ティッセン=ボルネミッサ美術館:世界最高峰の個人コレクションが楽しめるマドリードの美術館

ティッセン=ボルネミッサ美術館は、スペインのマドリードにある1992年にオープンした美術館で比較的新しい美術館です。13世紀から20世紀にかけての芸術を楽しむことが可能で、一つの美術館で7世紀に渡る美術作品を鑑賞することが出来ます。美術館の建物は、19世紀の貴族の邸宅であったビジャ・エルモサ宮殿を使用し、当時の貴族の生活を感じることができます。それでは、どのような美術館なのか見て行きましょう!

ティッセン=ボルネミッサ美術館とは?

1992年にオープンした比較的歴史の浅い美術館ですが、収蔵品は13世紀から20世紀に渡り7世紀に渡る美術品を展示しています。美術館の近隣にはプラド美術館、ソフィア王妃芸術センターがあり、三ヶ所を回る事で世界最高峰の美術作品を堪能する事ができ、芸術の黄金地帯として知られています。三施設共通入場券もあるので確認しておきましょう。

収蔵品は、元々は鉄鋼系財閥のティッセン=ボルネミッサ男爵家のコレクションでした。個人のコレクションでありながら最高峰の逸材が揃っています。古典絵画を中心に、父ハインリヒ・ティッセン=ボルネミッサ男爵が、19世紀以降の現代の作品を息子のハンス・ハインリヒ・ティッセン=ボルミネッサ男爵が収集しました。男爵婦人も著名なコレクターで、現在も美術館の運営の一部に携わり、自らもコレクションを寄贈しています。作品は、時代順に合わせて展示されているので芸術の流れを理解しながら鑑賞する事が出来ます。

ティッセン=ボルネミッサ美術館の収蔵品

個人のコレクションとは思えない程の膨大な収蔵品を展示しており、その数は約1000点にのぼると言われています。オランダ絵画やフランドル絵画、印象派後期印象派と言った多岐に渡る作品が並んでおり、アメリカの作品なども展示されているため、ヨーロッパ芸術とはまた異なる嗜好も楽しむことができます。絵画を眺めるだけでも当時の人々の生活の様子が浮かび、芸術のみならず人々の変遷も感じる事が出来ます。

果たしてどのような作品があるのでしょうか?早速見て行きましょう!

(Public Domain /‘Portrait of Giovanna Tornabuoni’byDomenico Ghirlandaio. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

〈ジョヴァンナ・トルナブオーニ〉1488年〜1490年ドメニコ・ギルランダイオ

こちらは1488年から1490年にかけて、ドメニコ・ギルランダイオによって描かれ、ジョヴァンナ・デッリ・アルビッツィという女性を描いた作品です。

イタリアのフィレンツェを中心に活躍した画家で宗教画を得意としていましたが、この絵のように人物や日常生活といった現実の風景も多く描きました。ミケランジェロの師としても知られ、父が彫金家であったため早くから芸術に慣れ親しんでいました。絵画に宗教性のみならず世俗性も求めた画家としても知られています。大胆な輪郭線と独特な色使いを巧みに使う事で、表情や雰囲気を鮮明に描き出す事を得意としていました。

『ジョヴァンナ・トルナブオーニ』は、ジョヴァンナ・デッリ・アルビッツィをモデルとした作品で彼女が亡くなったとされる『1488』の数字が刻まれており、彼女の死後に完成した物と考えられています。この絵画は見る人に彼女の気品高さを感じさせ、彼女がまるで生きているかのように錯覚させます。着用しているベストから高貴な家柄の女性である事が分かり、絵画が描かれた時代の生活も感じることができます。

(Public Domain /‘Seated Peasant’byPaul Cézanne. Image viaThe Metropolitan Museum of Art)

〈農夫の肖像〉ポール・セザンヌ

こちらは、ポール・セザンヌによる作品で農夫を描いています。ポール・セザンヌは近代絵画の父とも呼ばれ、現代芸術への道筋を作った人物です。とはいえ、順風満帆の画家生活を送っていた訳ではなく、細々と活動しながらサロンへの入選と落選を繰り返していました。晩年になり少しずつ彼の作品は評価されるようになりますが、彼が最も評価されたのは、皮肉にも彼が亡くなってからのことでした。

彼は時の権力者よりも日常にある物や、農夫などの人々を多く描きました。彼の作品からは日常と共に何か非日常的なものを感じることができます。まるで、その日常が永遠に変わらないことは無いのだと主張しているように見えます。彼のこのような作品の描き方は、後にキュピズムへと流れ、一つの技法として考えられるようになりました。彼が思うように評価されなかったのは、このような作品の描き方を人々が受け入れるまでに時間がかかったからなのかもしれません。

(Public Domain /‘View of Vessenots Near Auvers’byVincent Willem van Gogh. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

〈オーヴェルのレ・ヴェスノ〉1890年フィンセント・ファン・ゴッホ

こちらは、有名なゴッホの作品です。
フィンセント・ファン・ゴッホは、誰もが一度は聞いた事がある世界的にも有名な画家の一人です。初期の彼の作品は暗い色使いをしたものが主でしたが、パリに移ってからはそれまでの色使いとは違った明るい色使いの作品へと変化していきました。精神的な病気を患っていたともいわれ、名声を得ながらも人間としては複雑な心理が渦巻いている人物であったと言われています。

『オーヴェルのレ・ヴェスノ』は大変美しい緑を中心に山や家を描いており、当時の情景を目に浮かばせる事が出来ます。美しい自然に私たちは、生命力の強さと新しい命へ流れ行く自然の逞しさを感じることができます。複雑な心境を抱えていた人物が描いた作品とは思えないほど、明るい色調によって鑑賞しやすい絵画となっています。

ゴッホは生前に評価される事は少なかったとされていますが、現在では表現主義の先駆けとなった画家として高い評価を得ています。大胆で力強いタッチにより自身の内面性を伝えると共に、明るい色調を付ける事で感情の起伏を表現しています。自然を強く愛しその姿と自己の内面を重ね合わせた雄大な作品を描きました。

終わりに

こちらは個人のコレクションでありながら、多くのヨーロッパ芸術を鑑賞する事が出来る大変価値ある美術館です。芸術と関わり合う事は、先人達の生活も知ることができ、各時代の人々の様子を知るのも良いのではないでしょうか?

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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