シュテーデル美術館:14世紀からの西洋美術コレクション

◼️シュテーデル美術館とは

シュテーデル美術館はドイツのフランクフルトにある美術館です。ナチス・ドイツのおこなった退廃美術狩りによって、多くの作品が没収の憂き目にあったものの、14世紀から現代までおよそ700年に及ぶ壮大な作品の数々は、世界屈指のコレクションとして知られています。シュテーデル美術館の歴史やコレクションの見どころについて紹介します。

◼️シュテーデル美術館の歴史

シュテーデル美術館は、ドイツ中央に位置するフランクフルトにあり、銀行家ヨハン・フリードリヒ・シュテーデルの遺言によって設立されました。開館したのは1818年のことです。1878年には立地を移し、現在の場所に新館増築がおこなわれました。第二次世界大戦で甚大な被害を受けたものの、重要なコレクションは市街に疎開されていたため被害を免れました。損壊した建物は1966年に再建されています。

1937年、シュテーデル美術館はナチス・ドイツによっておこなわれた退廃美術狩りの対象となり、ゴッホの絵画を含む油彩画77点と版画700点が没収されてしまいました。没収された絵画の中には画商に売却され、他国の美術館などに寄贈されたものもあります。当時の貴重なコレクションがもし残されていたのなら、シュテーデル美術館の存在はより大きなものとなっていたでしょう。

シュテーデル美術館は1990年に別館が増築され、一層の注目を集めました。別館は20世紀の美術作品と特別展のためのもので、デザインを担当したのはオーストリアの建築家グスタフ・パイヒルです。現在の建物は地下1階・地上3階の4階建て構造になっており、フロアごとにコンセプトがわけられています。

◼️シュテーデル美術館のコレクション

シュテーデル美術館は古いもので14世紀のものから現代のものまで、およそ700年の時代を経たコレクションを所蔵・展示しています。イタリアのヴェネツィア派を代表する画家バルトロメオ・ヴェネトやルネサンス期の巨匠ボッティチェリ、15世紀のフランドルの画家ヤン・ファン・エイクやレンブラント、フェルメールなど名だたる巨匠の作品が目白押しとなっています。

建物の1階には、受付、ミュージアムショップ、カフェなどがあります。

2階には、19世紀から20世紀前半までのモダンアートが展示されています。フランス印象派の作品をまとめた特別な展示室があり、充実のコレクション群をじっくりと鑑賞できます。その展示室に合わせた彫刻も設置されており、ほかの美術館とは異なった印象を楽しむことができるでしょう。

3階には、14世紀から18世紀にかけてのコレクションが展示されています。壁の色が、作品に合わせて紺や黄緑、青などに塗りわけられており、作品の魅力を一層際立たせています。

地下階は、現代芸術を網羅したコンテンポラリー・アートのための空間になっています。

時代ごとの展示は明快でわかりやすいでしょう。

ここからはシュテーデル美術館の主要な作品を紹介します。

・《地理学者》1668年−1669年ヨハネス・フェルメール

(Public Domain /‘The Geographer’byJohannesVermeer.Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

「地理学者」は1668年から1669年にかけて、ネーデルラントの画家ヨハネス・フェルメールによって制作されました。

ヨハネス・フェルメールは、ネーデルラント(現在のオランダ)出身の画家で、生前から高い評価を得ていた人物です。細部まで描かれた高い写実性と空間構成、光を使った巧みな質感表現から、圧倒的な名声を獲得していました。没後急速に忘れ去られてしまったものの、19世紀のフランスで芸術に対する見方が変化したことから、再評価を得ています。超現実主義を代表する画家サルバトール・ダリは、名だたる歴史上の画家の中でフェルメールを特に絶賛しています。

「地理学者」の登場人物は一人の男性で、着物のようなローブを羽織っています。これは当時、オランダの有識者の中で流行していた服装で、ゆったりとしたローブが男性の知的な印象を加速させています。机に向かい地図制作に没頭している男性が、ふと窓の外の風景を眺めている、フェルメールが捉えたのはそんな一瞬の光景です。羊皮紙や布の質感、作業に没頭する男性の息遣いまで聞こえてきそうな巧みな描写は、まさにフェルメールの技術の粋を結集した傑作といえます。

・《午餐》1868年クロード・モネ

(Public Domain /‘The Luncheon’by Claude Monet. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

「午餐」は1868年、フランス印象派の画家クロード・モネによって制作された作品です。

クロード・モネは、フランスの印象派を代表する存在として知られています。1872年に描いた作品「印象・日の出」はそのまま「印象派」という芸術運動の名称にもなりました。モネは少年時代から人物像を描いて売るなど、才能に満ちた人物でした。1874年、サロンから独立して仲間たちと開催した第一回目印象派展は、歴史に残るひとつの大きな契機となっています。またモネといえば1890年代から描き続けた「睡蓮」シリーズの作品が世界的に知られています。

本作品の「午餐」とは「昼食」を意味する言葉で、1868年に制作されました。モデルになっているのは、1870年に結婚することになるカミーユと長男であるジャンです。穏やかな陽光が差し込む部屋の中、椅子に腰掛け食事を楽しむカミーユとジャンの姿は、幸福感に満ち溢れています。反面窓際にたたずむ女性の目線は下を向いており、物憂げな表情を抱いています。そして背景に描かれたメイドらしき女性は、鑑賞者の方向に鋭い視線を投げかけています。

・《アキ・シュブメルシュ》1919年マックス・エルンスト

「アキ・シュブメルシュ」は1919年、超現実主義を代表するドイツの画家マックス・エルンストによって制作されました。

マックス・エルンストは、1921年に制作した「セレベスの象」が代表作で、パウル・クレーやアルベルト・ジャコメッティなど、著名な芸術家との交流もあった人物です。ポスト印象派の画家フィンセント・ファン・ゴッホの絵画に触れ、画家を志したというエピソードも有名でしょう。多岐にわたる技法を駆使して時代を築いた、超現実主義を代表するドイツの芸術家です。

「アキ・シュブメルシュ」は、プールに逆さに飛び込んだ人物像や人間を模したオブジェ、空間の中に浮かぶ時計など、非現実性が惜しみなく表現された作品です。室内なのか屋外なのか、建物があるにも関わらず違和感を持つような独自の構図は、超現実主義の思想を理解するための架け橋となるでしょう。

◼️おわりに

シュテーデル美術館はドイツのフランクフルトにある美術館です。所蔵しているコレクションは14世紀から現代まで、およそ700年の時代を経た充実の内容です。時代ごと様式ごとにアレンジされた展示方法にも注目してみてください。フェルメールやモネなど歴史上の巨匠と、絵画を通してゆっくりと対話することができるでしょう。

ドイツを訪れたら、ぜひフランクフルトに足を延ばしてみてはいかがでしょうか?

公式HP:https://www.staedelmuseum.de/de

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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