ローマ現代アート美術館:ローマでも珍しい現代アートを中心にコレクションする美術館

ローマ現代アート美術館はローマ市内にある美術館で、もともとはビール工場だった建物を改築して使用しています。略して「MACROマクロ」とも呼ばれており、スタイリッシュでモダンな建物が印象的です。20世紀の近代・現代アートから新進気鋭のアーティストまでコレクションしており、ローマ南部・テスタッチョには分館である「MACRO Testaccioテスタッチョ」もあります。そんなローマ現代アート美術館の歴史と所蔵物について詳しく解説していきます。

ローマ現代アート美術館とは

ローマ現代アート美術館はローマ市内のピア門近くにある市立美術館です。通称で「MACROマクロ」と呼ばれています。

その歴史は、1883年に「ローマ市立モダン・コンテポラリーアートギャラリー」として創設されたことから始まります。重要なイタリア人アーティストの作品を中心にコレクションしていましたが、時代の移り変わりとともに美術館の存在も危ぶまれるようになります。

19世紀の終わりから20世紀はじめにかけてのイタリアは、ムッソリーニ政権の台頭、第二次世界大戦の勃発などが続き、混乱と苦難に満ちていました。当然ギャラリーの運営も困難を極め、コレクションの一部が散乱する事態に陥ります。しかし、スタッフは散乱した作品の再収集に力を注ぎ、ギャラリーを守り続けました。

1999年にペローニ社の旧ビール工場に移転して新創設され、2000年からは新たな展示スペースの拡張工事およびリニューアル計画がなされます。フランス人建築家オディール・デックを中心に2004年から建設を始め、一般公開されたのは2010年でした。「ローマ現代アート美術館」と名づけられたのは建設途中の2002年のことです。MACROとして、スタイリッシュなデザインと効果的な赤の差し色でモダンな雰囲気に生まれ変わった美術館は、建物全体を現代アートとして楽しむことも出来ます。館内にはビール工場が稼働していたころの様子や従業員の写真が展示されているコーナーもあります。

MACRO Testaccioマクロ・テスタッチョ

また、ローマ南部のテスタッチョには、19世紀にと畜場として使用されていた巨大な建物を改築・改装して、分館「MACRO Testaccioマクロ・テスタッチョ」が造られました。別名で「MACROFutureマクロ・フューチャー」とも呼ばれています。趣のある空間は現代アーティストたちに好まれ、特別展示やファッションショーなどの華やかなイベントが不定期で開催されています。

MATTATOIO

ローマ現代アート美術館の所蔵品

ローマ現代アート美術館のコレクションは、前身の「ローマ市立モダン・コンテポラリーアートギャラリー」時代に集められた作品が基盤となっています。20世紀のアートシーンで重要な役割を果たしたイタリア人アーティストの作品を多数所蔵していましたが、イタリアの混乱期(19世紀末期~20世紀初頭)にはコレクションが各地に散乱し、収集は一旦中止されていました。
20世紀末期には失った作品の再収集を始め、21世紀には新たなコレクションを集めるようになりました。すでに著名なアーティストはもちろん、これからの活躍が楽しみな新進気鋭のアーティストの作品も積極的にコレクションしています。

そんなローマ現代アート美術館のコレクションから1つの作品をご紹介します。

《アルテ・ポーヴェラの作品》

アルテ・ポーヴェラとは、第二次世界大戦後にイタリアで始まった美術運動です。

前衛的な手法で美術作品を作っていた若手アーティストが集まり、イタリア内外で「アルテ・ポーヴェラ」という名の展覧会を行っていました。日本語に訳すと「貧しい芸術」という意味になります。批評家のジェルマーノ・チェラントは「アルテ・ポーヴェラ」の真逆にあるものとして、オプ・アートやポップ・アートを「豊かな芸術」と設定しました。

作品の特徴としては、絵の具・キャンバス・ブロンズなどの伝統的な画材を使わず、自然界にある岩石や植物、むきだしの配線や部品のような工業製品を用いていることが特徴です。極力その素材に手を加えない傾向があり、従来の芸術作品とは異なる野性味や無機質さが感じられます。

ローマ現代アート美術館の企画展

ローマ現代アート美術館では従来のコレクションの展示だけでなく、期間限定の特別企画展を行っています。
その中から、話題になった主な企画展を2つご紹介します。

《クロス・ザ・ストリート(CROSS THE STREETS)》2017年

2017年に行われた本企画展は、ストリートアーティストの作品にスポットをあてた展覧会です。

近年ストリートアートの人気が高まり、大きな美術館でも相次いで展覧会が行われています。本企画展では、アンダーグラウンドなジャンルとして生まれたストリートアートのムーブメントと歴史に注目し、多角的な魅力を発信しました。

ストリートアートは、若年層・マイノリティ・グローバルといったキーワードのもとに集まった人々をつなぐカウンターカルチャーです。そのため表現方法も多岐にわたり、その斬新さが芸術家・デザイナー・映像ディレクターたちに支持されています。本企画展でもグラフィティ・立体アート・フォトグラフィー・映像など様々なジャンルの芸術作品が集まりました。

《マクロ・アジーロ(MACRO ASILO)》2018年~2019年末

本企画展は、イタリア・ローマの地でコンテンポラリーアートの認知度をアップするために企画されました。

イタリアの中でもローマという場所は、バチカン美術館にコロッセオ、古代の遺跡や有名な芸術作品にあふれていて、現代アートの入る隙が無いと言われています。ローマ現代アート美術館もローマ市内の美術館の中では歴史が浅く、改築直後に増えた来館者も次第に減少していきました。

そんな状況を打開するために新しいプロジェクトとしてスタートしたのが「マクロ・アジーロ(MACRO ASILO)」です。企画展というより、「入場無料で」行くたび新しい作品・パフォーマンスを見ることができる「MACRO ASILO」という美術館が期間限定でオープンしたと言った方がわかりやすいかもしれません。現代アートと美術館を公共に解放すること、市民とアートの間に新たな関係を築くことを目的に、展示物やイベント、レイアウトが考えられました。
館内の一角では、毎週4組のアーティストが作品を創る様子を一般公開するという企画が行われていました。アーティストは館内に用意されたガラス張りのアトリエの中で、火曜~土曜の5日間で創作し、最終日の日曜日に完成した作品を展示します。アーティストたちの独創的な手法を直接目にすることが出来ますし、毎日通うことで作品の進化を見届けられる面白い試みとして注目を集めました。

マクロ・アジ―ロ

おわりに

ローマ現代アート美術館(MACROマクロ)は、ローマにある近代・現代アートを専門とした美術館です。近年の改築ではスタイリッシュでモダンな雰囲気になり、建築物としても見応えがあります。不定期で行われている企画展では、今のアート界で気を吐く若手アーティストの作品を鑑賞することができるでしょう。ローマには古代の芸術作品にふれる美術館が多いですが、たまには現代アートの世界に飛び込んでみてはいかがでしょうか。

ローマ現代アート美術館

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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