カールスルーエ州立美術館:後期ゴシックとドイツ・ルネサンスの傑作を所蔵する美術館

カールスルーエ州立美術館はドイツのカールスルーエにある美術館で、1846年に創設されました。14世紀から19世紀の作品を中心に所蔵しており、特に後期ゴシックとドイツ・ルネサンスの傑作を所蔵していることで知られています。そんなカールスルーエ州立美術館の歴史とコレクションについて詳しく解説していきます。

カールスルーエ州立美術館とは

カールスルーエ州立美術館は、ドイツのカールスルーエにある美術館です。カールスルーエはバーデン=ヴュルテンベルグに属する都市で、同州の中ではシュトゥットガルトに続く第二の都市として知られています。ライン川の近くに位置していることもあり、カールスルーエは古くからバーデン地方の政治的中心地として発展してきました。

カールスルーエという街の名称は「カールの休息所」を意味しています。「カール」とは18世紀のバーデン=ドゥルラハ辺境伯であるカール3世ヴィルヘルムにちなんだものです。カール3世の居城は、大同盟戦争の際フランス軍によって破壊されてしまい、1698年から新しい場所へ城と街を再建することになりました。その際に選ばれたのが現在のカールスルーエの地であり、1715年には宮殿の礎石がおかれ、計画的都市がつくられはじめました。第二次世界大戦では甚大な被害を受けたものの戦後復興を遂げており、中世からの計画都市の名残を残す街として注目が集まっています。

そんなカールスルーエにあるカールスルーエ州立美術館の建物は1836年から1846年にかけて建造されました。段階的に建設がすすめられたものの、ドイツで特に古い建造物のうちのひとつに数えられており、歴史的な価値も非常に高いとされています。古くは宮廷の芸術家たちのために用いられ、第二次世界大戦の際には建物自体が大きな被害を受けたものの、戦後に改修され再オープンしました。

公式

カールスルーエ州立美術館のコレクション

コレクションの基盤となっているのは、貴族のカロリーネ・ルイーゼが入手した17世紀から18世紀にかけてのフランスとオランダの絵画205点です。これらを含めた本館の常設展では、約800点の絵画と彫刻が展示されており、後期ゴシックからルネサンス期の作品を見ることができます。ほか、16世紀のオランダ・フランドル絵画、17世紀から19世紀までのフランス絵画、19世紀のドイツ絵画と彫刻なども展示されています。また、定期的に企画展も行われています。

そんなカールスルーエ州立美術館のコレクションには、どのような作品が含まれているのでしょうか。主要な作品をご紹介します。

(Public Domain /‘Anbetung des Kindes vor nächtlicher Landschaftmit den Heiligen Hieronymus, Maria Magdalena und EustachiusbyPaolo uccello. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

《聖人たちの礼拝》1436年パオロ・ウッチェロ

本作品は1436年に制作された作品で、国際ゴシック様式とルネサンスの過度期に活躍した画家パオロ・ウッチェロによって描かれた作品です。

ウッチェロは1397年ごろ、プラトヴェッキオに生まれた画家で、生家は床屋と外科医を営んでいたといわれています。幼いころから芸術の素養を見せていたヴェッキオは、1412年、ロレンツィオ・ギルベルティの工房に弟子入りし、修業を積むことになります。ギルベルティは初期ルネサンスを代表する彫刻家として知られており、教育者としてもすぐれた人物で、ドナテッロやミケランジェロ・ディ・バルトロメオといったルネサンスを代表する芸術家たちがギルベルティの工房で学んでいました。

ウッチェロ『ジョン・ホークウッド騎馬像』サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂(フィレンツェ)

ウッチェロはそんなギルベルティの工房で仲間たちと競い合いながら徐々に頭角を現し、1425年にはヴェネツィアのサン・マルコ聖堂のモザイク装飾の仕事に従事。その後も教会や大聖堂のステンドグラスやフレスコ画の作品を制作していきました。晩年には《サン・ロマーノの戦い》を制作したことが分かっています。1475年12月10日に亡くなってサント・スピリト教会に埋葬されました。

本作品はそんなウッチェロによって描かれた作品で、上部には幼児イエスに向かって祈るマリアと、眠りにつくヨセフの姿が描かれています。一方、下部には跪いて祈りを捧げる聖ヒエロニムス、マグダラのマリア、聖エウスターキオの姿が描かれています。

上部左寄りに描かれているヤシの木は、殉教の象徴です。一番上に左右対象に描かれている6人の天使は、後期ゴシック様式のモチーフやロレンツォ・ギベルティの装飾的な表現を想起させます。下半分に描かれている3人の人物は異なる複雑な角度で描かれており、上部とは切り離されている印象を与えます。

《水差しと桃のある静物》1728年ジャン・シメオン・シャルダン

本作品は1728年に制作された作品で、フランスを代表する静物画家ジャン・シメオン・シャルダンによって描かれました。

13:57-『水差しと桃のある静物』

シャルダンは1699年にフランスのパリに生まれた画家です。歴史画で有名なピエール・ジャック・カーズの工房やコアペルの工房で学び、1728年には王立絵画彫刻アカデミーの正会員となります。1731年にはサロンに出品を開始し、1733年ごろからは風俗画の作品を描くようになっていきました。

自画像を切手にしたもの

当時の絵画ヒエラルキーでは歴史画や宗教画が上位に置かれており、風俗画は下位にあたるものとされていました。しかしシャルダンの静謐な表現の風俗画は王侯貴族たちの評判を得るところとなり、1757年にはルーブル宮殿にアトリエ兼住居を授かる名誉を受けています。また国内外の王侯貴族からも多数の依頼を受けています。特にロシアのエカチェリーナ2世はシャルダンをことのほか気に入り、サンクト・ペテルブルグにあるアカデミーのための建物の装飾画を注文したほどでした。

そんなシャルダンによって描かれた本作品は、彼が王立絵画彫刻アカデミーの会員となった1728年に描かれました。そびえ立つ水差しと赤い頬のような桃に、明るい光が降り注いでいる様子が描かれています。動かないはずの対象が神秘的で生き生きとした生命力に満ちているかのような雰囲気で描かれており、シャルダンの熟練の技が最も美しく発揮されているのがわかります。

おわりに

カールスルーエ州立美術館はドイツのカールスルーエにあり、初期のドイツ美術から現代にいたるまで幅広い時代の作品を所蔵している美術館です。第二次世界大戦の際には甚大な被害を受けたものの戦後復興し、ドイツ美術の傑作を所蔵する美術館として国際的にも高い評価を受けています。ドイツを訪れた際には、ぜひ足を延ばしてみてはいかがでしょうか。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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