ルートヴィヒ美術館:国際的にも高い評価を受ける近現代美術コレクションを所蔵する美術館

ルートヴィヒ美術館はドイツのケルンにあり、1976年に創設された比較的新しい美術館です。ヴァルラフ・リヒャルツ美術館の近現代美術コレクションを分離する形で創設された美術館で、パブロ・ピカソやロシア・アヴァンギャルド、アメリカのポップアートなどの作品を所蔵しています。そんなルートヴィヒ美術館の歴史とコレクションについて詳しく解説していきます。

ルートヴィヒ美術館とは

ルートヴィヒ美術館はドイツのケルンにある美術館で、1976年に創設されました。ケルンはベルリン、ハンブルグ、ミュンヘンに次いで4番目に大きな都市であり、市内にはケルン大聖堂や欧州でも特に歴史のある大学の一つ、ケルン大学があることでも有名です。

ヴァルラフ・リヒャルツ美術館

そんなケルンにあるルートヴィヒ美術館は、ヴァルラフ・リヒャルツ美術館から近現代美術コレクションを分離する形で創設されました。ヴァルラフ・リヒャルツ美術館は1824年にケルンの大司教をつとめたフェルディナンド・フランツ・ヴァルラフが遺言により、自邸と収集した美術品をケルン市に寄贈したことで開館した美術館です。徐々にコレクションが増加していき、ヴァルラフ・リヒャルツ美術館だけでは所蔵・管理が難しくなってしまったため、新しく美術館を創設する計画が持ち上がりました。

そうした動きを受けて1976年にはルートヴィヒ美術館が創設され、弁護士ヨーゼフ・ハウブリッヒが1946年5月2日にケルン市へ寄贈したコレクションを中心に美術館が運営されることとなりました。その後もコレクションは増加しており、現在では国際的にも高い評価を受けるまでになっています。

ルートヴィヒ美術館

ルートヴィヒ美術館のコレクション

ルートヴィヒ美術館のコレクションは近現代美術、特にポップアートや抽象絵画、シュルレアリスムといった作品を所蔵しています。パブロ・ピカソのコレクションについてはヨーロッパで最大級、世界で3番目に充実した美術館といわれており、そのほかにもアンディ・ウォーホルやロイ・リキテンスタインの絵画を多数所蔵しています。

そんなルートヴィヒ美術館のコレクションには、どのような作品が含まれているのでしょうか。主要な作品をご紹介します。

《ペルピニャン駅》1965年サルバトール・ダリ

本作品は1965年にシュルレアリスムの巨匠サルバトール・ダリによって描かれた作品です。

(Public Domain /‘Salvador Dali1965’Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

ダリは1904年スペインのカタルーニャ地方、フィゲーラスに生まれた画家で、父親は裕福な公証人サルバドール・ダリ・イ・クシ、母親も裕福な商家出身の恵まれた家に育ちました。幼いころから芸術に関心を持っていたダリは1922年にマドリードのサン・フェルナンド美術学校に入学。フェデリコ・ガルシーア・ロルカやルイス・ブニュエルなどと知り合い、芸術への興味を深めていきました。

(Public Domain /‘Salvador Dalí 1939’Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

個展を開くなど画家としての歩みを確実に進めていたダリは、1929年正式にシュルレアリストのグループに参加し、その独特の世界観を表現した作品を制作していくようになります。しかしファシスト的な思想を持っていたこともあって、1938年にはグループを除名。1939年からはより商業的な作品を制作していくようになります。それを見たアンドレ・ブルトンは「ドルの亡者」というあだ名をダリに付けるほどでした。第二次世界大戦中は戦火を避けてアメリカに移住したものの、1948年には帰国。その後も制作を続けますが、1982年に妻ガラを失うと落胆し絵筆を持たなくなり、1989年には心不全で85歳の生涯を閉じることとなります。

4:02-『ペルピニャン駅』

そんなダリによって描かれた本作品のタイトルは、《“ポップ、オップ、月並派、大いに結構”と題する作品の上に、反重力状態でいるダリを眺めるガラ、その画面には冬眠の隔世遺伝の状態にあるミレーの晩鐘の悩ましげな二人の人物が認められ、前方にひろがる空は、全宇宙の集中するペルピニャン駅のまさに中心で、突如としてマルトの巨大な十字架に変形するはずである》というタイトルで、世界一長い絵画のタイトルといわれています。単に『ペルピニャン駅』という名前でよく知られています。

ダリはスペインとの国境に近いフランスの都市ペルピニャンの鉄道駅を、「宇宙の中心」であると宣言するほどに特別な地とみなしていました。中央上部には、こちらに向かってくる鉄道の車体がどこからともなく現れており、シュルレアリスムを強調しています。左側には労働を表す麦の袋を積む夫婦と、尊敬の念を表す瞑想的なポーズの男性が描かれており、右側には欲望を表す男女、喪に服することを表している女性が描かれています。

《2人のエルヴィス》1963年アンディ・ウォーホル

本作品は1963年にポップアートの巨匠アンディ・ウォーホルによって描かれた作品です。

0:18-『2人のエルヴィス』ルートヴィヒ美術館所蔵品は白黒

ウォーホルは1928年、チェロスロバキア共和国のゼムプリーン県から、ペンシルべニア州のピッツバーグへ移民してきた両親のもとに生まれました。地元の高校に通った後、カーネギー工科大学に進学、広告美術を学び、ニューヨークで『ヴォーグ』や『ハーパース・バザー』といった雑誌の広告やイラストの仕事を手掛けるようになります。1952年には新聞広告美術の部門で「アート・ディレクターズ・クラブ賞」を受賞、商業デザイナー・イラストレーターと有名な存在になっていきました。

1960年代からは身近にあった、キャンベルスープの缶やドル紙幣などをモチーフとした作品を描くようになり、ポップアートの旗手として注目されるようになっていきました。ポップアートとは、大量生産や大量消費社会を、これまで芸術作品に描かれてきた山や海などに変わる新しい風景として描く試みのことを指し、難解な抽象表現主義に飽きてきていた人々に大きな驚きを与えました。

本作品はそうしたウォーホルのポップアートを代表する作品で、シルクスクリーンによって制作されました。宣伝用の写真から引用したと思われる歌手の2枚の画像を重ね合わせて、ストロボ効果を生み出しています。素材は金属のような光沢を持ちながらも実際は模造品であることから、ハリウッドの表面性と華やかさを暗示しています。

本作品で描かれるエルヴィス・プレスリーはウォーホルが好んで描いたモチーフで、そのほかにもエリザベス・テイラーやマリリン・モンロー、毛沢東といった近現代史を代表する著名人たちの作品が現存しています。プレスリーはシャツとジーンズを着て、こちらに銃を向けるきわめてアメリカ的なイメージで描かれています。ウォーホルはエルヴィスと交流があったことでも知られており、エルヴィスはウォーホルのファクトリーを訪れることもあったといわれています。

おわりに

ルートヴィヒ美術館はヴァルラフ・リヒャルツ美術館から近現代美術コレクションを分離する形で創設された美術館で、現在では質の高いコレクションを所蔵しているとして非常に高い評価を受けています。ケルンを訪れた折には、ぜひ足を延ばしてみてはいかがでしょうか。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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