旧国立美術館:ドイツ有数の19世紀の絵画・彫刻コレクション

旧国立美術館はドイツの首都ベルリンにある美術館です。1999年にユネスコの世界遺産に認定された博物館島の中央にあり、有名な19世紀の絵画・彫刻コレクションは世界各国から訪れた人々を魅了してやみません。ここでは旧国立美術館の歴史やコレクションについて紹介していきます。

◼️旧国立美術館とは

旧国立美術館はドイツのベルリンにある世界遺産「博物館島」の中央にあります。ベルリンを流れるシュプレー川の中洲にある博物館島には5つの博物館と美術館があり、旧国立美術館はその一角を担っています。美術館の建設計画は1815年から開始され、1861年に建設が決定し、建築家のフリードリヒ・アウグスト・シュテーラーが1863年から設計をおこないました。美術館が開館を果たしたのは1876年のことです。

建物はローマ様式の寺院をモデルにしており、古典主義様式と新ルネサンス様式が混合された豪奢な作となっています。まるで古代宮殿のような外観は、コレクション同様に注目を集めています。

建設計画から決定に至るまで、約50年の時を経ている旧国立美術館ですが、設立が正式に決定した背景には、あるひとつの出来事がありました。それは銀行家ヨハン・ハインリヒ・ワグネルから、262点の絵画が寄贈されたことです。開館当初のコレクションのほとんどはこのワグネルから寄贈された絵画で、現在も旧国立美術館のコレクションの中核になっています。美術館の開館後、1909年〜1933年まで館長を務めたルートヴィヒ・ユスティのもと近現代の作品が増加し、より一層のコレクションの充実が図られてきました。

ベルリンのほかの博物館や美術館と同様に、旧国立美術館も第二次世界大戦で甚大な被害を受けました。その被害の修復の目処がつき、一部が再開館を果たしたのは1949年のことでした。1998年〜2001年にかけて改修が施され、旧国立美術館の魅力はさらに引き上げられました。

◼️旧国立美術館のコレクション

旧国立美術館のコレクションの中心は19世紀の絵画や彫刻です。その分野も幅広く古典主義やロマン主義、フランスの印象派や初期モダニズムなど多岐にわたります。風景画が有名なドイツの画家カスパー・ダーヴィト・フリードリヒや、印象派を代表するクロード・モネ、現代画ではアドルフ・フォン・メンツェルなど、世界的な巨匠の作品が充実して展示されています。

ここからは旧国立美術館の主要なコレクションを紹介します。

(Public Domain /‘The monk by the sea’byCasparDavid Friedrich. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

・《海辺の僧侶》1808年−1810年カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ

海辺の僧侶は1808年から1810年、ロマン主義を代表するドイツの画家カスパー・ダーヴィト・フリードリヒによって制作されました。

カスパー・ダーヴィト・フリードリヒはドイツのグライスヴァルト出身の画家で、ロマン主義を代表する存在として知られています。コペンハーゲンやドレスデンの美術アカデミーで学び、主に神秘的・幻想的な情景を描いた風景画を描いていきました。自然の風景やはるか先の遠景を描いたものなど、どこか静寂さを伴う独特の作風は、画家の持つ人生観が大いに反映されていたのでしょう。まるで、もやのなかをさまようような感覚を抱かせる作品が残されています。

本作品「海辺の僧侶」の画面の大部分を占めているのは、霧がかった空の風景です。地面にたたずんでいるのは一人の僧侶で、この僧侶は人間の孤独性を表現しているといわれています。鑑賞者は自然と僧侶と一体になり、霧がかった空を見上げ、人間の孤独と向き合うことができるような、そんな代表作です。また本作品はプロイセン王室が買い上げた作品としても知られています。画家の神秘的・幻想的な世界にじっくり浸ることができるでしょう。

(Public Domain /‘The Iron Rolling Mill’byAdolph Menzel. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

・《鉄圧延機工場》1872年−1875年アドルフ・フォン・メンツェル

鉄圧延機工場は1872年から1875年にかけて、アドルフ・フォン・メンツェルによって制作されました。

アドルフ・フォン・メンツェルは挿絵画家としても有名な画家です。1839年から1842年にかけて「フリードリヒ大王伝」のために400点の挿絵版画を手がけ、名声を獲得しました。この挿絵版画の成功から、プロイセン宮廷での仕事なども獲得しています。ベルリン名誉市民にも選出されており、まさにドイツを代表する画家の一人に挙げられるでしょう。

本作品は産業革命期の製鉄工場のシーンを描いたもので、熱気にまみれ汗をかきながら作業に没頭する労働者の姿を描写したものです。工場の熱気や火花の飛び散り、現場の騒音なども聞こえてきそうなほど、細部にわたって細かく描かれています。その迫力のある表現からは、労働者への尊敬の念を感じとることができるでしょう。画家の思想が大いに反映された傑作といえます。

(Public Domain /‘Friederike von Preußen’byJohann Gottfried Schadow. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

・《皇女フリーデリケの像》ヨハン・ゴットフリート・シャドウ

皇女フリーデリケの像はドイツの彫刻家ヨハン・ゴットフリート・シャドウによって制作されました。

ヨハン・ゴットフリート・シャドウはドイツを代表する彫刻家で、1814年にベルリン芸術家協会を設立し、議長の座に就任した人物としても知られています。1776年から絵の勉強を始めるも、1778年から彫刻家を心指し、技術を学んで行きました。1785年からヴェネツィア、フィレンツェ、ローマとイタリア各地を転々として過ごしています。1787年にベルリンに戻り、芸術アカデミーの教授や校長など、さまざまな舞台で活躍してきました。

本作品のモデルとなっているのは、メクレンブルク女公として生まれたフリーデリケ・ツー・メクレンブルクです。フリーデリケには三人の姉がおり、美人姉妹として知られていました。生涯3度の結婚を経て、プロイセン王女・ハノーファー王妃となった人物です。

ヨハン・ゴットフリート・シャドウの手によって彫られたフリードリヒの全身像は、いうまでもなく優美かつ華やかな印象です。髪や肌、布の質感まで丁寧に表現された彫刻は、旧国立美術館を代表するコレクションのひとつでしょう。まるで本物の命が吹き込まれたかのような彫刻の出来栄えに、感嘆することは間違いありません。

◼️おわりに

ドイツのベルリンにある旧国立美術館の歴史やコレクションを紹介してきました。博物館島にある5つの博物館や美術館のなかでも、旧国立美術館のコレクションの充実度は屈指のもので、特に19世紀の絵画・彫刻を鑑賞するのには打ってつけの場所です。ドイツを訪れたらベルリンへ、そして旧国立美術館へ、足を延ばしてみてはいかがでしょうか?

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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