ケルビングローブ美術館・博物館:パイプオルガンと共に芸術作品を楽しめる美術館

ケルビングローブ美術館・博物館はスコットランドのグラスゴーにある美術館・博物館で、1901年に開館しました。ヨーロッパ有数の芸術作品が所蔵されているほか、著名な彫刻家たちの作品やパイプオルガンがあることもあって、非常にユニークな施設になっています。そんなケルビングローブ美術館・博物館の歴史とコレクションについて詳しく解説していきます。

■ケルビングローブ美術館・博物館とは

ケルビングローブ美術館・博物館があるスコットランドのグラスゴーは、イギリスのスコットランド南西部に位置する都市であり、ロンドン、ガーミンガム、リーズに次いでイギリスで第4位の規模を誇る都市です。また、ロンドンとエディンバラに劣らないほど観光客が多く、15世紀に創設された名門グラスゴー大学も有名です。学問や文化、観光で栄えている街と言えるでしょう。

そんなグラスゴーにあるケルビングローブ美術館・博物館は、1901年に創設されました。1888年にケルビングローブ公園で開催された万国博覧会の収益によって設立されることとなったこの美術館・博物館は、グラスゴーの伝統にのっとって赤砂岩でスペインのバロック風に造られており、ジョン・ウィリアム・ウィンプソンやE・J・ミルナー・アレンによって設計され、ジョージ・フランプトンやフランシス・ダーウェント・ウッドといった著名な彫刻家の作品が設置されています。またセンターホールには巨大なパイプオルガンが設置されています。

参考サイト:ケルビングローブ美術館・博物館

■ケルビングローブ美術館・博物館

ケルビングローブ美術館・博物館の所蔵品は、グラスゴーのマクラーレン美術館やケルビングローブ・ハウス博物館から移された品々のほか、世界の武器や武具、自然史のコレクションを所蔵していることで知られています。加えて、フランスの印象派やグラスゴー派の作品なども見ることができるでしょう。

そんなケルビングローブ美術館・博物館コレクションの主要な作品をご紹介します。

(Public Domain /‘Portrait of Alexander Reid’by Vincent van Gogh. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

・《画商アレキサンダー・リードの肖像》1887年フィンセント・ファン・ゴッホ

本作品は1887年に、ポスト印象派の巨匠フィンセント・ファン・ゴッホによって描かれた作品です。

本作品を描いたフィンセント・ファン・ゴッホは、1853年オランダ南部の北ブラバント州ズンデルトに生まれた画家です。1860年に村の学校に入学したのち、1864年にゼーフェンベルゲンの寄宿学校へ入学。1869年16歳の時には叔父に紹介してもらった美術商であるグーピル商会で働くようになったものの、下宿先の娘への恋に破れたことをきっかけに宗教に関心を抱くようになり、聖職者を志すようになります。1877年にはアムステルダムの著名な神学者であったヨハネス・ストリッケルのもとに身を寄せたものの、アムステルダム大学神学部への入学には失敗。聖職者になる道も閉ざされることとなり、ゴッホは苦境にたされていきました。
その後も伝道師を目指すなど、紆余曲折のあったゴッホが画家として活躍していくのは1885年に《ジャガイモを食べる人々》を発表したあたりからです。この頃からパリの画商たちから関心を持たれるようになり、徐々に制作活動を主軸としていくことになります。しかし順風満帆というわけではありません。ゴッホの精神状態は加速度的に悪化していき、1890年には37歳という若さで死去。弟テオも兄の後を追うように亡くなっています。

本作品は産業革命期に海運王と称されたウィリアム・バレルが収集したコレクションのうちのひとつです。バレル・コレクションは世界でも類を見ない質の高さを誇るコレクションと評価されています。本作品で描かれているのは、バレルにフランス美術を紹介した画商アレキサンダー・リードを描いたものであり、ゴッホ特有のタッチで描かれています。その渦巻くような表現はリードの芸術に対する情熱を表現しているようにみえます。

参考サイト:フィンセント・ファン・ゴッホ

写真はレプリカ

・《十字架の聖ヨハネのキリスト》1951年サルバトール・ダリ

本作品は1951年に、シュルレアリストの画家サルバトール・ダリによって描かれた作品です。

サルバトール・ダリは1904年にスペインのカタルーニャ地方、フィゲーラスに生まれた画家です。少年時代から絵画に興味を持っていたダリは、1922年になるとマドリードのサンフェルナンド美術学校に入学し、フェデリコ・ガルシーア・ルカやルイス・ブニュエルなどと知り合います。1925年になるとマドリードのダウマウ画廊で最初の個展を開催。1927年にはパリに赴き、パブロ・ピカソ、トリスタン・ツァラ、ルイ・アラゴン、アンドレ・ブルトンといったシュルレアリスムの中心メンバーと交流を深めるようになります。1929年に正式にシュルレアリストのグループに参加し、その独特の世界観を表現した作品を制作していきますが、ファシスト的な思想を持っていたこともあって、1938年にはグループを除名されてしまいます。

第二次世界大戦中は戦火を避けてアメリカに移住していましたが、1948年にはスペインに帰国します。その後制作活動に没頭するも、妻であるガラが1982年に亡くなると「自分の人生の舵を失った」と落胆し、制作活動から身を引いてしまいます。そして1989年には心不全で、85歳の生涯を閉じています。

本作品では、下部に船や猟師がいる湖が描かれ、その上部を磔刑に処せられたイエス・キリストが浮遊しているかのように描かれています。磔刑図は基本的にイエスの手が十字架に釘で打ち付けられ、血を流す姿で描かれるもの、本作品ではそうした要素は省かれています。また、上からキリストが見下ろすような印象的な構図は、16世紀スペインのカトリック神秘主義者である十字架のヨハネが描いたドローイングにインスピレーションを受けたといわれています。

ダリは本作品を描く際にハリウッドのスタントマンをモデルとして描いており、美しい肉体と湖が合わせて描かれることによって、独特かつ神秘的な表現がなされています。

参考サイト:wikipedia サルバドール・ダリChristofSaintJohnoftheCross

■おわりに

ケルビングローブ美術館・博物館はイギリス・グラスコーにある美術館であり、年間100万人以上が訪れる人気の施設です。グラスゴーの伝統にのっとって建てられた美術館の建物はもちろん、設置されている彫刻やセンターホールの巨大なパイプオルガンなど、美術館建築でも非常に見どころがあり、楽しめる美術館となっています。また自然史や武器の非常に質の高いコレクションを所蔵しているほか、ヨーロッパ美術史に残る傑作を所蔵していることでも知られており、アートファンなら必ず訪れておきたい美術館であるといえるでしょう。

グラスゴーはエディンバラから電車で40分と比較的アクセスが良い場所にあり、スコットランド観光の際には訪れる方が多い場所です。スコットランドを訪れた際には、ぜひ足を延ばしてみてください。

公式HP

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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