも言われるオームリは、イルクーツクの多くのレストランで食べる事が出来ます。シンプルにマリネしたものやフライ、煮込みまで、これだけ幅広い調理法で楽しめるのが長年愛される証明なのです。お土産用に燻製した物もあるので、ぜひ手にとってみてはいかがでしょうか。

■シベリア地方の中心地、美しい街並みのイルクーツクへ

ロシアを代表する名ピアニスト、デニス・マツーエフの故郷イルクーツクの魅力や見所を紹介してきました。“シベリアのパリ”とも称される美しい街並みは、イルクーツク最大の魅力です。歴史の中で形成された独特の文化や景観は、世界各国から訪れる人々の心を虜にしています。圧倒的な美しさを誇るバイカル湖で、鮮やかな景色を楽しむのも良いでしょう。真冬の冷え込みは厳しいですが、それでも訪れる人々は多いと言います。

話題の尽きないイルクーツクの玄関口は、『イルクーツク国際空港(Аэропорт-Иркутск)』です。市街地までは、バスかタクシーを利用しましょう。また、ロシアの首都モスクワからは、飛行機でおよそ6時間の距離です。

折角なら世界最長の鉄道“シベリア鉄道”で、優雅な列車旅を満喫するのも良いでしょう。列車の車窓を通して、めくるめくロシアの移り変わりを感じる事が出来るはずです。次回の旅は、ぜひイルクーツクへ訪れてみてはいかがでしょうか。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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