バーゼル(スイス):象徴主義の画家アルノルト・ベックリンのふるさと

『アルノルト・ベックリン』は19世紀を代表する象徴主義の画家である。写実的であり神秘的、見る者の心を引き込むような独特の雰囲気をまとった作品をいくつも制作してきた。彼の作品に影響を受けた画家も少なくないという。そんなアルノルト・ベックリンのふるさとが、スイスで3番目に人口の多い街『バーゼル』である。スイス、ドイツ、そしてフランスの三国国境に面した国際色豊かな街だ。象徴主義の画家アルノルト・ベックリンとそのふるさとバーゼルの魅力を紹介しよう。

象徴主義の画家『アルノルト・ベックリン』

(Public Domain/‘Self-portrait with fiddling death ’ by Arnold Böcklin. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

『アルノルト・ベックリン(Arnold Böcklin)』は1827年生まれ、スイスのバーゼル出身の画家です。19世紀のスイスを代表する芸術家であり、内面的な観念を表す手法“象徴主義”を代表する画家として有名な人物です。同時期に注目を浴びていたフランスの印象派とは異なり、神話や聖書を題材とした想像上の世界をキャンバスに描き出す手法は、時代を問わず人々を魅了してきました。写実的な世界観の中にどこか寓意性を含んだ神秘的な作品は、現代も変わらず愛されています。

(Public Domain/‘Die Toteninsel III’ by Arnold Böcklin. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

バーゼルに生まれたアルノルト・ベックリンは、青年期を迎えるとヨーロッパ中を転々として過ごす生活を選びました。特にドイツとイタリアに滞在することが多く、代表作“死の島”は、晩年を過ごしたフィレンツェで描いています。暗く重たい雰囲気をまとったこの作品は、とりわけドイツで人気を博したのだとか。同名の作品を生涯で5つ描いていることから、アルノルト・ベックリンの代表作とされています。問いかけるような絵の構図は、どこか引き込まれるかのような魅力があります。

19世紀のスイスを、そして象徴主義を代表する画家であるアルノルト・ベックリン。そのふるさとが、スイス北西に位置する街『バーゼル』です。次章からはバーゼルの魅力を紹介していきましょう。

アルノルト・ベックリンのふるさと『バーゼル』

『バーゼル(Basel)』はスイス北西に位置するバーゼル=シュタット準州の州都です。スイスで3番目に人口が多い街で、ドイツとフランスの国境に接していることから、活気と国際色が豊かです。ちなみに、街中に飛び交う言葉でもっとも多いのはドイツ語だそうですよ。国内最古の大学である“バーゼル大学”や、40箇所以上の博物館・美術館があることから、スイス文化の中心地と呼ばれることもあります。欧州奇祭のひとつ“バーゼル・ファスナハト”が開催される3日間は、世界各国からたくさんの人々がバーゼルを訪れるといいます。

バーゼルの名称は、374年以降に初めて登場しました。15世紀後半には出版業で繁栄を迎え、織物業を通してさらなる発展を遂げてきました。出版業では、歴史上重要な文献の初版がバーゼルで出版されています。歴史を振り返ってみても、文化的な特色が際立っていますね。そんなバーゼルの見所は『バーゼル大聖堂』や『バーゼル市庁舎』、世界的な名画家の作品がコレクションされた『バーゼル市立美術館』などが筆頭です。バーゼルの見所を紹介していきましょう。

バーゼルのシンボル『バーゼル大聖堂』

『バーゼル大聖堂(Basel Munster)』は、バーゼルの市街地を流れるライン川沿いにある赤茶色の教会です。マルティン塔とゲオルグ塔、2つの尖塔がランドマークでしょう。元はカトリック大聖堂として建築されましたが地震で崩壊し、後の19世紀にゴシック様式の現在の姿になりました。落ち着いた赤茶色の外観と、堂々とそびえる2つの尖塔の存在感は圧倒的です。ライン川のほとりに立つ姿はバーゼルの街並みを華やかに彩っています。

バーゼル大聖堂の外観はもちろん、内装も見逃せません。ステンドグラスの幻想的な輝きや、一つひとつ模様が異なる木彫りのイスなど、細部に渡るこだわりをじっくりと鑑賞してみてください。職人のこだわりが詰まった、魅力的な世界が広がっていますよ。

また大聖堂のシンボルである尖塔は登ることもでき、頂上から360°Cの絶景が楽しめます。バーゼルの街並みはもちろん、隣国ドイツの黒い森も一望できますよ。スイスとドイツ、国境をまたいだ光景はなかなかお目にかかれるものではありません。隣に修道院もあるので、合わせて訪れることをおすすめします。石版やオブジェなど、見所も豊富です。

あざやかな赤色が美しい『バーゼル市庁舎』

『バーゼル市庁舎(Rathaus)』は、街の中心『マルクト広場(Marktplatz)』にある建物です。15世紀に建造された建物は、幾度もの増改築を経てあざやかなゴシック様式の市庁舎に変貌を遂げました。中央にそびえる金色の尖塔や3つのアーチ、壁に描かれたフレスコ画など装飾も見応えがあります。ハッと目を引く赤色ですが、その中に青色や緑色を使ったさりげないアクセントが隠れています。あざやかな赤色は数年ごとに塗り直しされ、いつでも華やかな色味を保っているそうです。

まるでおもちゃのお城のような外観は注目ですが、バーゼル市庁舎は内部も必見です。壁画や天井画が彩る華やかな空間は、まさしく豪華絢爛という言葉が似合います。見学ツアーも開催されているので、興味があれば参加してみるのがおすすめです。バーゼルの歴史の変遷を見守ってきた歴史ある建物を、ぜひ隅々まで鑑賞してみてください。正面のマルクト広場ではマーケットが開催されるほか、カフェやレストランも豊富にあり散策中のひと休みに最適の場所ですよ。

歴史に名だたる名画家の作品を展示する『バーゼル市立美術館』

『バーゼル市立美術館(Kunstmuseum Basel)』は総数30万点以上のコレクションを所蔵している美術館です。公共の美術館としては世界最古、1661年に創設されました。ギリシャのエル・グレコやフランスのアンリ・ルソー、そのほかゴッホやゴーギャン、パウル・クレーやセザンヌなど、世界的な知名度を誇る名画家の作品が充実しています。また、今回の記事で紹介したアルノルト・ベックリンの代表作『死の島』の第1作も、このバーゼル市立美術館に所蔵されています。

ルネサンス〜現代まで、歴史的な名画の数々をコレクションした珠玉の美術館です。ぜひじっくりと、芸術鑑賞に浸ってみてはいかがでしょうか?『死の島』の対極にある作品『生の島』もバーゼル市立美術館に所蔵されています。生と死、対極にあるテーマを見事に描きわけ、そして表現したアルノルト・ベックリンの傑作を、ぜひ鑑賞してみてください。

世界最大のテディベア・コレクションが楽しめる『おもちゃの世界博物館』

『おもちゃの世界博物館(Spielzeug Welten Museum Basel)』は、世界最大のテディベア・コレクションが楽しめるバーゼル屈指の人気スポットです。コレクションの総数は6,000体以上になり、中には希少価値のあるテディベアも展示されています。ボタンを押すと動き出すテディベアもあるそうですよ。

また、おもちゃの世界博物館は昔『人形の家博物館』の名称で親しまれていました。その名前が示す通り、館内には19世紀〜20世紀のドール・コレクションも充実しています。まるで今にも動き出しそうなほど精巧に作られたミニチュアや人形の数々は、必見ですよ。

バーゼルの名物『バーゼラー・レッカリー』

『バーゼラー・レッカリー(Basler Läckerli)』は、バーゼルの伝統的なお菓子です。スパイスをたっぷりと使ったバーゼル・レッカリーは、コーヒーはもちろんワインとも相性バツグン。材料に蜂蜜や果物のピールをふんだんに使っているので、エキゾチックで独特な風味が味わえるのだとか。カフェで楽しむのはもちろん、バーゼルのお土産にもおすすめです。

いくつか種類がある中でも、おすすめは『レッカリー・フース(Lackerli Huus)』というブランドのものです。国内外で人気を集める定番の味わい。ぜひお土産に購入してみてはいかがでしょうか?

スイス第3の街、バーゼルの魅力をたっぷりと堪能!

19世紀の象徴主義の画家アルノルト・ベックリン、そのふるさとであるバーゼルの魅力や見所を紹介してきました。ドイツで“父なる川”とも呼ばれるライン川に愛された街、バーゼルで充実した時間を過ごしてみてはいかがでしょうか?バーゼル大聖堂やバーゼル市庁舎などの見所は、きっとあなたの思い出を彩ってくれるはずです。また、3つの国の国境に建てられた記念碑『ドライレンダーエック』も、ぜひ訪れてみてください。細長いロケットのような形状をした美しいモニュメントです。

バーゼルの玄関口は、フランスのミュールーズにある『ユーロエアポート・バーゼル=ミュールーズ空港(EuroAirport Basel-Mulhouse-Freiburg)』です。バーゼルの市街地までは、バスでおよそ15分の距離です。バーゼルを拠点に、ドイツやフランスを周遊してみるのもおすすめですよ。3つの国の国境にある街バーゼル、多様性と国際色が根付いたこの街へ、ぜひ足を運んでみてください。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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