ビルバオ・グッゲンハイム美術館:現代建築の傑作で楽しむ近現代美術コレクション

◼︎はじめに

スペイン北部のビルバオにあるビルバオ・グッゲンハイム美術館は、美術館そのものがひとつの芸術作品として知られています。建築家フランク・ゲーリーによって設計された建物は脚光を浴び、大きな経済効果を生み出しました。館内では現代芸術を中心としたコレクションを展開しており、ほかでは見られない希有な作品群は、建物同様に注目を集めています。スペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館の歴史やコレクションをご紹介しましょう。

◼︎ビルバオ・グッゲンハイム美術館とは

スペイン北部にあるバスク州の街ビルバオは、旧市街のカラフルな街並みと石畳が続くヨーロッパ然とした雰囲気が魅力の場所です。ビルバオ・グッゲンハイム美術館はそんなビルバオにあります。市内を流れるネルビオン川沿いに建てられた美術館は、まるで船のような特徴的な外観と、キラキラと輝く魚のうろこのような装飾が最大の特徴でしょう。1997年の開館以降、地域一帯に大きな経済効果をもたらし、訪れる観光客の数は約3倍にまで増加したといいます。

ビルバオ・グッゲンハイム美術館は、ニューヨークにあるソロモン・R・グッゲンハイム美術館の分館のひとつです。運営するグッゲンハイム財団は、世界中に分館を造るという構想を持っています。現在ある分館は、ここビルバオ・グッゲンハイム美術館に加え、イタリアのヴェネツィアにペギー・グッゲンハイム・コレクションが建てられています。過去の分館としては、アメリカのラスベガスやドイツのベルリンにかつてありましたが、現在は閉館しています。

建物の設計を担当したのは建築家フランク・ゲーリーで、1989年に建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を受賞したことで知られています。ビルバオ・グッゲンハイム美術館はゲーリーにとって初めての美術館建築となりましたが、斬新な構造の建物は大きな注目を集め、開館の翌年にあたる1998年に建築芸術賞を受賞しました。脱構築主義建築の傑作といわれる建物は、まるで生物のように滑らかで優美な曲線を描いています。表面は極薄のチタンを採用し、そのほかガラスや石灰岩を採用することで、明るくかつ重厚な雰囲気を生み出しています。

美術館の展示スペースは約11,000平方メートルと広大で、展示室は19部屋になるといいます。展示されているコレクションの大もとはグッゲンハイム財団が所蔵していたものですが、美術館開館の際に新しく制作を依頼した作品もあるそうです。常設展示の約3割は地元バスク州出身の芸術家のもので、作品を通して地域の特性を伺い知ることもできるでしょう。

◼︎ビルバオ・グッゲンハイム美術館のコレクション

現代美術作品を中心に展示をおこなっているビルバオ・グッゲンハイム美術館では、絵画から空間を使った大規模なインスタレーションまで、幅広く展示をおこなっています。

美術館を訪れるとまず出迎えてくれるのは、アメリカの芸術家ジェフ・クーンズによって制作された巨大な子犬像「パピー」です。制作者のジェフ・クーンズはネオ・コンセプチュアル・アートを代表する芸術家で、大規模な絵画や彫刻作品で知られています。本作品「パピー」も高さ12.4m・重量15トンと、とても巨大な作品です。もともとはシドニー現代美術館に所蔵されていたものが、ビルバオ・グッゲンハイム美術館へ海を渡って移送され、展示されています。

テリアを模した「パピー」は、まさに美術館の看板犬です。鉄の基礎に土が埋め込まれており、その表面は季節によって異なる緑や花々が覆っています。特に見頃を迎える春には華やかでよい香りがすることでしょう。パピーは適宜トリミングされ、いつでも綺麗な状態を維持しています。花の植え替えがおこなわれる時期、5月と10月には覆いがかけられ見ることができなくなります。絶対見たいという方は、時期をずらして訪れてみてください。

パピーに挨拶をしたら、次は館内に進んでいきましょう。ここからは館内でみられる主要なコレクションを紹介します。

・《ザ・マター・オブ・タイム》リチャード・セラ

リチャード・セラによる似た作品:The Broad Contemporary Art Museum(ロサンゼルス)で展示

「ザ・マター・オブ・タイム」はアメリカの彫刻家リチャード・セラによって制作された作品です。ひとことでいえば鉄の迷路。見上げるほどに巨大な作品は、美術館のシンボルともいわれています。その見た目からはビルバオの工業時代の繁栄が想像できるでしょう。広大なスペースを占める作品内は入ることもでき、あたかも迷路に迷い込んだかのような錯覚を起こします。

微妙に変化する鉄の角度は、あたかも空間自体が歪んでいるかのようです。この作品のために巨大な空間が確保されたといいますから、その存在感にも納得でしょう。クギをまったく使わずに形成されているため、独特の“うねり”が表現されているといいます。展示室の奥では作品の模型や解説用のビデオがありますで、合わせて見ればより理解も深まるはずです。移動することができないサイト・スペシフィック・アートですので、まさしくビルバオでしか楽しむことができない、特別な作品となっています。

・《無題》1952年−1953年マーク・ロスコ

マーク・ロスコによる似た作品の切手:アメリカ2010年

「無題」は1952年から1953年、アメリカを拠点に活躍したマーク・ロスコによって制作されました。

マーク・ロスコはロシア系ユダヤ人のアーティストで、アメリカを拠点に活躍してきました。抽象表現主義を代表する芸術家の一人です。基本的な人間の感情を率直に表現した作品は、世界中で高い評価を獲得してきました。「瞑想する絵画」など、どこか人間の神秘性や深遠性を掘り下げたような作品は、独特の存在感を放つ傑作として賞賛を浴びています。

ビルバオ・グッゲンハイム美術館に所蔵されている作品「無題」は、カラフルなブロックの側面を拡大したかのようなあざやかな作品です。画面を覆い尽くす赤と黄の原色は、どこか人間の喜びの側面をクローズ・アップしたかのようです。思わず作品の前で立ち止まってしまうことでしょう。

◼︎おわりに

スペインのビルバオにあるビルバオ・グッゲンハイム美術館の歴史やコレクションを紹介してきました。あざやかで可愛らしいパピーから始まる一連のコレクションを、ぜひじっくりと楽しんでみてはいかがでしょうか。

街の再開発が大成功した事例の筆頭に挙げられるビルバオは、今回紹介した美術館以外にも見どころが豊富です。特にカラフルな建物が並ぶ旧市街は、散策するだけで心が踊るでしょう。のんびりと穏やかな雰囲気が楽しめるビルバオへ、ぜひ足を延ばしてみてください。

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※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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