スコットランド国立肖像画美術館:スコットランド人の肖像画のコレクションを所蔵する美術館

スコットランド国立肖像画美術館はスコットランドのエディンバラにある美術館で、1889年に一般公開されました。スコットランド人を描いた肖像画のコレクションを所蔵していることで知られており、その充実度は世界でも類を見ないものとなっています。そんなスコットランド国立肖像画美術館の歴史とコレクションについて詳しく解説していきます。

■スコットランド国立肖像画美術館とは

スコットランド国立肖像画美術館はスコットランドのエディンバラにある美術館です。エディンバラはスコットランドの首都であり、イギリスの歴史においても非常に重要視されてきました。そんなエディンバラにあるスコットランド国立肖像画美術館は、1856年ロンドンにナショナル・ポートレート・ギャラリーが設立され大きな成功を収めたことがきっかけで設立されました。スコットランドでも同じく肖像画を専門とする美術館をつくろうという機運が高まり、ジョン・リッチー・フィンドレイが5万ポンドを負担することで、スコットランド国立肖像画美術館は生まれたのです。

参考サイト:wikipedia スコットランド国立肖像画美術館

■スコットランド国立肖像画美術館のコレクション

スコットランド国立肖像画美術館のコレクションは、約3,000点の絵画や彫刻、約25,000点の版画、線画、そして約38,000点の写真作品からなるもので、これは肖像画中心の美術館のコレクションとしては非常に規模が大きなものです。その多くがスコットランドの王侯貴族や歴史上の人物を描いた作品です。
そんなスコットランド国立肖像画美術館コレクションの主要な作品をご紹介します。

(Public Domain /‘Mary, Queen of Scots’byunknown. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

・《スコットランド女王メアリー》1610–1615作者不明

本作品は1542年にスコットランド女王に即位したメアリー1世を描いた作品です。作者は分かっていませんが、おそらくスコットランド宮廷で活躍していた画家のひとりと考えられています。

メアリー1世は1542年に、リンリスゴー城でジェームズ5世の第3子として生まれました。長男と次男が亡くなっていたため、ジェームズ5世が亡くなるとわずか生後6日にして王位を継承。その後はアンリ2世の王太子フランソワと結婚式を挙げ、フランス王妃となります。しかし1560年にフランソワ2世が16歳で病死したことで、メアリーはスコットランドに帰国。スコットランド女王として国を治めるものの、イングランド女王エリザベス1世の命により刑死することになってしまいます。

本作品はメアリー1世が処刑されてから20年以上の月日がたったのちに描かれた作品で、黒いドレスを身にまとい、赤いテーブルクロスがかけられた机に手を置くメアリーが描かれています。そのたたずまいは堂々としたもので、女王としての貫禄を感じさせます。

参考サイト:wikipedia メアリー(スコットランド女王)

(Public Domain /‘James Hamilton, 1st Duke of Hamilton, 1606 -1649. Royalist’by Daniel Mytens. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

・《初代ハミルトン公爵ジェームズ・ハミルトンの肖像》1629年ダニエル・マイテンス

本作品は1629年に初代ハミルトン公爵ジェームズ・ハミルトンを描いた作品で、イングランドで肖像画家として活躍したダニエル・マイテンスによるものです。

ダニエル・マイテンスは1590年ごろオランダのデルフトに生まれた画家で、デン・ハーグで教育を受けたと考えられています。マイテンスの一家は芸術家の家系であり、兄のイサーク・マイテンスや息子のダニエルも画家として活躍しました。1618年にはロンドンに渡り、ジェームズ1世やその息子の肖像画を描き宮廷画家としての地位を築き上げていきました。しかし、1632年にアンソニー・ヴァン・ダイクが来ると次第に人気が落ちはじめ、主席宮廷画家の座を追われ1634年ごろにはオランダに帰国することになってしまいます。

本作品で描かれたジェームズ・ハミルトンは、1606年にスコットランド貴族第2代ハミルトン公爵ジェイムズ・ハミルトンの息子です。オックスフォード大学のエクセター・カレッジで学んだ後、1625年に父親が亡くなったことにより、スコットランドの貴族爵位ハミルトン国笏やイングランドの貴族爵位ケンブリッジ伯爵を継承。清教徒革命の際には王党派に協力し、第二次イングランド内戦で議会派のオリバー・クロムウェルに敗退。反逆罪にかけられることとなり、42歳でその生涯を閉じることとなります。

本作品で描かれたハミルトン公爵は杖を持ち、落ち着いた色合いでありながらその仕立ての良さがわかる衣装に身を包んでおり、手には黒い帽子を携えています。公爵位を受け継いでからまだそれほど立っていないころに描かれた作品であり、公爵自身も若々しい姿で描かれています。その後ハミルトン公爵には悲劇の運命が待っていることになるのですが、この時それをだれが予想できたでしょうか。

参考サイト:wikipedia ダニエル・マイテンスジェイムズ・ハミルトン(初代ハミルトン公爵)

・《自画像》1642年ジョージ・ジェムソン

本作品はスコットランドを代表する肖像画家、ジョージ・ジェムソンが描いた自画像です。ジョージ・ジェムソンは1587年にスコットランド北東の都市アバディーンに生まれた画家で、アントウェルペンにあったルーベンスの工房で、同じくルーベンスの弟子であったファン・ダイクとともに修業を積んだことが分かっています。43歳までアントウェルペンで生活し、その後エディンバラに移住すると行政長官のお抱え画家として王侯貴族の肖像画を描くようになり、徐々に認められるようになっていきました。

本作品ではジェムソンは左端でパレットを持ち、ジェムソンが描いたと思われる作品を指さす姿で描かれています。背景にはジェムソンが手掛けたと思われる肖像画の他に大きな神話画がかけられていますが、ジェムソンがそうした作品を制作したという記録は残っていません。

参考サイト:wikipedia ジョージ・ジェムソン

■おわりに

スコットランド国立肖像画美術館は、スコットランドの人々を描いた肖像画のコレクションを所蔵している美術館であり、そのコレクションの規模はロンドンのナショナル・ポートレート・ギャラリーに匹敵するものです。エディンバラを訪れた際には、ぜひ足を延ばしてみてください。

公式:https://www.nationalgalleries.org

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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