パリ装飾美術館:中世から現代までの装飾芸術に特化した希少価値の高い美術館

パリ装飾芸術美術館はフランスのパリにある美術館で、1905年に開館しました。中世から現代までの装飾美術作品が15万点ほど所蔵され、年代別に分けられたコレクションからは装飾美術の歴史が感じられます。そんなパリ装飾芸術美術館の歴史と所蔵品について詳しく解説していきます。

パリ装飾芸術美術館とは

パリ装飾芸術美術館はフランスのパリにある美術館で、1905年に開館しました。リヴォリ通り沿いのルーブル宮のマルサン翼にあり、ルーブル美術館の隣に建てられています。また、同じ建物内にはモードとテキスタイル美術館や広告博物館も入っています。1897年に装飾美術組合が建物を使用することを認められ、1904年に付属の図書館が開館、1905年に装飾美術館が開館することとなったのです。

100年以上の歴史があるパリ装飾芸術美術館ですが、約10年間内装工事と展示作品の修復で閉館していたこともあり、2006年9月15日にリニューアルオープンしました。このリニューアルで展示作品を6000点に絞り込み、より芸術作品の数々を楽しめるよう展示方法や見学ルートなどの改良を行いました。エントランスの吹き抜けには光が入り込み、外界から切り離されたような特別な空間を演出しています。

パリ装飾芸術美術館の所蔵品

当美術館では、中世から現代までの装飾芸術作品が15万点ほど所蔵されています。中世からルネッサンスまでの作品を集めた展示室、17世紀から19世紀にかけてのバロックやロココ様式など数々の歴史ある芸術の展示、アール・ヌーヴォーやアール・デコのコーナー、現代芸術など年代ごとに分けられたコレクションは圧巻で、装飾美術の歴史を感じさせます。また、常設展示の他にも、企画展が定期的に開催され、これまでディオールやエルメスなどの企画展が開催されました。

そんなパリ装飾美術館のコレクションには、どのような作品が含まれているのでしょうか。主要な作品をご紹介します。

《木製レリーフ》16世紀頃

本作品は16世紀のスペインで制作された作品で、ヘラクレスの一生が描かれています。

ヘラクレスはギリシャ神話に登場する半神半人の英雄です。最高神であるゼウスと、ミケーネ王家の娘である人間のアルクメーネーの間に生まれ、神の力を受け継いだ存在として数々の伝説を作りました。しかし、ゼウスには妻がおり、この妻はゼウスがヘラクレスを王に指名しようとした嫉妬でヘラクレスを殺そうとしたり、ヘラクレスの正気を失わせて自らの子供の命を奪わせたりしました。

ヘラクレスは後悔の中で、ミケーネ王となったゼウスの妻の子であるエウリュステウスに仕えることになります。そこでエウリュステウスから命じられたのは12の難行で、獅子を倒したり、3つの頭を持つ犬であるケルベロスを捕獲したりするという非常に厳しいものでしたが、ヘラクレスは見事に完遂します。その後もヘラクレスは様々な冒険や神々との戦いをすることになり、死後は神として生まれ変わることとなりました。

本作品は当初、スペインのアンダルシアの城にあったもので、パリ装飾芸術美術館に所蔵されてはいましたが、リニューアルオープンするまでは展示されていませんでした。リニューアルに合わせて作品の修復が行われ、中世の展示室に置かれることとなりました。

《エミール・ガレによるアール・ヌーヴォーの家具》19世紀後半シャルル・マルタン・エミール・ガレ

本作品は19世紀後半から20世紀初頭に流行したアール・ヌーヴォーのデザイナー、エミール・ガレによって制作された作品です。

ガレは1846年にフランス北東部、ロレーヌ地方にあるナンシーに生まれた工芸家です。父の影響でガラス製作を始め、1878年と1889年のパリ万博では複数の部門で賞を受賞します。1894年にナンシーでガラス工業を設立し、ガラス作品や家具、陶器など様々な分野の作品を生み出しました。アール・ヌーヴォー全盛期に行われた1900年のパリ万博では、ガラス部門と家具部門の2部門でグランプリを受賞しています。

アール・ヌーヴォーはフランス語で「新しい芸術」という意味です。家具や室内装飾、工芸品やジュエリー、建築、絵画など様々な分野にわたって展開されました。自然のモチーフが多く使われ、自由で新しいデザインの曲線と繊細な装飾が特徴の芸術作品です。アール・ヌーヴォーは新古典主義から脱却し、新しく自由な様式で芸術を作っていくことが理想とされていました。エミール・ガレは家具やガラス作品など多岐にわたって作品を生み出し、アール・ヌーヴォーを代表する芸術家とされています。

ガレの作品が展示されている木製のテーブルや椅子などの家具が置かれたコーナーは、エレガントな雰囲気を醸し出しています。椅子の背もたれは細部までこだわり抜いた装飾がなされ、ガレの作品を象徴するかのような繊細なスタイルで制作されています。

《ジャンヌ・ランバンのアパートの内装》1924-1925年アルマン・アルベール・ラトゥー

本作品は1924年から1925年頃の作品で、アルマン・アルベール・ラトゥーによって制作された作品です。

アルマン・アルベール・ラトゥーは、1882年にフランスで生まれたインテリアデザイナーです。ラトゥーはエコール・ブール国立工芸学校で装飾の勉強に励み、当時の有名なデザイナーのもとで修業したのちに、アール・デコの中心人物として活躍しました。アール・デコでは幾何学図形がモチーフにされることが多く、装飾に重きを置いたアール・ヌーヴォーとは異なり、シンプルで実用的なデザインが多く制作されています。

本作品は、クチュリエとして活躍したジャンヌ・ランバンのアパートの内装と家具一式です。ジャンヌ・ランバンは1867 年にフランスのパリに生まれたファッションデザイナーで、1889年創立のファッションブランド『LANVIN』の創始者でもあります。1922年にランバンがラトゥーにアパートの再設計を依頼し、これらの作品が作られることとなりました。

おわりに

パリ装飾芸術美術館は、中世の貴重な作品や有名デザイナーの作品の数々が展示され、中世から現代までの装飾美術の歴史が感じられる美術館です。

また、クリスチャン・ディオールの創立70周年を記念した『夢のクチュリエ』という世界中から注目を集めた服飾展示イベントが開催されたほか、美術作品のみならず貴重な文書や広告など様々な企画展示展も行われています。
パリを訪れた際には、ぜひ足を延ばしてみてはいかがでしょうか。

Official Website

出典(MMM)

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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