ルートヴィヒ美術館:ヨーロッパ最大級のパブロ・ピカソのコレクション

ドイツのケルンにあるルートヴィヒ美術館は、ヨーロッパ最大級のパブロ・ピカソのコレクションを揃えていることで知られています。またアンディ・ウォーホルやロイ・リキテンスタインなど、現代アートを代表する芸術家の作品を所蔵していることでも有名で、1986年の開館以来、ケルンの芸術鑑賞のメッカとなっています。ここでは、ルートヴィヒ美術館の歴史やコレクションを紹介していきます。

◼️ルートヴィヒ美術館とは

ルートヴィヒ美術館はドイツのケルンにある美術館です。ケルンは世界遺産のケルン大聖堂がランドマークとして知られている街で、ルートヴィヒ美術館はそのすぐ裏手に位置しています。

ルートヴィヒ美術館は1976年、ペーター・ルートヴィヒ夫妻が蒐集していた約350点の現代アート・コレクションをケルンに寄贈したことがきっかけで設立されました。美術館が開館したのは1986年のことです。ルートヴィヒ・コレクションと称された作品群は、キュビスムの代表的な画家パブロ・ピカソをはじめ、1910年代〜1930年代初頭にかけてロシアで発生した芸術運動ロシア・アヴァンギャルドの作品などが含まれていました。

ルートヴィヒ・コレクションは、もちろん現在もルートヴィヒ美術館の所蔵品の中核にあります。また1914年〜1939年にかけて制作された作品を集めたハウビリッヒ・コレクションも、美術館の重要なコレクションのひとつです。そのほか19世紀〜20世紀の写真や空間を使ったインスタレーションなど、時代や様式に捉われない幅広い作品がルートヴィヒ美術館に所蔵されています。特に現代アートの歴史の変遷を、独自の展示法を通して知ることができるでしょう。

◼️ルートヴィヒ美術館のコレクション

ルートヴィヒ美術館のコレクションの中心にあるのは、ヨーロッパ最大級の所蔵数を誇るパブロ・ピカソの作品です。またアンディ・ウォーホルやロイ・リキテンスタインなど、ポップアートを代表する画家の作品、抽象絵画などのコレクションも充実しています。

ここからはルートヴィヒ美術館のコレクションの中で主要な作品を紹介します。

(Public Domain /‘Lady in a Green Jacket’byAugust Macke. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

・《緑のジャケットを着た女》1913年アウグスト・マッケ

緑のジャケットを着た女は1913年、ドイツの画家アウグスト・マッケが制作した作品です。

アウグスト・マッケは1887年生まれ、20世紀初頭に活躍したドイツの画家です。鮮烈な色合いを用いながらも幻想的な柔らかなタッチが特徴です。カンディンスキーやフランツ・マルクが中心メンバーの芸術家サークル「青騎士」の活動に参加したことも知られています。2回おこなわれた青騎士展のいずれにも参加し、高い評価を獲得してきました。

画家としての活動初期にはフランスの印象派やポール・セザンヌの影響を受け、1910年に青騎士の中心メンバーとなるフランツ・マルクに出会い才能を開花させていきます。残念ながら第一次世界大戦で亡くなってしまい、画家としての活動期間はわずか数年間となっていますが、没年である1914年に描かれた水彩画は彼に対する評価をより高いものへと押し上げました。

緑のジャケットを着た女は、アウグスト・マッケの特徴である鮮烈かつ柔らかなタッチで表現された傑作として知られています。木々の緑や周囲の人々、その中心に立つ緑の服を着た女性、心なしかうつむいたような女性の仕草は儚さを感じさせます。ぼかしたような柔らかい筆致から、主役となる女性の感情まで想像することができるでしょう。

・《アーティチョークの女》1941年パブロ・ピカソ

アーティチョークの女は1914年、キュビスムの創始者パブロ・ピカソによって制作されました。

パブロ・ピカソはスペインのマラガ出身、活動拠点をフランスに置いていた画家です。ジョルジュ・ブラックと共にキュビスムという技法を創始した人物としても有名です。キュビスムは立体派ともいわれる芸術運動で、対象をいくつもの角度から観察しひとつの作品の中に収めることで完成します。独特の角ばった表現方法は、ピカソの名声を確固たるものにしました。その原点といわれる1907年の「アヴィニョンの娘たち」は、誰もが一度は目にしたことのある屈指の名作です。

アーティチョークの女では、アーティチョークのようなものを手に椅子に腰掛ける女性の姿が描写されています。黄色や青、緑の鮮やかな衣装をまとった女性はなにを考え、そして思いついたのでしょうか?ピカソ独自の立体的な表現が楽しめるキュビスムの代表作のひとつです。

・《ペルヴィニャン駅》1965年サルバドール・ダリ

ペルヴィニャン駅は1965年、シュルレアリスムを代表する画家サルバドール・ダリによって制作された作品です。

サルバドール・ダリはシュルレアリスムを代表する人物で、自身を天才と称し数々の奇行や逸話で知られています。きっちりと固められた口髭と目を見開いたダリの顔は、それ自体がひとつの芸術作品として認知されています。少年時代から絵画に興味を持ち、絵画制作のほか彫刻や映画制作などにもたずさわり、さまざまな方面に足跡を残していきました。現在まで伝わる奇行やパフォーマンスに目がいきがちですが、その本質はダリ自身の純粋な好奇心が表出したものなのでしょう。

本作品・ペルヴィニャン駅の本当のタイトルはとても長く、世界一長い絵画のタイトルともいわれています。モチーフとなっているペルヴィニャン駅はダリにとって特別であり、彼にとっての宇宙の中心だとされていた場所です。作中では中央から放射状に光が放たれ、その上部に蒸気機関車が描かれています。周囲にはさまざまな人間像が描写され、その中にはダリ本人も描かれているのだとか。非現実性をふんだんに盛り込んだ、ダリの世界観を堪能できる作品といえるでしょう。

◼️おわりに

世界遺産の街ケルン、その中にあるルートヴィヒ美術館の歴史やコレクションを紹介してきました。特に中核となっているルートヴィヒ・コレクション、パブロ・ピカソの充実の作品群は見ごたえがあります。また世界有数の貴重な現代アートの数々もぜひ鑑賞してみてください。

ケルンはルートヴィヒ美術館以外に世界遺産のケルン大聖堂やケルン中央モスクなど、見どころとなる建物や施設が充実しています。ドイツを訪れたらぜひケルンへ、ルートヴィヒ美術館へ、足を延ばしてみてはいかがでしょうか?

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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