ボーデ博物館:世界遺産で楽しむビザンティン芸術

ドイツの首都ベルリンにある世界遺産地区「ムゼウムスインゼル(博物館島)」には5つの美術館・博物館があります。そのうちのひとつであるボーデ博物館は、5世紀〜15世紀にかけて発達したビザンティン芸術や世界有数の膨大なコイン・コレクションで知られています。今回はボーデ博物館の歴史やコレクションについて、詳しく紹介していきたいと思います。

◼️ボーデ博物館とは

ボーデ博物館はドイツの首都ベルリンにある世界文化遺産地区、ムゼウムスインゼル(博物館島)にある博物館です。博物館島の北端にあるボーデ博物館はドーム型の屋根が特徴で、ベルリンを流れるシュプレー川沿いにあります。建築家エルンスト・フォン・イーネによってデザインされたその建物は、1904年の完成当時ドイツ皇帝フリードリヒ3世の名前にちなんで「カイザー・フリードリヒ博物館」と呼ばれていました。

現在のボーデ博物館という名称は、初代のキュレーターであるヴィルヘルム・フォン・ボーデにちなんで1956年に改称されました。キュレーターとは博物館や美術館で鑑定や研究をおこなう専門職のことを指します。1997年に一旦の閉館をおこない、2006年に再開館を迎えました。まるで川にせり出した船のような建物の外観は、コレクション同様に人気を博しています。

(Public Domain /‘St. George and the Dragon’byTilman Riemenschneider. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

◾︎ボーデ博物館のコレクション

ボーデ博物館のコレクションは東方教会、特にエジプトで発展したキリスト教の教会であるコプト正教会に関連した所蔵品が豊富にあります。また13世紀〜18世紀にかけての彫刻コレクション、中世イタリアのゴシック期・初期ルネサンス期の彫刻が充実しています。なかでもドイツの彫刻家ティルマン・リーメンシュナイダーの作品は、とりわけ人気を集めています。

またボーデ美術館といえばビザンティン芸術のコレクションが有名です。5世紀〜15世紀の東ローマ帝国で発展した芸術は、ローマ芸術のなかに東洋の独特な文化が入り混じった独自のスタイルを表現しています。ビザンティン芸術は専用のコレクション・ルームが用意されており、穏やかな茶色のモザイク模様が印象的な空間で、ゆったりと芸術鑑賞に浸ることができます。

ここからはボーデ美術館の主要な作品を3つ紹介していきましょう。

・《噴水》ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ

噴水は滑らかな質感の彫像で、イタリアの彫刻家ジャン・ロレンツォ・ベルニーニによって制作されました。

ジャン・ロレンツォ・ベルニーニはイタリアのバロック期を代表する彫刻家で、「ベルニーニはローマのために生まれ、ローマはベルニーニのためにつくられた」と賞賛を浴びるほどの才能を有していた人物です。ベルニーニの制作した作品はときに「芸術の奇跡」とも呼ばれ、一世を風靡するほどの知名度を誇っていました。過去にはイタリアの紙幣に肖像が採用されていたこともあります。

ベルニーニはナポリ出身、彫刻家の家系に生まれ父親も彫刻家として活動している人物でした。父親の仕事ぶりは幼いベルニーニに大きな刺激を与え、のちの飛躍の原動力になったといわれています。若い頃から溢れんばかりの才能に恵まれていたベルニーニは、1618年〜1651

年にかけて制作した4つの彫刻群で名声を獲得しました。ヴァチカンのサン・ピエトロ大聖堂にある「聖ロンギヌス像」やローマのナヴォーナ広場にある「四大河の泉」が代表作でしょう。

噴水はそんな天才彫刻家ベルニーニの手によって制作されました。頭上に実った大振りのブドウに手を伸ばす青年と、青年の足元で物欲しげにブドウを見上げる動物の姿が表現されています。まるで本物の人間のような肉体の表現や、布の質感や指先などの細部に至るこだわりは、天才彫刻家の才能を余すところなく出し尽くした、屈指の名作といえるでしょう。

(Public Domain /‘James II,England, 1688’Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

・《コイン・キャビネット》

コインキャビネットはボーデ博物館でもっとも注目を集めるコレクションのひとつです。世界最大規模のコイン・コレクションの総数はなんと50万点以上ともいわれており、紀元前7世紀に鋳造された初めてのコインから古代ギリシャ・ローマ時代のコイン、中世の貨幣まで時代ごとのコインの歴史を余すところなく公開しています。コイン以外に鋳造に使用する専用の器具の展示もあります。歴史的、芸術的に重要なコインのコレクションは、必見の内容でしょう。

またボーデ博物館に展示されていた、2007年に鋳造された直径53cm厚さ3cmの巨大なコイン「ビッグ・メープル・リーフ」が、2017年に盗難被害にあったことも記憶に新しいでしょう。重量100kgで金の純度が非常に高く、推定価格はなんと4.4億円にもなるのだとか。盗難された金貨は未だに発見されておらず、博物館で見ることは叶いません。表面に施されたエリザベス女王の微笑みを、再度見られる日が訪れることを祈りましょう。

(Public Domain /‘Dancer’by Antonio Canova.Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

・《踊り子》アントニオ・カノーヴァ

踊り子は両手を掲げて軽やかに踊りを披露する女性の、あざやかな瞬間を切り取った立像です。柔らかな女性の肌の質感や服の細かなシワまで表現された彫刻技術の高さに、目を見張るでしょう。今にも動き出しそうなほど、その表情や動きは躍動感に溢れています。

製作者のアントニオ・カノーヴァは1757年生まれ、イタリアの彫刻家です。新古典主義を代表する彫刻家であり、人間の裸体を表現した作品が特に有名です。祖父も父親も彫刻家として活動しており、幼少期から祖父によって芸術の手ほどきを受けていました。少年時代に感謝の意を示すためにバターでライオンの像を作ったという逸話は、その才能をよく表しています。

代表作として知られているのは「ペルセウスとメデゥーサの首」です。勇猛果敢なペルセウスが蛇の髪を持つメデゥーサの首を掴んだ瞬間を表現した作品で、劇的なシーンを溢れる躍動感と共に見事に表現しています。現在はヴァチカン美術館に所蔵されています。また「ベーベー」に代表される、優雅な女性の姿を表現する才能・技術に恵まれていたことも有名です。

◼️おわりに

ボーデ博物館はベルリンを代表する博物館のひとつです。合計5つあるムゼウムスインゼルの美術館・博物館はそれぞれに異なる個性がありますが、ボーデ博物館では美しい立像の数々や世界屈指のコイン・コレクション、専用の部屋が用意されたビザンティン芸術に思いを馳せてみてください。

ベルリンを訪れたときは、ぜひボーデ博物館に足を運んでみてはいかがでしょうか?

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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