アルティウム:2002年開館の現代美術のための美術館

スペイン北部のビトリア=ガスティスにあるのがアルティウム、スペインの現代美術作品を所蔵した美術館です。2002年開館の比較的新しい館内では、パブロ・ピカソやサルバドール・ダリなどの著名な画家の作品をはじめ、総数約3,000点のコレクションが楽しめます。ジャンルも絵画や彫刻、空間を使ったインスタレーションなど幅広いです。スペインの現代美術を所蔵したアルティウムの歴史やコレクションを紹介します。

◼︎アルティウムとは

スペイン北部のバスク州の州都・ビトリア=ガステイス、アルティウムはこの街にあります。正式名称は「アルティウム・バスク現代美術センター」、2002年に開館を迎えた比較的新しい美術館です。旧市街と新しい街並みの境界線にあるアルティウムでは、特にスペインの現代芸術を深く楽しむことができます。正面入口の横に描かれた「Artium」の文字は、施設の存在感をより増しているでしょう。美しいキューブ状の建物は、それ自体が芸術作品ともいえます。

アルティウムの構想を主導したのはビトリア=ガステイスが属する、アラバ県の県議会でした。県議会の構想にバスク州の政府やスペインの文化省なども協力し、現在のアルティウムの姿ができあがったのです。館内で展示されているコレクションや建物は、アラバ県議会の所有となっています。アルティウム設立の目的は3つあり、ひとつは現代美術品を収集すること、ひとつは企画展示会の開催、そしてもうひとつは教育・文化活動を発展・支援することでした。

その目的の通り、現在のアルティウムはバスク州における芸術教育・文化発展の担い手としての立場を形成しています。ほかの美術館では見られない現代的なコレクションの数々は、常に変化を続ける美術業界の先陣をきっているといってもよいでしょう。

建物の設計を担当したのは建築家のホセ・ルイス・カトンです。キューブのような形状の建物は、白い外壁とガラス張りがモダンな印象を与えます。敷地はほぼ正方形に切り取られており、展示スペースは建物の内外に広がっています。美術館のほか資料室やレストラン、カフェも併設されており、特に天気がよい日にはテラス席は賑わいをみせます。夜はあざやかにライトアップもされるため、幻想的な雰囲気が漂います。建物自体も芸術作品のひとつでしょう。

スペイン北部バスク州の芸術文化の中心地、アルティウム。そんなアルティウムのコレクションとは、いったいどのようなものなのでしょうか?

◼︎アルティウムのコレクション

アルティウムは現代美術のコレクションを中心に、総数約3,000点もの作品を所蔵しています。

アルティウムの所蔵作品の分野は多岐にわたり、絵画や彫刻をはじめ写真やインスタレーションなどの展示も行っています。創造にまつわるあらゆる分野を網羅しているといってもよいでしょう。これらの幅広いコレクションは、アルティウムの魅力の一つです。

コレクションのうち特に有名な芸術家では、20世紀を代表するスペインの三大巨匠が挙げられます。キュビスムの創始者であり20世紀を代表する奇才、パブロ・ピカソ、独特の世界観を描いた画家、ジョアン・ミロ、シュルレアリスムを代表する画家、サルバドール・ダリです。アルティウムではこれら巨匠の作品を鑑賞することができるでしょう。

また20世紀を代表するスペインの現代芸術家、アントニ・タピエスや、ドイツの現代芸術家、ヨーゼフ・ボイスの作品も所蔵されています。

それでは、アルティウムの主要なコレクションを紹介しましょう。

・《Mildred Fagenの肖像》1960年サルバドール・ダリ

Mildred Fagenの肖像は1960年、シュルレアリスムを代表する画家サルバドール・ダリによって制作された作品です。

サルバドール・ダリは20世紀のスペインを代表する巨匠として知られる画家です。超現実主義といわれるシュルレアリスムを代表する画家で、代表作「記憶の固執」の、歪んだ時計はダリの代名詞として知られています。また、チュッパチャップスの商品デザインを手がけたことも有名でしょう。

本作品はキャンバスに描かれた油彩画で、広大な砂漠のような空間にたたずむ女性の肖像を描いたものです。椅子に腰掛け、遠くの空を見つめるような女性の眼差しは、どこか意志の強さを感じさせます。頭に巻いたスカーフや腕に巻かれたアクセサリーからは、上品で品格のある女性像が浮かび上がるでしょう。現実的な風景でありながらも、ところどころにダリ独自の非現実性が散りばめられた、アルティウムを代表する傑作です。

・《ボトルを運ぶ壊れた鼻》1999年フアン・ムニョス

ボトルを運ぶ壊れた鼻は1999年、スペインの彫刻家フアン・ムニョスによって制作された作品です。

フアン・ムニョスはスペインを代表する彫刻家です。1953年に生まれたムニョスは1970年代にイギリスに移住、1984年に初めての個展を開催しました。この個展を皮切りに、ヨーロッパをはじめ世界各国で作品の展示がおこなわれるようになっていきます。1990年代に入ると小さめの人物像をモチーフに、「物語」を連想させる作品を制作するようになっていきました。これまでの伝統的な彫刻の世界観を壊し、新しい表現の道を自ら模索していったのです。

ムニョスの作品は、まるで鑑賞者が作品の一部になったかのような錯覚を起こします。その個性的な表現から、もっとも複雑で個性的なアーティストの一人とも称されています。2008年にはスペイン北部のビルバオ・グッゲンハイム美術館で、大規模な回顧展が開催されました。

本作品の中心にいるのは、瓶の上に鼻を乗せ、逆立ちで直立した男性像です。まるで大道芸のようにパフォーマンスを披露する男性の足の上には、さらに2人の人物像が登場しています。本作品は、まさに鑑賞者が「鑑賞」することによって完成しているといえるかもしれません。時間が止まったかのような特異な空間演出に、きっとあなたも魅了されるはずです。

◼︎おわりに

スペインのビトリア=ガスティスにあるアルティウムの歴史やコレクションを紹介してきました。総数3,000点に及ぶ希少なコレクションは、絵画や彫刻をはじめ空間を使ったインスタレーションなど多岐にわたります。新しい芸術の形にもきっと出会えるでしょう。あなたの感性を刺激する出会いを求めて、ぜひアルティウムに足を運んでみてください。

さらに、アルティウムのあるビトリア=ガスティスには、宗教美術のコレクションが充実した司教区美術館や、ルネサンス様式の邸宅を使用したビトリア=ガスティス美術館など、芸術鑑賞に適した施設が豊富にあります。スペインを訪れたら、ビトリア=ガスティスに足を延ばしてみてはいかがでしょうか。

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※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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