旧博物館:世界に馳せる圧巻の古美術コレクション

旧博物館はドイツのベルリンにある世界遺産地区、通称博物館島の一角にある博物館です。新古典様式の神殿のような建物内では、古代ギリシャ・ローマ時代のコレクションを中心とした古美術品が所狭し並んでいます。世界有数の貴重な品々が勢揃いした旧博物館の、歴史やコレクションを詳しく紹介していきます。

◼️旧博物館とは

ドイツの首都であるベルリンの世界遺産地区、通称博物館島には5つの美術館・博物館があります。旧博物館はその一角を占めており、博物館島で最古の歴史を誇る施設です。建造当時、芸術は貴族から一般大衆に広く普及している時代でした。それに着目した当時のプロイセン王国の国王・フリードリヒ・ヴィルヘルム3世が、王室コレクションを広く一般に公開しようとしたのが旧博物館創設のきっかけです。

建物の設計を担当したのは18世紀のドイツを代表する建築家であるカルル・フリードリヒ・シンケルで、1825年〜1830年にかけて建設されました。ベルリンの都市計画や設計を担当したシンケルの作品でも、旧博物館は傑作として知られています。新古典様式を採用した建物はギリシャの古代宮殿を彷彿とさせるデザインになっており、正面にイオニア様式の18本の柱が設置されています。1845年まで王立博物館と呼ばれていましたが、改称され現在の名称になりました。

館内は2階建て構造になっており、入口をくぐるとすぐに円形のロビーが現れます。ロタンダと呼ばれるこのロビーには23mの半円状の天窓が設置されており、周囲は20本の円柱で囲まれています。柱の間に美しい立像が設置されており、鑑賞気分を盛り上げてくれるでしょう。ロタンダ上部の壁面でみられる長方形のくぼみを使った装飾は、ローマにある神殿・パンテオンにもみられるもので、建物の持つ神秘性を際立たせてくれています。

このように旧博物館は建物自体も非常に価値が高く、また注目を集めているものです。そんな旧博物館のコレクションは、一体どのようなものなのでしょうか?

◼️旧博物館のコレクション

旧博物館のコレクションの中心は古美術品と呼ばれるアンティーク・コレクションです。旧博物館の当初のコンセプトはベルリンのあらゆる美術品を収蔵することでしたが、1904年以降は古美術品のみを蒐集対象にしてきました。特に充実しているのは古代ギリシャ・ローマ時代の彫刻や陶器のコレクションです。

ここからは旧博物館のコレクションの中から、主要となる作品を紹介します。

・《獅子狩人》1861年クリスチアン・ダニエル・ラウフ

旧博物館の正面にある彫刻が、ドイツの彫刻家クリスチアン・ダニエル・ラウフが試作を担当した作品、獅子狩人です。クリスチアン・ダニエル・ラウフは19世紀のドイツでもっとも有名な彫刻家と呼ばれた人物で、ベルリンの彫刻学校を設立したことでも知られています。

獅子狩人は騎乗の狩人がライオンを仕留める瞬間を表現した作品で、真に迫らんばかりの狩りのシーンがありありと描かれています。狩人が振りかざした槍の先には、地面に転がりながらも必死にもがくライオンの姿があり、細部まで表現された狩人の表情、馬のたてがみ、そしてライオンの獰猛かつ堂々とした姿に、固唾を飲むはずです。クリスチアン・ダニエル・ラウフが試作をしたのち、アルベルト・ヴォルフによって、彫刻は完成へと導かれました。

獅子狩人は対をなすもう一基の彫刻、猛獣と戦うアマゾネスと一緒に旧博物館の正面に設置されています。馬に乗り槍を手に、今まさに襲いかかってきている猛獣と戦うアマゾネスの姿を描いた傑作です。躍動感溢れる2つの彫刻作品から、劇的な感動を劇的な感動を受けることができるでしょう。

・《ベルリンの女神》紀元前580年〜紀元前560年頃

(Public Domain/‘Berlin Goddess’Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

ベルリンの女神は柔らかな微笑みを浮かべる少女の石像です。紀元前570年〜紀元前560年頃にかけて制作されたといわれています。出土したのはギリシャのアッティカ地方で、古代ギリシャの伝統的な衣装・ヒマティオンを両肩からショールのように羽織っています。わずかに赤みがかった色合いも特徴ですが、イヤリングやブレスレットなど、さまざまな装飾品を身につけていることも特徴でしょう。服のヒダまで表現された石像から当時の技術の高さが伺えます。

ベルリンの女神像は左手を曲げながら胸元にあて、右手には小さなザクロ、髪の毛は後ろ側で結い、頭には帽子を乗せています。なにかの祈りを捧げているかのような立ち姿は、どことなく神に仕える女性のような雰囲気を漂わせています。女神像の微笑みは、当時のギリシャの文化を鮮明に伝えてくれるはずです。

・《祈る少年》紀元前300年頃

(Public Domain /‘Bronze Statue of Young Boy -Praying boy’Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

ギリシャのパロス島で出土した祈る少年のブロンズ像は、旧博物館でもっとも貴重なコレクションのひとつとされています。ルネサンス以降さまざまなコレクターの手を経て、旧博物館のコレクションに加わりました。完璧といわんばかりの細部にわたる人間像の表現は、紀元前4世紀に活躍した彫刻家・リュシッポスのスタイルを参考にしたものといわれています。リュシッポスはギリシャ古典時代の三大彫刻家といわれ、若い頃はブロンズ細工師を務めていました。

祈る少年のブロンズ像は、裸のまま天に向かって両手を広げなにかを受け入れようとしているかのようです。もしくは神に祈り、その祈りを天に向かって捧げているのかもしれません。慈愛に満ちた表情からは、いくつもの解釈が生まれてくるでしょう。指先や髪の毛、細部に及ぶ丹念な彫刻技術の結晶は、紀元前に制作されたとは思えないほどの完成度を誇っています。

◼️おわりに

1830年に開館を迎えた旧博物館は、時代を超えてドイツの人々に愛されてきました。そして現在、旧博物館は世界遺産・博物館島を代表する施設のひとつとして、世界中の観光客が訪れるベルリン屈指のスポットになっています。新古典様式の建物や美しい円形のロビー・ロタンダ、そして古代の貴重なアンティーク・コレクションを、じっくり鑑賞してみてください。

博物館島には新博物館やペルガモン博物館など、合計5つの美術館・博物館があります。ベルリンを訪れたらぜひこれらの施設と合わせて、旧博物館を訪れてみてはいかがでしょうか?

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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