クンストパラスト美術館:フランドルの巨匠の充実したコレクション

ドイツのデュッセルドルフにあるクンストパラスト美術館は、特にフランドル出身の巨匠の作品が充実していることで知られています。ピーテル・パウル・ルーベンスの「聖母被昇天」など、ここでしか見られない素晴らしい作品が数多く展示、収蔵されています。また、ヨーロッパで有数のガラスコレクションは、美術館のもうひとつの目玉といえます。アール・ヌーヴォーを代表する芸術家エミール・ガレの作品などは見逃せません。そんなクンストパラスト美術館の歴史やコレクションを詳しく紹介していきましょう。

◼︎クンストパラスト美術館とは

クンストパラスト美術館があるのはドイツ西部のデュッセルドルフ、この地域は芸術の街としても知られています。ドイツ最高峰の画家と称されるゲルハルト・リヒターや、現代芸術家として知られるヨーゼフ・ボイスを輩出した、デュッセルドルフ芸術アカデミーが位置する場所でもあります。今後も、著名な芸術家が数多く輩出されていくことでしょう。

クンストパラスト美術館は、そんな芸術の街にある美術館です。美術館が設立されたのは1920年代のことで、2001年に現在の場所に美術館が開館しました。噴水がある中庭を中心に大きく三つの建物から構成されています。名前は“美術の宮殿”を意味しており、その名前の通り、芸術の街デュッセルドルフを代表する施設として、世界中の美術愛好家の注目を集めてきました。

美術館の始まりは、1710年にプファルツ選帝侯ヨハン・ヴィルヘルム2世の個人的なコレクションからです。20世紀に入るとコレクションのさらなる拡充が図られ、その内容は一層の充実度を増していきました。現在のコレクションの中核にあるのも、ヴィルヘルム2世が収集した作品です。約400年の歴史を誇る美術館のコレクション、その内容はどんなものなのでしょうか?

◼︎クンストパラスト美術館のコレクション

クンストパラスト美術館でもっとも有名なコレクションは、フランドルの巨匠による絵画作品です。なかでもピーテル・パウル・ルーベンスが描いた「聖母被昇天」は、コレクションの中で最高峰といってよいでしょう。17世紀から18世紀のイタリア絵画の数々は、美術館が数多くの作品の中で最も重要であると誇る所蔵品です。そのほか19世紀以降の現代アート作品も充実しています。

また、絵画はもちろん、写真やデザインの展示が豊富なこともクンストパラスト美術館の特徴でしょう。特に写真のコレクションは秀逸で、写真の歴史の変遷を知ることもできます。さらに忘れてはならないのが、およそ3,000作品以上にもなる膨大なガラスコレクションです。アール・ヌーヴォーを代表する芸術家エミール・ガレの作品をはじめとした希少な作品群は、ヨーロッパ最大規模のガラスコレクションとして賞賛されています。

ここまで広範な範囲を網羅した美術館はなかなかないでしょう。また過去にはカラヴァッジョやエル・グレコなど、オールド・マイスターの作品を特集した特別展も開催しています。今後訪れるときは、ぜひ特別展の内容にも注目してみてください。

ここからはクンストパラスト美術館のコレクションの中から、主要な作品を紹介していきます。

・《聖母被昇天》1616年−1618年ピーテル・パウル・ルーベンス

(Public Domain /‘Assumption of Mary’byPeter Paul Rubens. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

聖母被昇天は1616年から1618年、バロック期を代表する画家ピーテル・パウル・ルーベンスによって制作された作品です。

ピーテル・パウル・ルーベンスはバロック期を代表する巨匠で、貴族などの上流階級に好まれた作品を多数制作したことで知られています。本作品・聖母被昇天が制作された時期である1610年代、ルーベンスはアントウェルペンに大規模な工房を運営していました。多くの助手や弟子とともに生み出した作品の数々は傑作と賞賛されています。この時期に制作された「キリスト昇架」などの傑作はバロック宗教画の最高峰とされ、今なお注目を集めているほどです。

ルーベンスは本作品と同名の作品をいくつか制作しており、そのうちの一枚はアントウェルペンの聖母大聖堂に、もう一枚はウィーンの美術史美術館に所蔵されています。聖母マリアが天国に導かれる様子が描かれており、周辺を複数の天使が囲んでいます。天を見据え、微笑みを浮かべながら召される聖母の姿は、神聖というほかないでしょう。鮮やかな色味をたたえた服装からはどこか華やかな印象を受け、聖母への祝福を示唆しているようにも感じ取れます。

また、聖母被昇天はフランダースの犬に登場することでも知られています。主人公のネロは聖母マリアに自分の母親を重ねていたのでしょう。作品に登場するのはアントウェルペンにある聖母被昇天ですが、ぜひ同じ題材のこちらの作品もじっくりと楽しんでみてください。

・《不釣り合いな夫婦》ルーカス・クラナッハ

(Public Domain /‘An ill-matched Pair’byLucas Cranach. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

不釣り合いな夫婦はルネサンス期のドイツを代表する画家ルーカス・クラナッハによって制作されました。

ルーカス・クラナッハは1504年から絵画制作を手がけていたといわれ、特に祭壇画を多く制作したことで知られています。また宗教改革を促した中心人物マルティン・ルターの友人としても知られており、ルターをモデルにした肖像画を制作しています。自身の工房を構えていたのはヴィッテンベルクで、ここはルターが教授として教鞭を振るった場所でもありました。当時としては珍しい腰がくびれた女神の描写は、クラナッハの独特の美しさを生み出しています。

本作品・不釣り合いな夫婦は年老いた男性とまだ若い女性をモデルに描いた作品で、題名の通り、見た目にも不釣り合いな夫婦を描いています。男性は女性の腰に手をかけ、不敵な笑みとともに女性をじっと見つめています。少女のようなあどけなさが残る女性は男性のほうを見つめ、たっぷりとたくわえられたヒゲを触っています。このモチーフは当時の時代背景を反映した年の差婚を描いており、お金のある男性とお金のない女性の結婚を表現した作品です。

◼︎おわりに

ドイツのデュッセルドルフにある博物館、クンストパラスト美術館の歴史やコレクションを紹介してきました。特に注目はルーベンスの聖母被昇天、あまりにも美しい聖母マリアの描写は、いつまでも眺めていたくなるほどです。フランドルの巨匠のコレクションや、世界有数のガラス・コレクションをじっくりと堪能してはいかがでしょうか。

ドイツは芸術鑑賞には最適の国です。首都のベルリンをはじめ、さまざまな街で芸術の魅力へと浸れることでしょう。そのときにはぜひ、デュッセルドルフも訪れてみてください。

https://www.kunstpalast.de/en/home

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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