ブレーメン美術館:版画・デッサンのヨーロッパ有数のコレクション

◼︎はじめに

ブレーメン美術館はドイツ北部のブレーメンにある美術館です。ブレーメンに発足した芸術協会のもと、幾度もの拡張工事を経て広く知られてきました。そのコレクションは、14世紀から現代にかけてのヨーロッパの絵画や、約22万点に及ぶ膨大な版画やデッサンで構成されています。

芸術の都ブレーメンにあるブレーメン美術館、その歴史やコレクションをご紹介します。

◼︎ブレーメン美術館とは

ブレーメン美術館はその名の通り、ドイツ北部の街ブレーメンにある美術館です。

1849年に開館し、1902年に拡張され、その後も幾度かの拡張工事を経て、2011年にひときわ大きな増設工事がおこなわれました。1977年にはドイツの建造物遺産に指定されています。

美術館の始まりは、1823年ブレーメンに芸術協会が発足したことがきっかけです。協会設立の目的は美的感覚を普及させることであり、その目的は現在まで達成され続けています。また、芸術協会としてはドイツ最古の部類に入ります。

設立当初は参加者を限定した展覧会を開催し、その入場料によって新しい作品を収集していました。このとき収集されていた油彩画のほとんどは、オールド・マスターすなわち18世紀以前の芸術家のものでした。

これらのコレクションを展示する場所として建設が進められたのが、ブレーメン美術館です。美術館の入り口にはラファエロ、ミケランジェロ、デューラー、ルーベンスの四人の巨匠の石像が設置されました。これは美術館の名誉のためのみならず、歴史上の巨匠に対するオマージュが込められていたのでしょう。

第二次世界大戦で建物は被害を受けるも、コレクションは市外に疎開されており難を逃れました。しかし略奪などの被害にあったものもあり、被害規模は国内の美術館として最大で、現在でも1,500点余りの作品が行方不明となっています。

1951年、戦後の復興を終え美術館の2階は全部屋が使用可能になりました。2011年の大規模な工事を経て、ブレーメン美術館の設備・コレクションはドイツ屈指のものとなっているのです。

◼︎ブレーメン美術館のコレクション

ブレーメン美術館のコレクションの中核は、14世紀から現代にかけてのヨーロッパの絵画、16世紀から現代にかけての彫刻、そして15世紀から20世紀までの総数22万点以上の膨大な版画・デッサンです。

フランスの印象派を代表するクロード・モネにはじまり、印象派の先駆者と称される巨匠エドゥアール・マネ、アメリカの音楽家ジョン・ケージの貴重な作品まで、幅広い作品を目にすることができるでしょう。これだけの規模のコレクションを維持している民営の美術館は、ドイツ国内でもブレーメン美術館だけです。

ここからはブレーメン美術館の見どころとなる、主要な作品を紹介します。

・《緑衣の女》1866年クロード・モネ

(Public Domain /‘Camille’byClaude Monet.Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

「緑衣の女」は1866年、フランスの印象派を代表する画家クロード・モネが、のちに妻となる女性カミーユの全身像を描いた作品です。

クロード・モネは1840年生まれの画家で、フランスの印象派を主導した中心メンバーの一人です。18歳のときから戸外制作に親しんでいたモネは、印象派の中でも特に戸外制作に積極的な人物でした。モネの持つ鋭い観察力と豊かな感受性によって、歴史に残る名作がいくつも描かれています。ジヴェルニーにある家の庭園は、それ自体が芸術作品として人気を集めています。

「緑衣の女」は1866年に制作された作品で、サロン・ド・パリに出品され、見事に入選を果たしました。絵画のモデルになっているのは、のちに妻となる女性カミーユです。カミーユはこのとき19歳、モネと知り合ったばかりのころでした。モネとカミーユは1970年に正式に結婚しています。

背中を向けたカミーユがまとっているのは、鮮やかなエメラルドグリーンのドレス。そして上質そうな質感を伴った黒色の毛皮です。ドレスには縦に縞模様が入り、カミーユの華やかな女性像が表現されています。背景は暗い色で塗られており、ドレスのあざやかな色味を引き立てています。ドレスのシワのひとつまで丹念に描かれた作品ですが、制作期間はわずか4日足らずなのだとか。そう思って作品を見てみると、たしかに素早い筆致の跡に気付くでしょう。

・《ケシ畑》1889年フィンセント・ファン・ゴッホ

フィンセント・ファン・ゴッホはオランダ出身の画家で、ポスト印象派を代表する存在です。感情を率直に表現した大胆な色使いが特徴で、後世の画家に強い影響を与えました。活動初期、オランダで描いた作品の主題は農民であり、現在よく知られているゴッホの作品とは異なる、暗い色調のものがほとんどでした。しかしその後ゴッホの作品は、パリで出会った印象派の作品の影響を受け、明るい色調に変化していきます。南フランスのアルルで描かれた「夜のカフェテラス」は、画家の代表作のひとつでしょう。ゴッホは現在「狂気の天才画家」として尊敬を集めています。

作品「ケシ畑」でキャンバス全体に広がるあざやかな緑の光景、描かれた田畑の様子は季節の変わり目を伝え、あざやかなケシの赤色が目を楽しませてくれます。風にたなびく田畑の姿からは、牧歌的な印象を受けるでしょう。ゴッホ特有の大胆な色使いが目を引く、傑作中の傑作です。

・《パパゲイエン通り》1902年マックス・リーバーマン

(Public Domain /‘Parrot Alley’byMax Liebermann.Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

「パパゲイエン通り」は1902年、ドイツの画家マックス・リーバーマンによって制作された作品です。

マックス・リーバーマンはドイツの画家で、ベルリン分離派の創設者の一人として知られています。ベルリン分離派とは19世紀末から20世紀初頭にかけて発足した芸術家集団のことで、伝統的な芸術からの脱却や分離を掲げたことから、この名称が付けられました。マックス・リーバーマンはそんなドイツ分離派で初代会長を務めた人物です。画家としての活動は評価を集め、ベルリン名誉市民に推挙されるほどの人望を集めていました。

「パパゲイエン通り」が描かれたのは、ベルリン分離派の活動期間中である1902年のことです。穏やかな木陰の下、通りを行き交う人々の姿をキャンバスに描きました。どことなく印象派の作品を彷彿とさせる柔らかな印象を受けます。うららかな陽気が伝わってきそうな、季節感溢れる作品です。

◼︎おわりに

ドイツ北部のブレーメンにある美術館、ブレーメン美術館の歴史や主要なコレクションについて紹介してきました。世界的な名声を誇る巨匠の作品や、充実した版画・デッサンのコレクションを鑑賞しに、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

公式HP→http://www.kunsthalle-bremen.de/de

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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