マラガ・ピカソ美術館:ピカソの故郷マラガの博物館

スペイン南部のマラガにあるのがマラガ・ピカソ美術館です。親族から寄贈された貴重なプライベート・コレクションを展示した、パブロ・ピカソのための美術館。ここでしか見ることのできない希少な作品群は、世界から訪れる人々を魅了し続けています。そんなマラガ・ピカソ美術館の歴史やコレクションを紹介していきます。

◼︎マラガ・ピカソ美術館とは

マラガは、スペイン南部のアンダルシア州に属しています。20世紀を代表する天才的なアーティストである・パブロ・ピカソはこの街で生まれ、幼少期をこの街で過ごしました。マラガは地中海沿いのリゾート・コスタ・デル・ソルの中心的な地域であり、年間を通して温暖な気候から世界中から多くの人たちが訪れます。紀元前770年にフェニキア人によって建造され、世界的にみても歴史が深い街です。マラガには、大聖堂や闘牛場などがあり、名所が豊富な観光地となっています。

ピカソは父親の仕事の都合で引っ越すまで、約10年の歳月をマラガで過ごしました。ピカソの作品にたびたび登場する鳩のモチーフは、ピカソの生家の正面にある広場に集まった鳩が大きな影響を与えているといわれています。マラガはピカソの生涯にわたって、その思想や作品に少なからず影響を与えてきました。そんな街に2003年に開館したのがマラガ・ピカソ美術館です。

マラガ・ピカソ美術館は、ブエナ・ビスタ宮殿を改装して建造されました。ブエナビスタ宮殿は16世紀に建物されたルネサンス様式とムデハル様式が混合した傑作といわれている建物です。天窓が豊富にあり陽光が注ぐ建物内は明るく、また中庭もあるため開放的な雰囲気です。館内にはカフェやショップも併設されており、中庭にはカフェのテラス席が設置されています。鑑賞後の休憩にも最適でしょう。ショップにはオリジナルグッズも販売されており、お土産にもおすすめです。

ピカソ美術館はその構想から開館までにはおよそ50年の歳月を要しました。この美術館で公開されているのは売りに出ることがなかった、いわゆるプライベート・コレクションで、ピカソの長男の妻とその息子(ピカソの孫)が大切に所蔵していたものでした。その総数は285点にもなります。ほかの美術館では決して目にできない、ピカソの貴重な作品に出会うことができるでしょう。

◼︎マラガ・ピカソ美術館のコレクション

マラガ・ピカソ美術館の壁は白く塗られており、かけられた絵画ひとつひとつにじっくりと向き合うことができます。大きな混雑も少ないため、ゆっくりと芸術鑑賞に浸れることでしょう。

美術館に所蔵されている作品のなかでも、特に注目を集めているのがピカソの愛人をモデルにした作品群です。ピカソは絵画制作をしている時間帯を除いて一人でいることができなかったと言われています。そのため生涯を通じて恋人や愛人の存在がかたわらにあり、また彼女たちに注ぐ情熱や愛情を糧にして、さまざまな名作を完成させていきました。美術館にはそんな愛人たちをモデルにした作品が多数所蔵されています。作風の変化も同時に楽しむことができるでしょう。

またピカソが名声を獲得する前に描いた、特に10代頃の貴重な作品も所蔵されています。ピカソといえば青の時代やバラ色の時代など、時代ごとに作風が異なることでも知られていますが、美術館にはそんな〇〇の時代と呼ばれる以前の作品、10代の少年期に描いた作品もあるのです。とはいえ、その時代にさえピカソの芸術的素養は圧倒的です。展示された作品を通して、ピカソが天才たる所以を十分知ることができるでしょう。ぜひそこも注目してみてください。

ここからはマラガ・ピカソ美術館の主要なコレクションを紹介します。

・《手を組んで座るジャクリーヌ》1954年パブロ・ピカソ

ジャクリーヌはピカソが80歳のときに結婚した、2人目の妻となった女性です。1953年に二人は出会い、およそ8年間の同棲の末、結婚にいたりました。出会った当時のジャクリーヌの年齢は26歳だったといいますから、2人の年齢差は46歳にもなります。ピカソは年の離れたジャクリーヌをモデルに作品を描き続けました。その総数は400枚以上になり、ピカソと関係のあった女性のなかで、ジャクリーヌはもっとも多くモデルを務めた女性ともいわれています。

ピカソが1954年に描いたのが本作品・手を組んで座るジャクリーヌです。黄色と青色の背景にうずくまるようにして描かれた女性像。キュビスムの手法を用いて対象を分解、再構成することによって描かれました。優しさのなかに凛とした女性の意志の強さを感じさせる作品となっています。

・《ローラの肖像》1894年パブロ・ピカソ

ローラの肖像を描いたのは13歳のパブロ・ピカソ、自身の妹をモデルにした肖像画からは、少年期のピカソの芸術的な素養と技術が、たしかに感じ取れるでしょう。優しいタッチで捉えた女性特有の柔らかさは、兄としてのピカソの愛情に満ち溢れています。淡い色使いからは当時のピカソの感情さえ伝わってくるようです。天才の片鱗を覗かせる少年期の傑作といえます。

◼︎おわりに

20世紀を代表する天才的な画家・パブロ・ピカソ。その出身地であるマラガの、マラガ・ピカソ美術館の歴史やコレクションを紹介してきました。ピカソは少年期から画家である父親から技術を学び、またその才能を伸ばしていきました。ピカソといえばキュビスム時代の立体的な絵画作品が有名ですが、この美術館ではそれ以外の、むしろ写実的で細部にわたる表現技法を磨いていた時代の作品を多数楽しむことができます。また、オブジェなどの展示もあります。

さらに、美術館の地下には古代フェニキア時代の遺跡が広がっています。こちらの展示はピカソには関係ないものですが、考古学に興味があれば訪れてみるのもおすすめです。歴史を重ねた遺跡は芸術鑑賞の息抜きになるでしょう。古代文明に思いを馳せてみるのもおすすめです。

マラガにはピカソ美術館以外にもピカソの生家やピカソが洗礼を受けたサンティアゴ教会など、ピカソゆかりの場所が豊富にあります。生家ではピカソの父親の作品が展示されていたり、教会ではピカソの出生証明書が展示されていたりと、さまざまな角度からピカソのことを知ることができるでしょう。スペインを訪れたら、ぜひマラガに足を延ばしてみてください。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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