国立自然科学博物館:世界で最古の自然史博物館

スペインの国立自然科学博物館は世界で最古の自然史博物館の一つであり、スペインの自然科学分野において最も重要な博物館であるといえます。その歴史はカルロス3世が設立した王立自然史キャビネットを起源としています。現在800万を超える標本をコレクションしており、地球上の古生物から生物、鉱物までを網羅する膨大な標本が揃っています。自然科学を多岐的に知り、楽しむことが出来る博物館です。

■国立自然科学博物館とは

国立自然科学博物館はスペイン、マドリードの中心部、カスティリャーナ通りに位置しています。世界で最も古い自然史博物館の一つであり、また、スペインの自然科学分野において最も重要な博物館であるといえます。

国立自然科学博物館は、1771年、カルロス3世による王立自然史キャビネットの設立が起源となっています。キャビネットの創設者には当時、自然科学の分野で活躍していたエクアドルの商人、ペドロ・フランコ・ダビラが任命されました。ダビラはカルロス3世に標本や資料を寄贈し、それをもとにキャビネットのコレクションは構成されました。

■国立自然科学博物館のコレクション

国立自然科学博物館は1000万を超える様々な標本をコレクションしています。

古生物の化石から、魚、鳥、爬虫類、ほ乳類、昆虫、節足動物まで地球上の生物を網羅する膨大な数の標本が揃っています。また、鉱物や隕石の標本も展示され、自然科学を多岐に渡って知り、楽しむことができる博物館となっています。

博物館の代表的な展示には、アフリカゾウの剥製、ナガスクジラの骨格標本、大型哺乳類メガテリウムの化石等があります。

(Public Domain /‘Mediterranean section Giant squid model’by José-Manuel Benito Álvarez. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)
(Public Domain /‘Section of Natural History Iberomesornis model’by José-Manuel Benito Álvarez. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

また、長さ7メートルにも及ぶダイオウイカの標本、ヨーロッパの渡り鳥ハチクイの精巧な剥製展示、絶滅してしまったフクロオオカミの剥製、カルロス3世が愛したアジアゾウコレクション、全長25mの恐竜ディプロドクスの骨格標本、トレドで発見された長鼻類ゴンフォテリウムの化石、世界中から収集された300個に及ぶ隕石のサンプルと、枚挙にいとまがない素晴らしいコレクションとなっています。

そんな国立自然科学博物館のコレクションには、どのような展示が含まれているのでしょうか。主要な展示をご紹介します

・《アフリカゾウの剥製》

アフリカゾウの剥製は博物館のシンボル的なコレクションであり、2012年にリニューアルされた生物多様性コーナーに堂々たる風格で展示されています。

1913年、アルバ男爵により、スーダンで狩られたアフリカゾウの皮膚が博物館に寄付されました。しかし、以後10年間、博物館の事情で、皮膚は梱包されたまま、手つかずの状態で地下室に保管されていました。
1923年ルイス・ベネディクトにより剥製の制作が開始され、長い年月を経て、博物館に登場することとなります。ベネディクトは優れた剥製師で、本物の象を見たことがないにもかかわらず、写真と想像だけで基礎模型を作り、見事な剥製を完成させました。

しかし、剥製の制作は非常に困難なもので、長い年月と様々な創意工夫を必要としました。象の皮膚は重量600kg、大きさも総面積37㎡あり、非常に広い作業場を必要としたのです。その為、博物館内では作業できず、広い敷地面積を有する王立植物園に移動することとなります。

そして、最後に完成した剥製を、今度は王立植物園から本来の展示場所である自然科学博物館に戻さなければなりません。巨大な象の剥製の搬送は大きさと重量がある為、非常に大掛かりな作業となりました。

剥製を台に乗せトラックで牽引し、マドリードのメインストリートであるカスティリャーナ通りを通って博物館へ運びこみました。日中の大通りを巨大な象が通過するという異様な光景に、街の人々は大変驚いたそうです。

現在、アフリカゾウの剥製は博物館において最も人気と注目を集める展示の一つとして博物館のシンボル的な存在となっています。

・《ナガスクジラの骨格標本》

国立自然科学博物館の生物多様性コーナーの天井には、巨大なナガスクジラの骨格標本が展示されています。

ナガスクジラはシロナガスクジラに次いで、世界で2番目に大きな動物です。全長20m以上もある巨大なナガスクジラの骨格が、泳ぐように悠々と博物館の天井に浮かぶその姿は、大きさに感動するとともに生物の偉大さを感じさせてくれます。

2008年、スペイン、マルベーリャのコルティホ・ブランコの浜辺にナガスクジラの雌が瀕死の状態で打ち上げられました。この巨大なクジラはすぐに息を引き取り、標本にされることが決まりました。体長21メートル、骨格の重量は2500㎏、生存時の体重は40トンにも及ぶと推測されています。

マルベーリャ市において、非常に多くの注目と人気がクジラに集まり、名前の公募コンテストが子供たちの学校で開催されました。その結果、クジラの名前は“ヴェガ”に決定し、今もその名で親しまれています。

・《メガテリウムの化石》

※画像はロンドン自然史博物館所蔵のものです

メガテリウムは1万年前頃まで南アメリカ大陸に生息していたとされる、地上で最も大きいナマケモノの一種です。国立自然科学博物館には世界で最初に発掘された化石が展示されています。

メガテリウムは全長6~8mにも成長し、体重は3~5トンにも及ぶ巨大な動物でした。
現生するナマケモはほとんど木の上で生活していますが、メガテリウムは地上で生活していました。食料は葉や枝、花などで、それらを長い鉤爪でつかんで食べていたと考えられています。基本は4足歩行で行動し、高い木の葉を食べるときなど、立ち上がって2足で行動することも可能だったようです。

このメガテリウムの化石は、1788年、アルゼンチンのルハン川付近で発見されました。その後化石は王立自然史キャビネットに送られ、剥製師の画家ファン・バウティスタ・ブルーがバラバラだった化石を徹底的に研究し、精密な骨格図を作成しました。ブルーの骨格図は非常に優れており、それによって化石を元通りに再構築することが出来ました。

フランスの解剖学者ジョルジュ・キュビエはブルーの骨格図から研究をすすめ、この動物をメガテリウム・アメリカヌム(アメリカの巨大獣)と名付けました。また、進化論で有名なダーウィンもこのブルーの骨格図を参考に研究しており、メガテリウムの発掘と再構築は進化論においても重要な役割を果たしたといえます。

メガテリウムの化石、ブルーの骨格図とも国立自然科学博物館のコレクションであり、自然科学の貴重な財産であるといえます。

■おわりに

(Public Domain /‘Section of Natural History Diplodocus and other fossils’by José-Manuel Benito Álvarez. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

国立自然科学博物館はその長い歴史とともに、自然が残した偉大な財産を非常に多くコレクションしています。その中には私達がまだ知らない素晴らしい自然の神秘が隠されています。

Website : https://www.mncn.csic.es/es

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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