バーバリー:格調高き英国の伝統

バーバリーは、イギリスを代表するファッションブランドの一つです。独自に開発した生地であるギャバジンを使用したトレンチコートなど、機能や着心地にこだわった商品を数多く世に発表してきました。数々の探検家やパイロットをはじめ、各界の著名人の愛用者も多く、コート・ジャケット部門で複数回に渡って英国王室御用達を授かるなど、格調高い英国の伝統ブランドとしての地位を確立しています。

ブランドの創業とギャバジンの発明

バーバリー(Burberry)の創業は1856年、生地屋で見習いをしていたトーマス・バーバリー(Thomas Burberry)が、弱冠21歳でベイジングストークに洋服店を開業したのが始まりです。


(Public Domain /‘Thomas Burberry’byUNKNOWN. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

衣服は厳しい気候環境から人を守るものでなくてはならないという考えから、機能性や着心地を重視した洋服作りを行っており、創業して数年した頃にはすでにジャケットやマフラーなど数多くの商品を手掛けるまでになっていました。

バーバリーにとって転機となったのは1879年、農業に従事する人々の衣服が汚れないようにと羽織っていた上っ張りから着想を得て、ギャバジンと呼ばれる新しい素材を考案したことです。ギャバジンは強く丈夫であるだけでなく耐久性や防水性を備え、悪天候の際に着用するのに適したものでした。また、通気性にも優れているため、重くて着心地がよくない雨具に取って代わるものとして人々に広まっていきました。

ギャバジンは、巡礼者が着ていた上着のことを指すスペイン語「ガバルディナ」に由来する名称です。バーバリーは1888年にギャバジンの特許を取得し、その後1917年まで独占して製造することになります。

社名を「トーマス・バーバリー&サンズ(Thomas Burberry & Sons)」とし、1891年にはロンドンのヘイマーケットに本社兼店舗を開きました。

探検家やパイロットがギャバジンを愛用

防寒性に優れ、軽くて丈夫な機能素材であるギャバジンは、極地や上空などの過酷な環境に身を置く探検家、パイロットらの間で愛用されるようになります。

例えば、ノーベル平和賞を受賞したノルウェーの探検家で動物学者でもあるフリチョフ・ナンセン(Fridtjof Wedel-Jarlsberg Nansen)博士が1893年に北極圏に向かって出航した際も、バーバリーのギャバジンに身を包んでいました。

(Public Domain /‘Fridtjof Wedel-Jarlsberg Nansen’byUNKNOWN. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

また、1910年にイギリス人パイロットのクロード・グラハム=ホワイト(Claude Grahame-White)がロンドンとマンチェスターとのあいだの24時間以内飛行に初めて成功したときに着ていたのも、やはりバーバリーのギャバジンでした。

1914年には、アーネスト・シャクルトン(Sir Ernest Henry Shackleton)が率いる探検隊が南極で遭難しますが、全員が奇跡的に生還。彼らが防寒着として着ていたのもバーバリーのギャバジンです。

そのほか、大西洋無着陸横断飛行を成し遂げたジョン・オルコック(Sir John William Alcock)とアーサー・ブラウン(Arthur Brown)、ロンドン〜メルボルン間を飛行するマックロバートソン・エアレース(MacRobertson Trophy Air Race)で優勝したトム・キャンベル・ブラック(Tom Campbell Black)とC.W.A.スコット(Charles William Anderson Scott)、そして国威発揚のためにエベレスト初登頂を目指して消息を絶ったジョージ・マロリー(George Herbert Leigh Mallory)など、バーバリーのギャバジンが歴史的な出来事を支えた例は数えきれません。

トレンチ・コートの製造

1895年のボーア戦争に際し、バーバリーは士官用の上着としてタイロッケン・コート(Tielocken Coat)を製造。第一次世界大戦時にはこれを改良し、塹壕(トレンチ)での戦闘に適合するよう、手榴弾を携帯したり剣や水筒を下げておいたりするためのD字型リング、手袋や笛などを吊るすエポレット、雨水を流し落とすストームシールドなどの機能的なディテールが備えられます。このコートはトレンチ・コートと呼ばれ、英国陸海軍に正式に採用されました。およそ50万着以上も製造され、終戦後には一般市場にも普及しました。

トレンチコートは、元英首相のウィンストン・チャーチル(Sir Winston Leonard Spencer-Churchill)、作家のアーサー・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle)、アメリカ女優のキャサリン・ヘプバーン(Katharine Houghton Hepburn)ら著名人の愛用者が多いことで知られます。また、『カサブランカ』(1942年)でハンフリー・ボガードが、『ティファニーで朝食を』(1961)でオードリー・ヘプバーン(Audrey Hepburn)が着用するなど、映画に登場したこともトレンチコートの人気に貢献しました。

バーバリー・チェックの誕生バーバリー・チェックの誕生

現在ではブランドの代名詞ともなっているキャメル地に黒と白、そして赤のラインからなるバーバリー・チェックが登場したのは1924年のことです。当初はコートの裏地として採用され、カントリー・タータンと呼ばれる格子柄をもとに公募でデザインが決定されたといわれています。

バーバリー・チェックは、長らく裏地として使われるのみでしたが、1967年に傘のデザインに採用されました。その後、マフラーやバッグなどの柄として積極的に使われるようになります。

スタンダードなパターン以外にも、ノバチェックやメガチェック、スモークドチェック、ビートチェックなど、さまざまなバリエーションが展開されています。

バーバリーの歴代デザイナー

多くの人々に名を知られるファッション・ブランドに成長したバーバリーは、1998年に高級ラインとして、モード性を加えたモダンなスタイルを特徴とする「バーバリープローサム」を立ち上げ、ファッション・ショーにも積極的に参加しています。

1999年春夏にはジル・サンダー(JIL SANDER)などで活躍したロベルト・メニケッティをレディース・コレクションのクリエイティヴ・ディレクターに迎え、2000年春夏からはメンズラインもスタートしました。

2001年には、ダナ・キャラン(Donna Karan New York)やグッチ(GUCCI)での仕事で知られるイギリス人デザイナー、クリストファー・ベイリーがクリエイティブ・ディレクターとなります。その後、ベイリーは功績を評価され、2009年にチーフ・クリエイティブ・オフィサー、2014年にはCEOに就任しています。

なお、2016年秋冬からはプローサムをはじめとする複数のラインを統合し、「バーバリー」として展開。2019年春夏からは「ジバンシィ(Givenchy)」のクリエイティブディレクターとして知られるリカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)がCCOとしてデザインを担当しています。

最後に

1856年の創業以来、バーバリーは独自に生地を開発するなど機能や着心地にこだわった商品を数多く世に発表してきました。探検家やパイロットらの偉大な記録を支えてきたほか、ファッション・シーンでも活躍しています。コート・ジャケット部門で何度も英国王室御用達を授かるなど、イギリスを代表するトップ・ブランドとして揺るぎない地位を確立しているのです。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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