マルケ国立美術館:世界遺産・ウルビーノ歴史地区にある美しい宮殿を使用した美術館

マルケ国立美術館は、世界遺産に登録されたウルビーノ歴史地区にある美術館です。モンテフェルトロ家のフェデリーコ公が建てたドゥカーレ宮殿の建物をそのまま使用しており、多くの人々が居住してきた歴史も感じることができます。そんなマルケ国立美術館とその所蔵品について詳しく解説していきます。

マルケ国立美術館とは

マルケ国立美術館はイタリア・ウルビーノ地方にある美術館で、元々はドゥカーレ宮殿として知られていました。ドゥカーレ宮殿はルネッサンス期に建てられた宮殿の中でも特に美しいものの一つとされており、その建築技術にも注目が集まっています。

マルケ国立美術館のあるウルビーノ歴史地区は、1998年に世界遺産(文化遺産)に登録され、年間を通して多くの旅行者が訪れます。

モンテフェルトロ家の名君フェデリーコ公が建築を命じ、4人の建築家が関わって約100年後に完成しました。最もモンテフェルトロ家が栄えていた時代には、召使い・調理人・従者などを含めて500名以上もの人がこの宮殿で暮らしていたと伝えられています。

城壁に面している2つの塔が有名ですが、この宮殿の魅力は見る角度によってその表情が変化することにあります。正面から見るとすっきりした印象ですが、横や裏側から見てみると複雑なデザインで構成されていることが良く分かります。

館内に入ると扉部分の寄木細工やレリーフなど、細部の繊細な装飾も素晴らしく、見どころにあふれています。また、かつて厨房や浴室として使用されていた地下空間も見学することができるので、ちょっとした探検気分が味わえるでしょう。

美術館としてのメインは1階部分で、6つのテーマに分かれており1テーマごとに3~7部屋の展示室があります。

マルケ国立美術館

マルケ国立美術館の所蔵品

マルケ国立美術館では、13世紀~18世紀頃の絵画・彫刻・陶器・家具など幅広い芸術作品が所蔵されています。

そんなマルケ国立美術館のコレクションには、どのような作品が含まれているのでしょうか。主要な作品を3点ご紹介します。

(Public Domain /‘Flagellazione’by Piero della Francesca. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

《キリストの鞭打ち》1459年~1460年ピエロ・デッラ・フランチェスカ

本作品は1459年~1460年に、初期ルネッサンスの巨匠ピエロ・デッラ・フランチェスカによって描かれました。

ピエロ・デッラ・フランチェスカは、イタリア・トスカーナ州のボルゴ・サンセポルクロに靴職人の子として生まれました。修行時代は数人の画家の弟子・助手を務め、その後1439年頃にフィレンツェに移り住みました。フィレンツェではドメニコ・ヴェネツィアーノと共に多くの仕事をしていたと伝えられています。

フランチェスカの作品の特徴は、数学や幾何学的な視点を絵画に取り入れたことで、美術史上で最もその技法に重点を置いた画家といえます。「算術論」「遠近法論」「五正多面体論」という3作の書を出版したことでも有名です。

本作品はキリストがローマ人に鞭打ちされている場面「キリストの受難」を描いていますが、本来中央にいるべきキリストが奥まった位置にいて、手前右側には話しこむ3人の人物が配置されています。この不思議な構図によって「謎のある小さな絵画」とも呼ばれており、解釈には諸説があります。
また、手前の3人が誰なのかという問題に答えは出ておらず、様々な仮説がたてられています。

はっきり謎が解明されていないことが、この絵画の不思議な魅力を引き立てています。ぜひ実際に見てどんな解釈ができるか考えてみましょう。

『無口な女』が印刷された切手

《無口な女(ラ・ムータ)》1505〜1509年頃ラファエロ・サンティ

本作品は1505〜1509年頃にルネッサンス期の有名画家、ラファエロ・サンティによって描かれました。

ラファエロ・サンティは、1483年にウルビーノ公国で生まれました。父親が宮廷画家であったため、ラファエロ自身も幼い頃は宮廷によく出入りしていました。しかし、両親が相次いで亡くなったことから孤児となり後見人の伯父の元で育ちます。

やがて修行期間を経て独立したラファエロには次々に制作依頼が入りました。しかし、フィレンツェでレオナルド・ダ・ヴィンチらの作品に衝撃を受け、再度修行に入ります。その頃に画風が変化し、より複雑なポーズで生命力溢れる人物画を描くようになりました。

1508頃から工房を作り、弟子や助手と共に作品を創るようになりました。ラファエロの作品とはいえ他の人の手が加わったため、クォリティが下がったとも言われています。37歳という若さで亡くなりますが、非常に多作の画家でした。

本作品が描かれた1505~1509年頃、ラファエロはレオナルド・ダ・ヴィンチの作品を熱心に研究していました。そのため、本作品のポーズは《モナ・リザ》に強く影響を受けていると考えられています。

(Public Domain /‘Città Ideale’by Pittore dell’Italia centrale. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

《理想都市》1480年~1490年か中部イタリアの画家

本作品はルネッサンス建築史のなかでも有名な絵画です。1480年~1490年に描かれたと考えられていますが、正確な制作年・作者は判明していません。作者の可能性があるのは、ピエロ・デッラ・フランチェスカやルチアーノ・ラウラーナであるされてきましたが、現在ではどちらの説も否定されています。

本作品は、注文主が想定した都市統治の理想図が描かれているため《理想都市》と名付けられています。中央に円形の神殿があり、その周囲を貴族の宮殿が囲んでいます。画面奥には田園が見えます。高いデザイン性と古典的な建築要素があることから、ルネサンス建築史の視点からも注目されてきた作品です。

マルケ国立美術館には、この《理想都市》の世界を再現した模型も展示されていますので、絵画と見比べることでさらに理解を深めることができます。

おわりに

マルケ国立美術館は、世界遺産・ウルビーノ歴史地区にあります。もともとはドゥカーレ宮殿として知られており、その美しい外観は周辺を散策していても目を引きます。美術品はもちろん宮殿建築・装飾にも見どころの多い美術館です。イタリアを訪れる機会がありましたら、一度足を延ばしてみてはいかがでしょうか。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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