ドルドレヒト美術館:オランダ黄金時代から現代にいたるまでの作品を所蔵する美術館

ドルドレヒト美術館は1842年に設立された、オランダのドルドレヒトにある美術館です。この美術館はオランダでもっとも古い美術館の一つであり、オランダ黄金時代から現代美術にいたるまでの400年以上にもわたるオランダ絵画作品が所蔵されています。そんなドルドレヒト美術館の歴史とコレクションについて詳しく解説していきます。

■ドルドレヒト美術館とは

ドルドレヒトはオランダ・南ホラント州の都市であり、防衛上の拠点として重要視されてきました。その後ワインや材木、穀物などが取引される都市となり、商業的にも発展。現在では造船業や木材業、製鉄業などが経済基盤となり、オランダでも有数の経済都市となっています。

そんなドルドレヒト美術館は、1842年11月26日に地元の5人の有力な美術コレクターが、美術協会を設立したことがきっかけとなり創設されました。協会は寄付されたコレクションや遺産などをもとに美術館を運営しコレクションを拡大していきました。2007年には大規模な改修が行われ、展示スペースが大幅に拡張されたことにより、美術館はより魅力的な空間となり現在にいたっています。

■ドルドレヒト美術館のコレクション

ドルドレヒト美術館のコレクションはオランダ黄金時代から現代美術にいたるまでの6世紀以上にわたるオランダ絵画作品が核となっており、特にフェルディナンド・ポルやサミュエル・ファン・ホーホストラーテンなどの作品が充実していることで知られています。

そんなドルドレヒト美術館のコレクションには、どのような作品が含まれているのでしょうか。主要な作品をご紹介します。

・《フレデリック・ショパンの肖像》1847年アリ・シェフェール

(Public Domain /‘Chopin portrait’by Ary Scheffer.viaWIKIMEDIA COMMONS)

本作品は1847年に制作された作品で、ドルドレヒト出身の画家アリ・シェフェールによって描かれた作品です。

アリ・シェフェールはオランダ、ドルドレヒト出身のフランスの画家で、肖像画家として働いていた父と同じく画家であった母のもとに生まれました。1809年に父親が亡くなると、母親とシェフェールはパリに移り、ピエール=ナルシス・ゲランの工房に入ることになります。当時のパリではウジェーヌ・ドラクロワやテオドール・ジェリコーといったロマン主義が流行していたものの、シェフェールはそういったロマン主義に関心を示すことはなく、古典主義に則った作品を制作し続けました。シェフェールはバイロンやゲーテの作品を題材とした作品を描いたのち、宗教的な作品を描くようになっていきます。また当時の著名人たちから依頼を受け、多くの肖像画も制作しています。

そうして人気を博していたシェフェールでしたが、1848年にフランス第二共和政が発足すると、王族と強い結びつきを持っていたシェフェールは批判されることとなり、その人気は衰えてしまいます。シェフェールは失意の中1858年にアルジャントゥイユで亡くなり、63歳の生涯を閉じることとなります。

そんなシェフェールによって描かれた本作品は、ポーランド出身の作曲家フレデリック・ショパンを描いたものです。ショパンは繊細なピアノ曲を数多く作曲したことで知られており、夜想曲やワルツなどは現代においても演奏会でよく取り上げられています。

灰色の背景の前に描かれたショパンは正装をまとっており、こちらに向けた眼差しは意志の強さを感じさせます。シェフェールらしく、滑らかな古典主義的なタッチで描かれており、その表現はショパンの繊細な音楽性を強調するものとなっています。

・《ドルドレヒト近郊の風景》1800年ヤコブ・ファン・ストリー

(Public Domain /‘Landscape with trees and cattle’by Jacob van Strij.viaWIKIMEDIA COMMONS)

本作品は1800年に制作された作品で、風景画で名を博したヤコブ・ファン・ストリーによって描かれた作品です。

ストリーは1756年10月2日にドルドレヒトで生まれました。父親も画家だったこともあり、幼いころから芸術に興味を持っていたストリーは自然と画家を志すようになっていきました。1774年から1776年の間にはアントワープ美術アカデミーのアンドリーズ・コルネリス・レンズに教えを受け、徐々に画家として活躍するようになっていきました。

ストリーは特にイタリアの山や都市などを好んで描いていました。特に冬の風景には並々ならぬ情熱を注いでおり、猛烈な寒さの中でもスケッチを描くほどのこだわりを持っていたようです。そうして数々の作品を残していったストリーでしたが、1815年には生まれ故郷のドルドレヒトで58歳の生涯を閉じることとなります。

そんなストリーによって描かれた本作品は、ドルドレヒト近郊の風景を描いたものです。川には何艘もの船が浮かび、それを眺める馬に乗った男性が描かれています。その周りには子どもとその世話をする女性、杖を持った男性や犬が描かれており、夕暮れの穏やかな風景が広がっています。

特筆するべきは、キャンバスの約半分を占める空の表現であり、夕暮れの光で移り変わっていく一瞬の風景が美しく表現されています。こうした風景表現の美しさは、ストリーが同時代の画家たちの中でも、いかに風景表現に優れていたのかを表しています。

・《ドルドレヒト近郊の風景》1884年ウジェーヌ・ブーダン

(Public Domain /‘La Meuse à Dordrecht’by Eugène Boudin.viaWIKIMEDIA COMMONS)

本作品は1884年に描かれた作品で、印象派に大きな影響を与えたウジェーヌ・ブーダンによって描かれた作品です。

ブーダンは1824年にノルマンディー地方のオンフルールに生まれました。父親が水夫の家業を辞めた後ルアーブルに転居したことで、彼はトロワイヨンやミレーなどバルビゾン派の画家たちと交流するようになります。1859年には写実主義の画家ギュスターヴ・クールベと出会い、パリのサロンへのデビューを果たしたことにより、画家として認められるようになっていきました。

また1857年にはモネと出会い、戸外制作を教えたことから、印象派が生まれるきっかけを作ったとも言われています。1874年の印象派展にはブーダンも出展しており、印象派との強いつながりが伺えます。その後もブーダンはパリのサロンへの出品を続け、1881年には第3位の賞を受賞、1889年には金賞を受賞しています。

本作品はそんなブーダンによって作成された、ドルドレヒト近郊の風景を題材とした作品です。非常に荒いタッチで描かれているものの、雲や水面の動きが印象的に描かれており、ブーダンらしい表現となっています。

■おわりに

ドルドレヒト美術館はオランダのドルドレヒトにある美術館であり、オランダ黄金時代から現代にいたるまでの作品を所蔵しています。そうしたコレクションの中には、ドルドレヒト出身の画家や何百年も前のドルドレヒトの風景を描いたものもあり、まるでタイムスリップしたかのような気分を味わうことができます。

ドルドレヒトはオランダでも交通アクセスが良い都市であり、鉄道やバス、高速フェリーなどさまざまな方法で訪れることができます。オランダを訪れた際には、ぜひ足を延ばしてみてはいかがでしょうか。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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