ピカソ美術館:キュビスムの巨匠ピカソのための美術館

◼︎はじめに

スペインのバルセロナにあるピカソ美術館は、その名の通り、キュビスムを代表する芸術家パブロ・ピカソの作品を所蔵・展示している美術館です。5つの宮殿を前身に改築が施され、1963年に開館しました。ピカソが「青の時代」に手掛けた作品をメインに、コレクション作品は多岐にわたっています。もっとも多作な画家として知られるピカソの生涯を、膨大なコレクションとともに巡ることができるはずです。

スペイン・バルセロナに存在する、ピカソ美術館の歴史やコレクションを紹介します。

◼︎ピカソ美術館とは

スペインのバルセロナは芸術の街です。そんなバルセロナのゴシック地区に、ピカソ美術館はあります。13世紀から14世紀にかけて使用されていた5つの宮殿を前身にして改装され、1963年に開館しました。石造りの豪奢な外観は、キュビスムの先駆者であるピカソの作品を鑑賞する気分を盛り上げてくれます。

美術館のコレクションのベースは、ピカソの友人で秘書も務めたジャウメ・サバルテスの個人的なコレクションと、バルセロナ市が所蔵していた作品から成っています。それらの重要なコレクションに、ピカソ本人や家族、友人から寄贈された作品が加わっていき、より充実した内容に変わっていきました。2008年には版画専用の展示室も開設されました。

現在所蔵されている作品数は、なんと4,000点を超えています。なかにはピカソの幼少期の写真や素描なども含まれています。

ピカソは生きている間に13,000点以上の絵画や素描を書いたとされ、また100,000点以上の版画を制作しました。このことからギネス世界記録に、もっとも多作の画家として認定されたこともあります。

美術館の所蔵作品数は4,000点を超えますが、これでもまだ彼の作品のほんの一部に過ぎないという事実には驚かされます。展示を通して、ピカソの生涯を知ることもできることと思います。

◼︎ピカソ美術館のコレクション

(Public Domain /‘Pablo Picasso 1962’by Revista Vea y Lea. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

スペインのマラガで誕生したピカソは、1895年にバルセロナに移住し美術学校へ入学しました。1904年にフランスのパリに落ち着くまでのおよそ9年の歳月を、バルセロナを拠点にして過ごしました。

ピカソの作風は、年代によって大きく異なることは有名です。それぞれの時代には、その特徴から「〇〇の時代」という呼称が付けられ、定着しています。

例えば、1904年から1906年は「バラ色の時代」と呼ばれ、ほかの時代に比べて明るい色調が作品に積極的に取り入れられました。これには、新しい恋人と知り合ったことが影響していると言われています。

1909年から1912年は「分析的キュビスムの時代」です。この時代にピカソは立体主義とも呼ばれるキュビスムの手法を昇華させていきました。静物や人物を主な対象に捉え、徹底して分解し、再度構築を重ねていったのです。その結果として、作品によってはなにが主題になっているのかわかりにくい作品もあります。ピカソの絵が難解といわれる所以は、この時代にあるのかもしれません。

1937年から1945年は「ゲルニカ・戦争の時代」にあたります。1937年に描かれた超大作・ゲルニカが由来です。ゲルニカはナチス・ドイツによるスペインのゲルニカ爆撃の様子を描いた作品で、ピカソの代表作ともいわれる作品です。

ピカソ美術館は、特に「青の時代」の作品が充実しています。1901年から1904年の若きピカソが、不安定な心理によって生まれた心象を、青色を主に用いて絵に表現した時代です。19歳のときに親友が自殺したことをきっかけに、不安定な心理が生まれたといわれています。社会で苦しむ人々の描写は、若きピカソの心の葛藤をそのままキャンバスにぶつけたものでしょう。

ここからはピカソ美術館の主要なコレクションを紹介します。

・《科学と慈愛》1897年パブロ・ピカソ

本作品は、ピカソが15歳のときに制作した作品で、マドリードの個展にて佳作に選ばれた作品です。古典的な手法で描かれており、写実的かつ緻密な描写に、キュビスム時代のピカソの作品とはかけ離れた印象を抱くでしょう。当時のピカソが既に持っていた、高いデッサン力と表現力を伺わせる作品です。

画面の中央に描かれているのは、ベッドに横たわる患者です。その手を握るのは医師らしき男性、画面奥には幼子を抱いた修道女が描かれています。患者と思しき人物は、助かる見込みがないのかもしれません。病室には悲しみの感情が漂っているように感じられます。本作品は題名にある通り、医師の男性が科学を、修道女の女性が慈愛を表現しているとされています。写実的かつ古典的な作品から、初期のピカソの芸術性を感じ取ることができるでしょう。

・《ラス・メニーナス》1957年パブロ・ピカソ

(Public Domain /‘Las Meninas’by Diego Velazquez. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

本作品の題材は、17世紀のスペインで活躍した画家ディエゴ・ベラスケスによって、1656年に制作された作品です。中央に描かれたマルガリータ王女を中心として表現された、複雑な構図と心理描写は、西洋絵画のなかでも特に盛んに分析がおこなわれてきました。この「ラス・メニーナス」は、シュルレアリスムの巨匠サルバドール・ダリをはじめ、もちろんピカソ、そして多数の芸術家が題材にしてきた作品です。現在はマドリードのプラド美術館に所蔵されています。

晩年のピカソは、「ラス・メニーナス」を題材にした作品をいくつも制作してきました。その総数は58点にものぼるといいます。ピカソ美術館には「ラス・メニーナス」のための特別な空間があり、そこにいくつかの作品がまとめて展示されています。ベラスケスの描いた作品とは大きく異なる描写と豊かな色彩に、ピカソなりの解釈が大きく反映されています。ピカソの描いたさまざまな形の「ラス・メニーナス」を、ぜひ楽しんでみてください。

◼︎おわりに

スペイン・バルセロナにあるピカソ美術館の歴史やコレクションを紹介してきました。ピカソ美術館は、フランス・パリやピカソの故郷であるスペイン・マラガにもあります。所蔵作品が大きく異なりますので、チャンスがあればすべてを巡ってみるのもおもしろいでしょう。

ピカソというと幾何学的なキュビスム時代の作品がイメージされがちですが、今回ご紹介した作品のように写実的で古典的な作品もあるのです。異なる作風のピカソ作品を鑑賞することで、新しい発見があるかもしれません。

ピカソ美術館があるバルセロナは、アントニ・ガウディによって制作された作品が彩る芸術の街でもあります。世界遺産サグラダ・ファミリアやグエル公園など、ガウディの作品を至る所で見ることができます。

美術館も豊富にあり、国立カタルーニャ美術館やバルセロナ現代美術館等、数々の見ておきたい場所があるので、ピカソ美術館と合わせて、ぜひ美術館巡りをしてみてはいかがでしょうか。

公式HP:http://www.bcn.cat/museupicasso/ca/exposicions/jamais-oscar-dominguez-pablo-picasso.html

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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