ゲオルク・シェーファー美術館:実業家ゲオルク・シェーファーの至宝のコレクション

ゲオルク・シェーファー美術館は、ドイツ南部のシュヴァインフルトにある美術館です。同名の実業家の収集した作品を中核に、ドイツ屈指のコレクションを展示しています。特に19世紀のドイツ圏の芸術家作品が充実しており、ドイツ国内はもちろん、世界各国から美術愛好家が訪れています。そんなゲオルク・シェーファー美術館の歴史やコレクションを紹介していきます。

◼︎ゲオルク・シェーファー美術館とは

ドイツ南部のバイエルン州に属する街、シュヴァインフルトは8世紀からの歴史を誇る街です。19世紀には工業分野で成功を納め、大きな成長を遂げました。特に有名なのは、ボールベアリングの生産で、現在も変わらずヨーロッパのボールベアリング生産の中心となっています。

ゲオルク・シェーファー美術館は、美術愛好家としても知られる実業家ゲオルク・シェーファーのコレクションを所蔵・展示した施設です。ゲオルク・シェーファーは、シュヴァインフルトのボールベアリング産業で成功を納めた人物で、莫大な財を築いてきました。

ゲオルク・シェーファー美術館が設立されたのは2000年と比較的近年です。白い外壁とガラス張りの建物は、モダンな印象を与えるでしょう。明るく開放的な館内は広々としており、ゆっくりと芸術鑑賞に浸ることができます。

◼︎ゲオルク・シェーファー美術館のコレクション

ゲオルク・シェーファー美術館のコレクションは、実業家ゲオルク・シェーファーのこだわりが詰まった珠玉の内容です。特に充実しているのは19世紀のドイツ圏の芸術家作品で、とりわけ有名なのはカール・シュピッツヴェークの作品です。カール・シュピッツヴェークは日常的なシーンを題材にするビーダーマイヤー様式を代表する画家で、高い評価を獲得してきました。

こちらの美術館ではシュピッツヴェークの絵画を160点、デッサンを110点所蔵・公開しています。

ほかにもドイツのロマン主義を代表する画家・カスパー・ダーヴィト・フリードリヒや、象徴主義の作品を多数制作したハンス・トーマの作品など、巨匠の作品が広く展示されています。落ち着き洗練されたコレクションを通して、美術愛好家としてのゲオルク・シェーファーの、確かな審美眼の鋭さが伝わってくるでしょう。

ここからはゲオルク・シェーファー美術館の主要なコレクションを紹介します。

・《本の虫》1850年カール・シュピッツヴェーク

(Public Domain /‘The Bookworm’byCarl Spitzweg. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

本の虫は1850年、ドイツの画家カール・シュピッツヴェークによって制作された作品です。

カール・シュピッツヴェークは日常の場面を描くビーダーマイヤー様式を代表する画家です。ミュンヘン大学に通い薬学や植物学を学んだのち、大学を卒業後は薬剤師としてのキャリアを歩んでいました。そんなシュピッツヴェークが画家の道を志したのは病気療養のため訪れた温泉地でのことです。詳しくは伝わっていませんが、何か彼の運命を変える出来事があったのかもしれません。

代表作である「森の中の出会い」や「青年時代の友人」は、ふとした日常の一場面を切り取ったかのような描写が高い評価を集めました。まるで童話の世界のような独特の柔らかいタッチは、現在でも変わることなく人気を博し、またとても高い評価を獲得しています。

本作品・本の虫はその題名の通り、本棚に囲まれた空間で読書にふける男性を描写したものです。背丈の二倍ほどもある本棚の前で脚立に登り、2冊の本を手に男性は本の世界に入り込んでいます。天窓から差し込む光が、日常的なシーンを劇的なものに変容させています。写真のような写実性と独特の柔らかなタッチが生み出す世界観は、唯一無二のものでしょう。

・《バルト海の朝の風景》1830年−1834年カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ

(Public Domain /‘Flat country shank at Bay of Greifswald’byCaspar David Friedrich. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

バルト海の朝の風景は1830年から1834年にかけて、ドイツのロマン主義を代表する画家・カスパー・ダーヴィト・フリードリヒによって制作されました。

カスパー・ダーヴィト・フリードリヒは、ドイツのロマン主義を語るなら欠かすことのできない存在です。宗教的な意味合いを大いに含んだ幻想的な作品の数々は、さまざまな世代の心を捉え高い評価を獲得してきました。「海辺の僧侶」や「雲海の上の旅人」などの代表作は、時代を超えて愛される傑作でしょう。作品の多くはドイツ国内の美術館にて所蔵されています。

本作品の中心にあるのは、雲のスキマからこぼれるように溢れる陽光です。幻想的な光の描写に、思わず吸い込まれそうになるでしょう。画面上に描かれた人々は、その幻想的な景色に魅了されているようです。まるで雲のスキマから、天使が降りてきそうな世界が広がっています。

・《死のダンス》1896年マックス・スレーフォークト

(Public Domain /‘Deutsch: Totentanz’byMax Slevogt. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

死のダンスは1896年、ドイツ印象派の画家マックス・スレーフォークトによって制作された作品です。

マックス・スレーフォークトはドイツの印象派を代表する画家です。バイエルン州の出身で、活動当初は暗い色調の作品を描いていましたが、徐々に明るい色調の作品を生み出すようになっていきました。1900年にパリ万国博覧会のドイツ館のための作品を制作したことでも有名でしょう。劇的でドラマチックな構図と力強い筆致は、フランスの印象派とはまた異なった魅力に溢れています。

本作品・死のダンスは暗い色調で描かれた作品です。画面いっぱいにダンスを披露する2人の人物、鑑賞者の視線は手前に描かれた赤毛の女性に集中するでしょう。暗い色調が作品全体にダークな雰囲気を付与しています。画家自身の強い生命力が伝わってくるような力強い筆致とともに、ぜひ楽しんでみてください。

◼︎おわりに

ドイツのシュヴァインフルトにある、ゲオルク・シェーファー美術館の歴史やコレクションを紹介してきました。実業家であり、美術愛好家でもあるゲオルク・シェーファーが集めた珠玉のコレクションを広々とした空間で楽しむことができるこの美術館は、それぞれの作品にじっくりと向き合う贅沢な時間が過ごせるはずです。

シュヴァインフルトは「マインハッタン」とも呼ばれる夜景が楽しめる一大都市・フランクフルトから電車でおよそ2時間の距離にあります。希少なコレクションを鑑賞するために、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか?

Official Website

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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