パレ・ド・トーキョー美術館:最先端を発信し続ける現代アート専門美術館

パレ・ド・トーキョー美術館はフランスのパリにある美術館で、2002年に開館しました。その歴史は1937年のパリ万国博覧会までさかのぼり、当時建てられたパビリオンの1つを改装して使用しています。現代アートの実験場として注目を集めており、新鋭の芸術家の作品をいち早く展示することで有名です。そんなパレ・ド・トーキョー美術館の歴史と展示について詳しく解説していきます。

パレ・ド・トーキョー美術館とは

パレ・ド・トーキョー美術館はフランス・パリのセーヌ川沿いにある美術館で、2002年1月に開館しました。建物全体が『パレ・ド・トーキョー』と呼ばれており、東翼内にパリ市立近代美術館、西翼内に今回紹介するパレ・ド・トーキョー美術館が入っています。

元々この場所にはタペストリー工場がありましたが、1826年にゴブラン工場に統合された際に移転、跡地は軍用地になりました。その後、1937年にパリ万国博覧会の開催が決まり、フランスの美術・芸術を伝えるパビリオンが建てられました。万博終了後にパビリオンはパリ市の収蔵品展示・国立近代美術館・パリ市立近代美術館と生まれ変わり、歴史を紡いでいきます。しかし、1977年に国立近代美術館がポンピドゥー・センターへ移転したことで西翼は遊休施設となり、臨時の美術展会場に使用されたり芸術団体へ貸出されたりするようになりました。

再び西翼が美術館として蘇ることになったのは1999年のことです。文化大臣が現代美術にスポットを当てる取り組みを発表し、2002年にパレ・ド・トーキョー美術館が開館しました。開館にあたり改装しましたが、パレ・ド・トーキョー美術館はパリ万博当時のパビリオンの面影を強く残しています。その後、開館10周年の2012年には再度改装工事が行われ、地上2階・地下2階・総面積22000㎡を誇る美術館としてリニューアルオープンしました。

また、美術館の名前に『トーキョー』の言葉が入っているのは、第一次世界大戦中に同盟国であった日本の首都『東京』にちなみ、セーヌ川沿いのケ・ドビリーを「東京通り」と改名していたことに由来します。

パレ・ド・トーキョー美術館で行われた展示・イベント

パレ・ド・トーキョー美術館は、世界をリードする現代美術・コンテンポラリーアートの展示に特化した美術館です。美術館が所蔵している作品はないため、毎回テーマに合わせてすべての展示作品が入れ替わります。展示される作品は幅広く、絵画・彫刻・デザイン・イラスト・ファッション・映像アート・コンテンポラリーダンスなどがあります。他の美術館と比べると制約が少なく、自由度が高いため、奇抜なパフォーマンスやインスタレーションが多いのが特徴です。現在では若い芸術家やパリの若者から絶大な人気を誇っています。

そんなパレ・ド・トーキョー美術館では日々どんな展覧会が行われているのでしょうか。こちらの美術館にはコレクション・常設展がないため、過去に話題を集めた企画・イベントを紹介していきます。

《Carte blancheto Tino Sehgal》2016年ティノ・セーガル

本パフォーマンスは、2016年のCarte blancheで披露されました。Carte blancheとは直訳すると無地のカードという意味で、自由な表現をして欲しいという美術館からアーティストへのメッセージです。そのため、この企画展ではパレ・ド・トーキョー美術館の全ての空間をたった一人のアーティストに任されます。

ティノ・セーガルは1976年にイギリスで生まれたアーティストです。のちにドイツ・ベルリンで政治経済を学びましたが、エッセンでダンスにのめりこみ2000年にアーティスト活動を開始しました。モノとしての作品は一切残さないことで有名で、美術館との契約時も領収書・カタログ・映像・写真といった記録の抹消を要求しています。彼自身は自分の作品を「構築された状況」と呼んでおり、パフォーマーが彼の考えたプラン通りに行動するのが特徴です。現在はドイツ・ベルリンを活動の本拠地にしています。

そんなティノ・セーガルがパレ・ド・トーキョー美術館で行ったCarte blancheは、観客参加型のパフォーマンスです。10代の若者から年配の老女まで様々なキャラクターを集め、パフォーマーとして採用しました。彼らが観客に話しかけることによって行動が変化したり、会話が生まれ疑問について討論を行ったりと、パフォーマンスの形は変化します。観客のひとりひとりの感性で受け止め、それぞれ考えを巡らすことが彼の作り出すアートの魅力です。

《卵》2017年アブラハム・ポアンシュバル

本パフォーマンスは2017年にアブラハム・ポアンシュバルが披露しました。アブラハム・ポアンシュバルはフランス出身のアーティストで、自分自身も作品の一部になるパフォーマンスで知られています。

特に有名なシリーズが、自由に身動き出来ない空間で長期間滞在するというパフォーマンスです。大きなクマのはく製の中で虫を食しながら2週間過ごしたり、自分の体の大きさにくりぬいた岩の中に1週間以上入ったり、大きな瓶に入って川を流れたりと、奇抜なアイデアで人々を驚かせてきました。これらのパフォーマンスは実験と位置付けられており、人間の不変性や本質・空間をテーマとしています。

そんなアブラハム・ポアンシュバルがパレ・ド・トーキョー美術館で発表した「卵」はこれまでのシリーズとは少し異なります。ヒナがかえるまで1ダースの卵を温めるパフォーマンスで、ガラスケースの中の椅子に会期中24時間座り続けました。さらに卵が孵化する温度に保つため生姜入りの食事を定期的に摂取し、休憩は24時間に一度30分間のみという過酷さです。これまでの狭い空間に閉じこもる作品と違い、自分の全身を観客に公開するこのパフォーマンスはアブラハム・ポアンシュバルの新境地とも言われています。このパフォーマンスを取り上げたメディアでは「彼はめんどり人間を目指している」とも紹介されました。また、スタートから3週間後には卵からヒナにかえすことに成功しています。

《ヌーディスト向け特別鑑賞会》2018年

本鑑賞会は2018年にパレ・ド・トーキョー美術館とパリ・ナチュリスト協会が協力することにより実現しました。

近年、パリではヌーディスト向けのレストランがオープンしたり、裸でプレーするスポーツが行われたりと、ヌーディストの活動に注目が集まっています。そんな中、パリ・ナチュリスト協会はさらなる文化の発展として、この企画をパレ・ド・トーキョー美術館に持ち込みました。提案されたパレ・ド・トーキョー美術館は「文化・芸術への寛容さ」を表すという目的もあり開催されることとなりました。

美術館によるヌーディスト向け鑑賞会はフランスでは初開催のため注目度が高く、フェイスブックで200万以上のアクセスを集めます。当日は抽選により選ばれた約150名のヌーディストが参加し、ツアー案内人の説明を聞きながらアート作品に思いを馳せました。今後も実施するかは未定ですが、アート鑑賞の方法に一石を投じたことは間違いないでしょう。

おわりに

パレ・ド・トーキョー美術館は日々進化する現代アートにふれることの出来る美術館です。
定期的に企画が変わるため、行くたびに新しい発見があるでしょう。パリには多くの美術館があり、様々な芸術作品を鑑賞することができます。ぜひ、パレ・ド・トーキョー美術館にも足を延ばしてみてはいかがでしょうか。

Official Website

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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