国立装飾美術館:15世紀からの宝飾・装飾・調度品のコレクション

スペインの装飾品や宝飾品、調度品のコレクションをメインに展示されている美術館が国立装飾美術館です。15世紀から20世紀にかけての希少な品々を、当時の生活様式を再現した部屋と共に公開しています。マドリードにあるほかの美術館とは異なった、個性豊かな時間を楽しめるでしょう。ここでは国立装飾美術館の歴史やコレクションを紹介していきます。

◼︎国立装飾美術館とは

国立装飾美術館はスペインの首都・マドリードにある美術館です。国立の美術館として運営されており、1962年には「歴史的な芸術的記念碑」として賞賛を浴びました。館内では15世紀から20世紀にかけてのヨーロッパ各地、特にスペインの宝飾品などを展示しています。

美術館の前身は1871年に建てられたという美術学校でした。1912年に国立装飾美術館が設立され、同年に館の名称も国立装飾美術館に改称されています。1932年に現在の立地、マドリードの中心部に移転し、建物も現在のものに移転しました。建物は19世紀後半の貴族の屋敷を改装したもので、レンガ造りのクラシックな外観が特徴です。マドリードの一角に溶け込んだ美術館内は吹き抜けになっており、一階から五階まで開放感のある造りとなっています。

美術館で楽しめるのは豪華な装飾品や宝飾品をはじめ、時代ごとの様式を再現した部屋などです。食堂や寝室などを通して当時の暮らしぶりを想像することができるでしょう。1世紀ごとに異なる部屋の装飾や様式を知ることで、時代の変遷を感じることもできるはずです。チェス盤が設置されたテーブルなど、貴族のたしなみとして使われていた調度品にも注目です。

◼︎国立装飾美術館のコレクション

国立装飾美術館のコレクションの総数は約70,000点にもなります。装飾品や宝飾品、調度品をはじめ、織物やガラス製品もコレクションに含まれており、なかには仏像や扇子など、東洋美術に関連した品々もあります。東洋美術のコレクションは1759年から1788年まで在位したカルロス3世の収集したものです。カルロス3世は誠実な人柄で、荒廃したマドリードの街並みを整備し近代化させた功労者としても知られています。

東洋然とした仏像はもちろん、どこか西洋の香りを漂わせる扇子の構図には目新しさを感じるでしょう。モチーフとなっているのは東洋の建物のほか、西洋の貴族が描かれたものなどもあります。そのほか紙細工や肖像画などの絵画コレクション、マイセンやセーヴルなど、ヨーロッパを代表する陶器のコレクションも充実しています。

ここからは国立装飾美術館の主要なコレクションを紹介します。

・18世紀のバレンシアの台所

美術館の最上部にあるのが、18世紀のバレンシアの台所を再現した部屋です。バレンシアといえばマドリードとバルセロナに次いで国内第三の街として知られ、地中海性気候という温暖な環境からスペイン屈指の観光都市としての地位を確立している場所です。また、スペイン名物のパエリア発祥の街としても知られています。豊かな海産物は美食家の舌を唸らせています。

美術館に再現されたバレンシアの台所は、市民戦争で崩壊した建物から運び出され、1941年に美術館で再建したものです。総数1604枚のタイルを使用した空間は、あざやかな装飾画で満たされています。白色を基調としたタイルにはウサギやネコ、魚などが描かれており、華やかで楽しげな雰囲気を生み出しています。食器や料理を手ににこやかに給仕をしているのは貴族風の男性で、ドレスをまとった女性も散見されます。

カラフルな空間は、料理をする気分を盛り上げてくれていたのではないでしょうか。3つあるコンロの下には引き出しがついており、なかに炭を入れて加熱調理をおこなっていたそうです。18世紀のバレンシアの暮らしぶりが如実にわかる、美術館屈指のコレクションとなっています。

・東洋の扇子コレクション

日本で扇子といえば和の雰囲気を感じるものが定番ですが、装飾美術館には西洋の貴族らしき人物像を描いた独特なデザインのものが所蔵されています。金色の持ち手に茶色の紙、奥の壁はレンガ造りになっており、大振りの花の描写がどこか大胆な印象を与えるでしょう。まるで西洋の貴族の風景を描いたかのような、個性的な絵柄は希少なものでしょう。

ほかにも中国風の宮殿の様子を描いたものや、風景を描いたものなど、さまざまなモチーフを描いた扇子が展示されています。スペインで感じる東洋の香り、千差万別な扇子の絵柄をじっくり楽しんでみてください。

・ドールハウス

ドールハウスは人形の家ともいわれる模型の家で、19世紀のヨーロッパで特に流行した文化です。特に女の子から大きな人気を集めました。装飾美術館に展示されたドールハウスはキャビネット状のガラス張りになっており、それぞれの室内の様子が横から眺められるようになっています。まるで館内に展示された調度品が縮小され、配置されたかのような錯覚を覚えるでしょう。精巧に作られた絨毯やベッド、家具などの出来栄えに感嘆するはずです。

パンや食器などの細かいパーツや壁にかけられた肖像画まで細部にわたるこだわりは、まさしく職人技の賜物といえます。作り込まれた椅子や机、棚などからは、並々ならぬ情熱が感じられます。なぜそれほどまでに子供たちの間で広まったのか、その理由がよくわかるでしょう。ドールハウスに置かれた人形は、あたかもそのなかで実際に暮らしを営んでいるかのようです。職人のこだわりが現れたドールハウスは、美術館で必見のコレクションといえます。

◼︎おわりに

スペインの首都マドリードにある国立装飾美術館の歴史やコレクションを紹介してきました。豪華な装飾品や宝飾品のコレクションを通して、スペインの時代の変遷を知ることができるでしょう。また、階を進めるごとに年代が新しいものに変わっていきます。最上階までたどり着く頃には、時代ごとの生活様式の特徴も自然と理解できているでしょう。コレクションの鑑賞目的以外にも、歴史を学ぶ機会としてもおすすめの施設です。

国立装飾美術館の近くにはマドリードで最大であるエル・レティーロ公園があります。装飾美術館を訪れた後は、そのままゆったり公園に立ち寄ってみるのもおすすめです。スペインを訪れたら、ぜひマドリードにも足を延ばしてみてはいかがでしょうか?

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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