フラゴナール香水博物館:老舗香水ブランド「パフュームリー・フラゴナール」の全てがわかる博物館

フラゴナール香水博物館はパリ中心部、オペラ座の近くにある博物館で、1970年に開館しました。香水の歴史や製造過程が詳しく紹介された資料をはじめ、香料を抽出するために使用されていた装置や数多くの歴史的な香水瓶などが展示されています。日本のごく一部の店舗でしか扱われていない、老舗香水ブランド「パフュームリー・フラゴナール」の香水やアメニティなどが購入できる場所としても有名です。そんなフラゴナール香水博物館の歴史と所蔵品について詳しく解説していきます。

■フラゴナール香水博物館とは

フラゴナール香水博物館は、パリ中心部のオペラ座からほど近い位置にあります。二つの建物から成り立つ、フランスの老舗香水ブランドであるパフュームリー・フラゴナールにまつわる博物館で、3000年以上におよぶ香水の歴史や、遥か昔から行われていた香水の製造過程などを紹介しています。また、香料を抽出する装置や香水瓶などの歴史的な展示物を見学することもできます。

パフュームリー・フラゴナールは1926年に南フランスのグラースで、ウジェーヌ・フックスによって設立されました。ブランド名は、宮廷で調香師をしていた父親を持つグレース出身の画家ジャン・オノレ・フラゴナールを由来としています。

(Public Domain /‘Self-portrait in a Renaissance costum’byJean Honoré Fragonard. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

香水に魅せられたウジェーヌ・フックスの情熱的な戦略により、フラゴナールはフランスを代表する香水ブランドの一つとして名を馳せることになったのです。ウジェーヌ・フックスの息子であるジャン=フランソワ・コスタが、香水への興味を多くの人々に広めたいという思いから集めたコレクションを展示するようになりました。現在では、彼の3人の息子たちが製品の開発を手掛けています。

■フラゴナール香水博物館の所蔵品

フラゴナール香水博物館では、香水の歴史をたどり、世界の各地で採取される香水の原料、香りの変化、種類などについて深く学ぶことのできる資料が展示されています。映像での紹介やガイドスタッフによるツアーも開催されており、詳細に分類した花の香りを実際に試すことができるのも特徴的です。古代エプトやギリシャ、ローマなどで使用されていた3000年以上の歴史を持つ香水瓶をはじめ、歴史的価値の高い様々な香水瓶を鑑賞することもできます。また、19世紀にフラゴナールの工場で使われていたボイラーや蒸留器なども展示されており、当時の花のエッセンスの抽出方法を学ぶこともできます。

そんなフラゴナール香水博物館のコレクションには、どのようなものが含まれているのでしょうか。主要な展示品をご紹介します。

・《《雪花石膏製の香水瓶》紀元前2160-1680年
この展示品は、エジプト中王国時代に使われていた香水瓶です。

古代エジプトでの香水は、死者を神々のもとへ送るために行う防腐処置の儀式に使われていました。この技術がギリシャに渡ると、香水は医学分野や身体衛生のために使われるようになり、古代ローマ時代には入浴やボディケア、化粧品として用いられるようになっていきます。ルネッサンス期になると、香水は体臭予防のために使われることが多くなり、強めの香りになりました。イタリアで香水が流行したため、グラース地方では香料のための植物栽培が盛んになり、18世紀ごろにはさらに繊細な香りが開発されていきます。19世紀になると新しい技術も生まれ、香水製造はますます発展し、20世紀ごろから女性たちのファッション分野へと浸透していきました。

16世紀ごろから流行しはじめた香水は大変高価であったため、当時は少しでも長持ちさせるために光を通すことのない陶磁器の香水瓶が使われていました。ガラス瓶の香水の場合、2、3年ほどしか品質を保てなかったのですが、後に瓶を金属製にしたことにより、使用期限を7、8年まで伸ばせるようになったのです。博物館では、フラゴナールが独自に開発した金属製ボトルも展示してあります。

・《香水瓶のラベル》
この展示品は、フラゴナール社で製造した香水瓶に使用されていた歴代の様々なラベルです。

香水瓶のラベルは、それぞれの香水を象徴するデザインで施されています。現在ではシンプルなデザインのものが多くなりましたが、20世紀初頭は、アールヌーヴォー、エポックなど、当時の風潮や流行などが反映されたデザインが描かれていました。また、フランス人が好むことの多い、スミレの花もモチーフとして多く使われていました。

・《蒸留器》

この展示品は、19世紀にグラースのフラゴナールの工場で、花の原料から香りのエッセンスを抽出して蒸留するために使われていた装置です。

天然の香水を作るにあたり、大量の花を使って採取できるエッセンスはわずか数滴です。例えば1リットルの薔薇のエキスを抽出するためには、約3トンもの薔薇の花が必要だといわれます。グラースの工場ではラベンダー以外の花は現在でも手摘みしており、ひとつの香水を作り上げるのに、膨大な量の花と人手が関わっていることが分かります。

・《調香師のオルガン》

この展示品は、フランスの調香師がたくさんの種類の香料を調香しやすくするために並べられた台です。

調香師とは、数千種類もの香料を組み合わせて新しい香りを生み出す職業です。調香師になるには、植物学や化学などの知識を身につける他、たくさんの香料を瞬時に嗅ぎ分けるするどい嗅覚の技術が必要とされます。本場のフランスでも調香師になるための学校は、パリ、グラース、ヴェルサイユの三ヶ所のみであり、狭き門であるといえます。

調香師のオルガンは、小瓶に分類され並べられたそれぞれの樹木や花の香料を組み合わせて香水を作ることができます。調香師はこのオルガンの後ろに座って、細い紙にしみ込ませたそれぞれの香りを記憶するのです。

■おわりに

フラゴナール香水博物館は入場無料で、ガイド付きの説明を聞きながら香水について学び、鑑賞することができます。ガイドによる説明はフランス語か英語ですが、あらかじめ予約をすることで日本語での説明も可能です。フランス旅行のお土産としても喜ばれる貴重な香水を手に入れることもできる博物館です。パリを訪れる機会があれば、ぜひ足を延ばしてみてはいかがでしょうか。

Official Website

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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